同窓会でB君を二度見した話

いきなり結論を書く。年齢は1つではない。以上。

……で終わると原稿にならないので続ける。

数十年ぶりのクラス会。扉を開けた瞬間、飛び交う声のトーンだけで一気に学生時代に戻る、あの感じ。まずAさんが目に入った。変わっていない。本当に変わっていない。「全然変わらないね」が社交辞令ではなく口から勝手に出るタイプの変わらなさである。

老けない人は食べ方が違う』(森永宏喜 著)みらいパブリッシング

で、その隣にいたB君。……誰だ?

顔つき、姿勢、声。全部が違う。名札を二度見した。同じ教室で同じ時間を過ごした男である。生きてきた年数は1日たりとも違わない。なのにこの差は何なんだ。

「遺伝でしょ」と言いたい人もいるだろう。半分は正しい。残りの半分は、たぶん逃げだ。

近年のアンチエイジング医学では、人間の年齢は1つではないと考える。暦の上の年齢――「暦年齢」だけは誰にも止められない。誕生日が来れば増える。文句を言っても増える。だがそれとは別に、肌年齢、血管年齢、骨年齢、筋肉や脳の働きに関わる年齢がある。そして、こいつらの進み方は人によってまるで違う。

つまりB君は、暦年齢は私と同じで、ほかの年齢がだいぶ先を行っていた。……ひどい書き方だなと自分でも思う。でも、そういうことなのだ。

では犯人は誰か。食事、睡眠、運動、ストレスの受け方、口の健康、腸の状態。地味だ。地味すぎて話が盛り上がらない。だが老化の速さを決めているのは、たぶんこの地味の総和である。

ここで慢性炎症という言葉を出す。炎症と聞けば、赤く腫れて熱を持って痛い、あれを思い浮かべるだろう。あれは急性炎症だ。ケガや感染のときに身体が総動員で戦っている状態で、必要な反応だし、原因が消えれば引く。優秀な部下である。

厄介なのは慢性炎症のほうだ。痛くない。腫れない。熱も出ない。なのに、消えない。じわじわ続いて、全身の臓器に少しずつ負担をかけ、老化と生活習慣病の土台を静かに作る。

急性炎症が「台所で鍋の油に火がついた状態」なら、慢性炎症は「壁の内側で火種がくすぶり続けている状態」だ。煙は出ない。誰も騒がない。10年後に柱が抜ける。

「無理がきかなくなった」「疲れが抜けない」「なんとなく不調」。健診では何も出ない。医者に言っても年齢ですねで終わる。あの、名前のつかない不調。あれの裏にいることが少なくない。

この考え方、日本ではまだ実感が薄いが、米国では以前から注目されてきた。2004年、「TIME」誌が“The Secret Killer(秘密の殺人者)”というタイトルで、多くの慢性疾患や老化の根底に慢性炎症があると報じている。20年以上前の話だ。以来、研究も著作も積み上がり、いまや有力な見解として世界的に定着している。

秘密の殺人者。ネーミングが芝居がかっている。が、壁の中でくすぶる火種という比喩からすれば、そう外してもいない。

人生の後半が下り坂であることは、もう受け入れるしかない。上り直せる人間はいない。変えられるのは勾配だけだ。転げ落ちるように下るのか、ゆっくり下るのか。それだけが自分の取り分である。

Aさんが日頃なにをしているのか、結局聞きそびれた。二次会に出ておけばよかった。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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