中道改革連合はなぜ解散するのか

もはやネットですら「小ネタ」の扱いだが、中道改革連合が解散するらしい。結成時には政権交代さえありえると言われ、いまも衆院での野党第一党の進退が、福岡県議会の愉快な面々を下回るあしらわれ方は、悲しい。

福岡県議《「タイタニックごっこ」で炎上》の怪…"2年8カ月後に燃えた"背景と、"大田京子県議だけ徹底追及"されたワケ
タイを視察した福岡県議会訪問団による2024年1月の「タイタニックごっこ」写真が、2年8カ月の時を経てSNSで大炎上。なぜ今になって過熱し、特定議員だけが断罪されたのでしょうか。

そんななか、例外的にアツい論評を寄せるメディアがあったので、ぜひご紹介したい。一語一語のチョイスからほとばしる「うおおおお!」の叫びに、書き手の裂帛の気迫を感じる名文である。

「中道」破綻の根本原因は/結党時から見えぬ対決軸 | しんぶん赤旗|日本共産党
中道改革連合、立憲民主党、公明党による「中道勢力」の合流が破綻し、中道は結党から約7カ月で事実上分裂することが決定的となりました。破綻に至った根本原因は、中道が結党の段階から自民党政治との対決軸を持っていなかったことにあります。

立民の立党精神「立憲主義」を自ら否定し、自公政治を追認したものにほかなりません。自民党政治を変えようと市民と野党の共闘の発展のために懸命に支援してきた支持者、草の根の市民への最悪の裏切りでした。
(中 略)
中道は、選挙での敗北の要因を路線そのものの問題として根本から総括できませんでした。立民の重要政策を百八十度転換したことについても、「現実路線を明確化」したものだと正当化。公明にのみ込まれ、自公政治への対決軸を失ったことによる深刻な混迷ぶりをあらわにしました。

赤旗、2026.9.6

「自公政治」なる用語が示すとおり、著者にとっては、たとえ連立を離脱し袂を分かっても、かつて自民党と組んでいただけで公明党は排除すべき存在なのである。要は、自民と握手して “感染した” ケガレへのエンガチョだ。

著者にとっては、そんなケガレを持たない100%クリーンな “光の戦士” が、少しでも汚れたシミを持つ人々に「根本から総括」することを迫り、ひれ伏させてゆくプロセスが政治なのだと思う。まぁ、ひとつの立場ではある。

ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー - Wikipedia

これに対し、現実に(高市政権の下で極度に右ブレした)自民党の政治をストップすることをめざす人たちは、むろん違った政治の捉え方をする。中道を支えてきたのは、そちらの立場である。

中道解体の引き鉄を引いたのは、参議院(と地方議会)にのみ残る立憲民主党の「合流拒否」だが、しかし同党の支持母体はむしろ合流への支持を明言してきた。たとえば最大の支援団体のトップは、先月にこう語っている。

政権交代へ3党合流を 自治労の石上委員長に聞く:時事ドットコム
自治労の石上千博委員長は時事通信のインタビューに応じ、政権交代の受け皿をつくるべきだとして、中道改革連合、立憲民主党、公明党の3党合流に期待を示した。

―3党は安全保障、原子力発電、憲法改正、在沖縄米軍基地などの問題で見解に隔たりがある。

まとまらない話ではないと思っている。一緒になる思いがあるなら、落としどころを見つけるのは不可能ではない。それが政治だ

時事通信、2026.8.15

三党合流のネックが、参院比例区の集票問題にあることは、7月に以下の記事で指摘した。だが翌月にこの談話が出る以上、たとえば公明票で連合の候補を推すといった歩み寄りが、水面下では成立していたものと思われる。

夫婦別姓を「諦める」ことが、リベラルとフェミニズムを復活させる|與那覇潤の論説Bistro
2月の総選挙での自民党の圧勝は「野党だけ多党化」が原因なのに、それを加速する動きが止まらない。大敗した中道改革連合からは、旧立憲民主党の "有名議員" の流出ばかりが騒がれる。 中道への合流直前まで代表代行だった吉田晴美氏の離党(ヘッダーは...

にもかかわらず、参院の立憲民主党はそんな「支援の手」を振り払い、合流の拒否を決めた。落としどころでの妥協はイヤで、100%ピュアがいいというわけだ。でもじゃあ、代わりにどこから票を持ってくるつもりなのか。

1か所しかない。炎上が起きるごとにSNSで殺到して「うおおおお!」と最強硬論を叫び、言い逃げする匿名・流動型の口だけ活動家の群れだ。彼らだけをアテにする「チームせろん」みたいな政党に、今後の立民はなってゆくと見てよい。

オープンレターは永遠に: こうして彼らは立憲民主党を滅ぼした。|與那覇潤の論説Bistro
高市自民党が単独で衆院の3分の2を掌握し、参院で否決されても「自民党だけで再可決」して法律にできる状況が生まれた。あくまでも理論上の話だが、歴史から比喩を出すと、これは党が国家を所有したのと同じである。 『ソ連=党が所有した国家 1917ー...

しかし、一度は参院の合流も前提に中道を結成した以上、彼らはもうピュアな存在ではなく、十分に “ケガレて” いる。そんな「チームよごれ」がどこまでネットで世論を拾えるか、まずは来春の統一地方選がチャレンジだろう。

というかその前哨戦は、すでに起きている。

ネットとリアルで “いま” の空気にベッタリ乗っかり、過激な言葉をぶつけてモブを煽ってきたトクリュウ・リベラルの指示役は、今月炎上し叩かれる側に落ちた。そんなノリを頼みにして合流を蹴ったのを、後から悔んでも覆水盆に返らずだ。

なぜオープンレターに署名した人が「差別者」になるのか: 本田由紀氏の場合|與那覇潤の論説Bistro
ちょうど1年ほど前に、次の記事を書いた。トランプ支持の活動家の暗殺をきっかけに、米国で他人をキャンセルしてきた勢力が「キャンセルし返される」事態に転じた経緯を分析するものだ。 まったく同じキャンセルの反転は日本でも進行中だが、象徴的な事例が...

世論に焼かれる3か月前の
本田由紀・東大教授
当時の絶賛noteのひとつから

それとは違う道は、なかったのだろうか。

やはり8月に「合流支持」を明言した、立民の別の支援団体のトップが、いいことを言っていた。鳴り物入りで結成されたはずの中道を、選挙で躓かせた最大の要因をひと言で指摘している。

政権交代へビジョン明確に 3党合流、JAM会長が注文:時事ドットコム
中道改革連合、立憲民主党、公明党の合流協議が、結論を出すめどとした8月末に向けて大詰めを迎えている。立民を支援してきた「ものづくり産業労働組合(JAM)」の安河内賢弘会長は時事通信のインタビューに応じ、違いを乗り越えて多数派を形成し、「政策...

―中道結党、衆院選の結果はどうみたか。

結党当初は期待感はあったが、物語がなかった。今、誰の責任かという議論が先行しているのは極めて残念だ。当時、国民が高市政権に期待したことをしっかり分析し、(政権が)できていないことを野党が実現すると物語で語ることが重要だ。

時事通信、2026.8.10

物語とは、時間の幅を持った「なぜ現在こうであるのか」の説明で、”いま” キモチよくなるための汚言や罵声とは対極にあるものだ。世論の立ちんぼめいた「いまだけいいね」に依存して、日本のリベラルが失ったのがそれだ。

とりわけぼくらの民主主義は、敗戦の後に占領下で立ち上がったという、ピュアになりようのないケガレた物語を持っている。それを大事にするのを忘れ、自分は完全無欠だと驕り「うおおおお!」に吶喊したときが、リベラルの末期だった。

歴史はもう「皇室だけの家業」になったのだろうか(鼎談動画2本です)|與那覇潤の論説Bistro
時代が時代を「キャンセルする」ということが、あるのかもしれない。 焼け跡から始まった戦後という時代に、「戦前のキャンセル」という側面があったことは事実だろう。その戦後の価値観を否定することにだけ情熱を傾けるいまの政権は、80年後に来た「キャ...

今月発売の『潮』10月号の連載「平成の回廊」では、半世紀前の1974-75年に政局を動かした「創共協定」について、中道改革連合を踏まえた今日の視座から描き直している。まさか刊行と同時にこんなオチがつくとは、予想しなかったが。

そこで引用した、戦後日本の “左翼の神様” のことばを、息も絶え絶えのインプレゾンビになり果てた令和のリベラルには、噛みしめてほしい。共産党委員長の宮本顕治は、池田大作・創価学会会長との対話で、こう語った。

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「印象的だったのは、中道ということについての仏法の見方ということで、あなたが「聖教新聞」で書かれていたことです。中道というのは、単なる中間とか、折衷、日和見というものではない。原点に立つことだ」

『潮』2026年10月号、153頁
初出は池田・宮本『人生対談』33頁
(毎日新聞社、1975)

参考記事:

なぜ日本では「まともな野党」が育たないのか|與那覇潤の論説Bistro
木曜夜の配信は、最多時には1000名くらいがライブで見てくださったようで大いに盛り上がった。2003年のイラク戦争をも上回る暴走をアメリカが見せるさなかに、日本の将来を自ら考えようとする人が多いことは心強い。 ぼくに比べると、浜崎洋介さんも...
ぼくらの時代は「いつ」にいちばん似ているか|與那覇潤の論説Bistro
テーマを問わず、歴史を描く上でいちばん大事なのは、時代を "臨床" することだ。書きはじめに、この頃は「だいたいこんな時代だ」という見立てを適切にできるかが、叙述の説得力を決める。 で、実はそのコツは、歴史学者に習っても教えてもらえない。博...

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください

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