国債、つまり国が借金をすることですが、その価格が下がっている(=利回りが上がっている)ということは借金を引き受けてくれる人が少ないという意味です。金融の世界になじみがある人ならば国債や利回り、国債価格といった言葉は何の抵抗もなく受け入れられるのですが、一般の方は案外「言葉は聞いたことあるけどよくは知らない」という話だと思います。よって一部の報道にあるように「世界で国債の利回りが上昇」と言われてもなんのこっちゃ、という方も多いでしょう。
きょうはそこでいつも以上に平易にここを考えたいと思います。
今週は9月16日のアメリカのFOMC、および18日の日銀の政策決定会合があるのでその結果を見てから書けばよいと思われるかもしれませんが、明日のFOMCの時間は飛行機の中、金曜日の日銀の決定は昼頃だと思いますが、そのあとはシルバーウィークでマネーの話をするタイミングを逃してしまうのとそれらの重要日程を見ずにして本件を語ります。
「お父さん、お隣の山田さんが家を増築するからお金を貸してくれないかって」
「山田さんの家の子供はまだ小さいよな。今、増築するお金が銀行から工面できずにうちに言ってくるなら将来子供が大きくなる時の教育費も困るだろうな」
「どうするの?」
「今貸すとそれに乗じてまた貸してくれっていうよ。やめとき」
数日後
「山田さんが金利を5%に増やすから是非ともお願いしますって」
「それは本当に貸す人がいないということなんだ。人助けという感情を横に置けば増築をすることがそもそも無理な話だということじゃないかい?」
経済学ではご家庭の経済を「家計」と言います。会社は「企業」と言います。国を「政府」と言います。世の中、お金を必要とするのは家計、企業、政府部門であり、それぞれがうまくバランスを取っています。国は国家運営のために様々なお金を必要としています。社会保障もインフラ整備も国防もやらねばなりません。その資金源は税金であります。税金収入(歳入)と国の支出(歳出)が一致していればプライマリーバランスが取れたと言います。少なくとも家計はプライマリーバランスがとれて余りがあるようにしているご家庭が多いでしょう。
ところが国はどうしても先行投資と銘打ったり、カネにならないことにも資金を投じなくてはいけません。そこでどの国も借金体質となりやすくなります。その借金、返す目途がなければ誰もお金を貸してくれません。そこで国は様々な満期期間の借金を作って「買ってください!」というわけです。2,3か月物から30年以上の物までいろいろです。なぜか、といえば借金なので返すことが確約され、実行されている必要があるのです。ところが国はズルいところがあります。
「前回の借金1億円は今回ですっかりお返ししました。ありがとう。ところでまたすぐにお金がいるんだけど貸してくれるかな?実は今回は1憶5千万円いるんだけど…」と迫ります。「何に使うの?」と聞けば、「最近物価も高くなったんでガソリン補助金とかいろいろある訳よ。」「食品消費税には使わないということだったよね。」「そう、それは公約だからね。だけどそのおかげで他のところのお金が足りないんだ。」「なんだ、君、どこからお金を出そうが同じことだよ。お金に色はつかないんだ。オタクがいつもしっかり返してくれるのはわかっているけどそんなに増えるならちょっと心配だから少し金利を増やしてもらわないと出せないな。」
これが国債の金利上昇の超シンプル版の流れです。世界で起きている最大の問題はインフレなのです。そしてその理由はトランプ氏がイランに仕掛けたしょうもうない戦争が想定以上の波及となっている理由が大きいのです。ウクライナの戦争が始まった時、ロシアのガスが欧州に流れなくなり欧州のエネルギー危機になりました。4年後にアメリカも同じようなことをしたわけです。
日本の物価高は燃料費高騰による物価高に誘発され、物価高に対する様々な防衛費用が掛かるのです。トランプ氏がイランを攻めると世に不安感に押し寄せ、国防もしなくちゃいけないということも基本は出発点は同じです。アメリカがあちらこちらで戦争に何らかの加担をしているのです。そして石油問題がこんなになるとは想定外でした。
さて日本はどう対応するのでしょうか?赤澤経済産業大臣が「10月の原油は大丈夫。なぜならその分は今、タンカーが日本に向かっているから」と述べています。つまり11月以降はわからないわけです。なぜかといえばイランがサウジのパイプラインを壊してしまい、修復に数週間かかるからです。メディアのトーンは「いつ直るか」に注目しています。だけど本当はそうではなく「またやられるかもしれない。この戦争、いつ収まるの?」のはずなんです。赤澤氏の答えはそう意味では不十分な回答と言えます。

高市首相 自民党HPより
「アメリカから原油買っているでしょ」そうです、高いプレミアムを払ってね。だからアメリカの原油業者が「国内で売るより日本に売った方が儲かる」になりアメリカ国内出回る原油や軽油、ディーゼルが圧倒的に足りなくなってきています。多分、トランプ氏は「国内最優先だ!」といつ言い出してもおかしくないのです。
ところで、国債の利回りが上昇しているということは上述の「いったん返済したけど、また貸して」というところが大問題になります。なぜなら次に借りる時には利息が高いということなのです。元財務次官だった矢野康治氏が面白いことを言っています。金利がある世界に戻り、上昇する国債相場がまだ続くとすれば今の借金の利息部分は年間7-8兆円だけど10年後には30兆円になると。この数字が正しいかは別として今より異次元の高さになることは間違いないでしょう。
今の年間の歳入が122兆円規模。10年後に多少増えるとしても利払いが占める割合は現在の6%程度から20数%になります。また政府は今日、国防費を3.5%に増額すると言っています。お財布の大きさインフレを別にすれば大して変わらないので増大する社会保障費、国防費、利払いを優先すると残りは「え、何?いくら、これだけ?」ということであります。
世界中で国債の利回りが上昇し、日本は30年ぶり、他国も10数年から20数年ぶりというところが続出しています。いわゆるポピュリズム政治のツケとも言えるし、グローバル化した社会で効率的でスムーズな動きをしていた時代から閉鎖社会になった為とも言えます。では、どうなるのでしょうか?
歴史を振り返ると最悪な事態になる、です。よって人類がその過ちを早く修正できるか、瀬戸際にあると言えそうです。この国債価格の下落(価格の上昇)は極めて重要な世界経済の不調への兆候だと見てよいのではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月16日の記事より転載させていただきました。







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