ドイツで20日、ベルリン市(特別州)と北東部メクレンブルク・フォアポンメルン州(MV)の議会選が実施される。前日はメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選について報告したので、今回は首都ベルリンの市議会選について、独メディアの報道からまとめた。

ドイツ・メルツ首相インスタグラムより
ベルリン市議会選では、各政党の支持率が激しく拮抗する大混戦が展開されている。ドイチェ・ヴェレ(DW)によると、左翼党(Die Linke)が21%、「キリスト教民主同盟」(CDU)が20%、「ドイツのための選択肢」(AfD)が18%と、3党が激しく首位を争う大混戦。それを追って、環境政党「緑の党」が約16%で続いている。そのほか、新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」が議席獲得に必要な得票率5%の壁をクリアできるか注目されている。
現行のベルリン市議会(定数159議席)は、第1党のCDUと第2党の社会民主党(SPD)による大連立政権で、CDUのヴェーグナー州首相率いる州政府は議会の過半数(80議席以上)を握ってきたが、直近の世論調査ではSPDが12%前後に大急落し、逆に左翼党やAfDが議席を大幅に増やす見込みのため、選挙後、CDU/SPDの現政権の過半数割れはほぼ確実。そのため、3政党以上の連立政権が発足するものとみられる。ちなみに、現職のカイ・ヴェーグナー州首相(CDU)は、インフラ危機管理を巡る虚偽報告などを受けて7月に次期候補から辞退を表明。これに伴い、CDUは財務担当のステファン・エバース氏を筆頭候補者に立てている。
ドイチェ・ヴェレなどは、ベルリンにおける左翼党(Die Linke)の急伸に注目している。同党は、2021年の住民投票で市民の59%が賛成した「大手不動産会社からの住宅強制収用・公有化」の断行を唯一掲げており、家賃高騰に苦しむ市民の支持を集めている。
ところで、ベルリンでは今年に入り、2件の大きな出来事(事件)が起き、ベルリンの政界を震撼させた。ドイツの首都ベルリン南西部で新年早々の1月3日の朝、4万5000世帯と2200の事業所が停電に見舞われた。停電の影響を受けた人は約10万人に上った。ベルリン市は同月4日に非常事態を宣言した。冬の寒さのため、電力復旧作業は遅々として進まず、多くの世帯が停電のために暖房も使えなくなった。その危機管理で現職のヴェーグナー市長が不祥事を起こし、自身の政治生命を失うという事態となったことはまだ記憶に新しい。
停電中、ヴェーグナー市長は女性と1時間あまりテニスをしていた、ということが明らかになって、メディアから激しいバッシングを受けた。メディアから「停電中、あなたは何をしていたのか」と追及された時、市長は「自宅オフィスに閉じこもって仕事していた」と虚言した。事の真相が明らかになり、ヴェーグナー市長は「コミュニケーション上のミスがあったことは事実だ」と答えたが、虚偽発言が発覚して市長の再選出馬断念へと繋がった経緯がある。
また、7月25日、ベルリン市中心部にあるティアーガルテン公園周辺で開催されていた性的少数派のイベント「クリストファ―・ストリート・デー」に参加していた群衆に向かって白色のバーンの車両が猛スピードで突入し、死傷者が出た。警察側はイスラム過激派に関連する21歳の男を容疑者として特定、犯行後逃避した男は警察官に撃たれ、死亡するというテロ事件が発生した。容疑者は危険な人物と見られていたが、今年5月に少年鑑別所から早期釈放されていたことが明らかになり、政治家やテロ専門家、メディアからその対応に疑問の声が上がった。
上記の2件の結果、市議会選では大都市の社会インフラの老朽化対策や安全確保に有権者の関心が高まり、移民対策が再び選挙戦の争点に浮上してきたというわけだ。
その他、ベルリンで長年深刻化している家賃の高騰や慢性的な住宅不足、インフレに伴う生活費の負担軽減策について、左派(左翼党・緑の党)と右派(CDU)の間で激しい議論が展開している。ちなみに、今回の選挙からは16歳から投票権が与えられる。新しく加わる若い世代の票(約55000人)の動きも無視できない。
なお、ロイター通信やTIME誌は、今回の選挙がメルツ連邦首相(CDU)の政治的運命を左右すると報じている。CDUは直前のザクセン=アンハルト州選でも歴史的大敗を喫し、現職のヴェーグナー市長が大停電中の不適切な対応で不出馬となるなど、同党を取り巻く政治情勢は厳しい。CDUが首都ベルリンで敗北すれば、メルツ政権の足元はさらに大揺れとなることは必至だ。それだけに、20日の議会選挙の動向から目が離せない(「独MV州議会選でSPDとAfDが首位争い」2026年9月17日参考)。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント