「睡眠不足は健康に悪い」。これは常識ですが、では睡眠は長ければ長いほど健康によいのでしょうか。実は、多くの研究では意外な結果が出ています。睡眠時間が短すぎる人だけでなく、長すぎる人も死亡率が高いのです。

死亡率が低いのは7時間前後
大規模な前向き研究のメタ解析では、死亡率と睡眠時間にはおおむねU字型~J字型の関係があります。7時間前後を基準にすると、9時間で死亡リスク約13%増、10時間で約25%増、11時間で約38%増という解析があります。(PubMed)

つまり睡眠時間が短い人の死亡率が高く、7時間前後で低くなり、さらに睡眠時間が長くなると再び上昇するのです。ある大規模なメタ解析では、7時間睡眠を基準にすると、9時間、10時間、11時間と睡眠時間が延びるにつれて死亡リスクが高くなる傾向が確認されています。
これだけ見ると、「寝すぎると早死にする」と考えたくなりますが、そこには落とし穴があります。
「長く寝るから早く死ぬ」とは限らない
こうした研究の多くは観察研究です。「長時間睡眠の人は死亡率が高かった」という相関関係はわかっても、「長時間睡眠が原因で死亡率が上がった」という因果関係を証明したわけではありません。
むしろ逆の因果関係が考えられます。慢性疾患を抱えている人、身体活動量が少ない人、うつ状態にある人、睡眠時無呼吸などで睡眠の質が悪い人は、寝たきりで過ごす時間が長くなります。つまり、
長く寝る → 健康状態が悪化する
のではなく、
健康状態が悪い → 長く寝る + 死亡リスクも高くなる
という可能性があるわけです。
長時間睡眠は病気の原因というより、健康状態に何らかの問題があることを知らせるサインなのかもしれません。
9時間寝たら危険なのか?
では、健康のために目覚まし時計をかけて、7時間で起きるべきなのでしょうか。米国睡眠医学会などは成人について定期的に7時間以上の睡眠を推奨していますが、9時間を超える長時間睡眠が健康に有害かどうかは不明としています。
子供や激しい運動をした人、病気から回復中の人などでは、9時間以上の睡眠が必要になる場合もあります。むしろ慢性的な睡眠不足なのに「7時間が最適だから」と睡眠時間を削るほうが体によくありません。
問題は「寝すぎ」より「なぜ寝すぎるのか」
気をつけたいのは睡眠時間そのものより、以前より明らかに睡眠時間が長くなった場合です。「10時間寝ても疲れが取れない」「十分寝ているのに昼間も眠い」。こうした場合には、単なる「寝すぎ」ではなく、睡眠の質や生活習慣、何らかの疾患などが隠れている可能性があります。
大切なのは時計を見て睡眠時間を削ることではなく、十分寝ても疲れが取れない、以前より睡眠時間が大幅に延びた、といった身体からの変化に注意することでしょう。






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