高金利で「賃貸は気軽に引っ越せる時代」は終わり

黒坂岳央です。

賃貸を利用する人の最大の理由、それは気軽に引っ越しが出来ることではないだろうか。というか、これは昔の自分が強く思っていたことでもある。

「転職をしたり子供が生まれれば住む場所は当然変わる。もしも家を買ってローンなんて組んだら、気軽に引っ越しができなくなるから一生賃貸でいい」と昔の自分は思っていたし、似たような考えの人もいるはずだ。

昨今の金利上昇で「住宅ローンの人は大変だ。自分は賃貸で良かった」と見ていた人もいたはずだ。

しかし、賃貸最大のメリットである「フットワーク軽く、気軽に引っ越しができる」がまさに金利上昇で変わろうとしている。賃貸なのに気軽な引っ越しが出来ない時代になると考える。持論を述べたい。

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東京の家賃が上がり続けている

「金利上昇は家を住宅ローンで買った人だけの話」と考える人は多いがそれは違う。賃貸の人も家賃上昇という形でその重力から逃げることは出来ない。

アットホームが発表した2026年7月のデータによれば、東京23区の賃貸マンションでは、カップル向け物件の平均募集家賃が14カ月連続で2015年1月以降の最高値を更新した。

少し前の2026年3月には、調査対象となった全国13エリアすべて、マンション・アパートすべての面積帯で平均募集家賃が前年同月を上回った。2015年の調査開始以来初めてのことだった。つまり、家賃上昇は東京だけの特殊な話ではない。

当然ながら、賃貸の人が住む家は大家の持ち主であり、大家の多くはローンである。その金利が上がるなら彼らは家賃に価格転嫁させる。賃貸だけ永遠に上がらない、ということはありえない。

もちろん大家がコスト上昇分を自由に家賃へ転嫁できるわけではないが、需給が逼迫した地域では募集家賃を押し上げる一因になる。

引っ越しは割高になる

新しく入居者を募集する部屋なら、大家は基本的に現在の市場環境を見ながら募集家賃を設定できる。家賃15万円で借り手が見つかるなら15万円、18万円でも借り手がいるなら18万円で募集できる。

一方ですでに入居している人の家賃は少し事情が異なる。新規募集なら20万円で貸せるようになったからといって、現在15万円で住んでいる人の家賃を大家が自由に翌月から20万円へ変更できる、というほど単純ではない。これがSNSで「自分は普通契約の賃貸だから大丈夫」という意見をよく見る理由だ。

しかし、永遠に価格が上がらないわけではない。借地借家法では、土地や建物に対する税負担の増減、経済事情の変動、近隣の同種物件の賃料などによって現在の家賃が不相当となった場合、賃料の増減を請求できる仕組みになっている。つまり家賃は絶対に上げられないわけではないのだ。

少なくとも新規の価格は相場の価格上昇に連動するので、いざ転職や家族形態の変化で引っ越しをするとなると、次の家賃は割高になる。

賃貸なのに住宅にロックされる

これはかなり皮肉な話だ。これまで持ち家の弱点としてよく指摘されてきたのが、「簡単に引っ越せないこと」だったが、新規賃料と継続賃料の差が大きくなると、この関係が少し変わってくる。

法的にはもちろん引っ越せるが「今の家を出ると家賃が月5万円上がる」という状況になれば、賃貸住宅そのものが事実上のロックイン装置になる。

「住宅ローンに縛られたくない」という人は安い家賃を手放せず動けなくなる。つまり、賃貸最大のメリットが消えるということだ。

住宅価格や金利、居住期間によって持ち家と賃貸の損得は変わるため、単純に「持ち家の方が得」とはいえない。

しかし少なくとも、「賃貸ならいつでも気軽に引っ越せるから、住宅を購入するより自由だ」という従来のメリットについては、家賃インフレが続けば以前ほど単純ではなくなる。

長く住み続けることで現在の家賃が市場の新規賃料より割安になればなるほど、その部屋を手放す経済的コストが大きくなるからだ。

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「家を買ったから引っ越せない」という理由で家の購入を見送る人は多かったが、これからは、「家を借りているからこそ、引っ越せない」という時代がやってくる。

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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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