東京大学の次期総長に藤垣裕子教授が選ばれた。東大史上初の女性総長である。それ自体は歴史的な出来事だが、今回の総長選で話題になっているのは「誰がどんな正統性にもとづいて総長を決めたのか」という問題である。

藤垣新学長(産経新聞)
教職員による意向投票の第2回投票では、染谷隆夫副学長が1107票、得票率51.0%を獲得した。これに対して藤垣氏は553票、25.5%。意向投票の過半数の意思をくつがえしたのは、外部委員を含む16人の総長選考・監察会議だった。東大新聞
1107票より16人の判断が重い
国立大学法人法は、学長の選考を学長選考・監察会議が行うと定めている。東大の場合、経営協議会から選ばれた学外側8人と、教育研究評議会から選ばれた学内側8人で構成される。したがって法的な正統性はある。
問題は民主的・手続き的な正統性である。東大が定めた「求められる総長像」には「組織構成員の幅広い支持を受ける」ことが明記されている。
ところがその「幅広い支持」の基準である意向投票で過半数の支持を得た候補を退け、その半分の候補を選んだ。意向投票がただの参考資料なら、2169人もの教職員に投票させる必要があるのだろうか。
選ぶ側の正統性も問われる
さらに総長選考・監察会議の構成にも注目が集まった。外部委員8人の議長は、ジャーナリストの国谷裕子氏。みずほフィナンシャルグループ以外はほとんど無名の企業の経営者で、6人が女性である。

東大公式サイト
国谷氏は記者会見で、意向投票の結果をくつがえしたことについて「壁を所与と考えない力、障壁を生む分断を乗り越える力を本学が持つために(藤垣氏の)知見と能力を評価した」と説明した。これは抽象的で、何がくつがえす決め手だったのかわからない。
「ジェンダー」は選考基準に登場していた
もう一つ気になる事実がある。総長選考・監察会議は、第2次候補者を絞り込む段階で「ジェンダー、学問分野などの多様性やバランスを考慮する」ことを明記していた。上位候補を選んだあと、ラインアップを見てジェンダーなどの観点から追加候補の必要性を検討するという仕組みだった。東京大学
意向投票の候補のうち、女性は藤垣氏ひとりだったので「民主的正統性よりジェンダー平等を優先したのではないか」という疑問が生じることは避けられない。最初から結論が決まっていたのなら、意向投票とは何だったのか。
藤垣氏は、総長に決まったことについての東大新聞のインタビューを拒否した。こういう批判を予期しているのだろうが、このままでは「女子枠」という疑念は払拭できない。
福島第一原発事故を「フクシマ事故」と書く反原発派
藤垣氏の専門は、教養学部の「科学技術社会論」である。どんな学問かよくわからないが、福島第一原発事故についての彼女の論文を読むと、この事故を一貫して「フクシマ事故」と表記している。
また藤垣氏の著書『科学者の社会的責任』は、伊方原発の設置許可差止訴訟の原告側の証拠とされた。彼女は国会の原子力問題特別委員会でも、原発の危険を訴える立場から発言している。反対運動に参加した形跡はないが、かなりコアな反原発派である。
運営交付金と国際卓越研究大学の思惑か
もちろん学生の女子枠と総長は別問題だが、国立大学の運営費交付金では「女性教員比率や女子学生・生徒の理工系分野への進学促進などのダイバーシティ環境の整備」が、大学の評価や予算配分に反映される。
国立大学が相次いで女子枠を設定しているのも、こういう背景がある。東大の経営協議会の異常な男女比率も、そういう文科省の方針に迎合する傾向がうかがえる。
もう一つは東大が申請した「国際卓越研究大学」に、まだ指定されていないことだ。これは医学部の不祥事などのガバナンスを問われたためだが、ここで文科省の好む「ジェンダー平等」を推進し、指定を受けようと思っているのだろうか。







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