長年染み付いた「習慣」はなかなか治らない

内藤 忍

長年染み付いた習慣というのは、なかなか変わらないものです。

私自身、14年前に会社を辞めて自分で自宅にオフィスを構えて仕事を始めたばかりの頃、こんなことがありました。

仕事に一区切りを付けて、平日のお昼過ぎに自宅でシャワーを浴びていたとき、突然「あれ?こんな時間に自宅でシャワーなんか浴びてて大丈夫?会社に行かなきゃマズい!」と突然パニックに陥りました。すぐにもう会社には行かなくて良いんだと気が付いて、一人で苦笑したことを覚えています。

長年、平日の昼間はオフィスにいるのが当たり前という生活を続けてきたため、無意識にシャワーを浴びている時にこれまでの習慣が脳を錯覚させたのです。

もうひとつ、未だに克服できないのがタクシーに乗るのを躊躇してしまう習慣です。

公共交通機関を使うよりタクシーの方が移動の時間を節約でき、車内でも自由に仕事をしたりできるので、お金を使ってでも移動時間を短縮しより価値の高い仕事をする方が合理的なのは頭では理解しています。

タクシーがあまり好きではないという理由もありますが、経済的にある程度の余裕ができた今でさえ、タクシーに乗ろうと思う度に電車やバスの方が安いのではないかと考えて乗るのを一瞬躊躇してしまう。これは若い頃に染み付いた貧乏性が未だに根深く自分の心の中に残っているからです。

最近ようやく昼間にシャワーを浴びていてもドキッとすることは無くなり、タクシーにも必要だと思う時は支払いを考えず利便性だけを考えて躊躇なく乗ることができるようになりました。

私のこれまで抜けきらなかった習慣などは些細なことですが、世の中が変化しているにも関わらず同じように過去の「習慣」から抜け出せていないケースが多々あります。

例えば経済環境の変化です。日本は過去30年にわたってデフレが続いてきました。デフレ下では「お金を使わずに持っておく」「借金はしない」のが正解でした。時間と共にお金の価値が高まっていくことになるからです。

しかしインフレ局面では全く逆になります。インフレ下では、価値が下がる現金は早く資産に変え、低金利で資金を借り入れた方が有利になります。

にもかかわらず、多くの人が「デフレ脳」のままの習慣から抜け出せずにいます。頭では「インフレが始まった」と理解していても、行動や価値観という長年の習慣を修正していくのは思った以上に難しいことです。

Edwin Tan/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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