日本では外国人が日本の不動産を購入することが問題視されていますが、EUでは事態の悪化が日本より深刻なため、EU全体での規制の枠組みが提唱されており、法制化の見込みです。
「入手可能な住宅法(The Affordable Housing Act)」

と題されたEU規則では、土地や既存の建物の活用、計画と許可の簡素化、そして手頃な価格の住宅および社会住宅の供給拡大などを通じて、住宅供給を各国の地元政府が迅速に行えるよう支援する仕組みです。
今までは、EU全体の共通の枠組みがなく、自治体の政令や各国の法律を適用せざるを得なかったのですが、今回の規制でより厳しい制限を行うことを可能にするのが目的です。

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欧州で深刻化する住宅不足と外国人による不動産取得
欧州では、特に大都市や観光地で、多くの物件が短期賃貸や外国人の別荘、投資物件になってしまったために、住宅需要が供給を大幅に上回り、物件価格の異様な高騰や家賃の上昇につながってしまい、健全な不動産市場が破壊されています。特に地元に住む人向けの物件がなくなってしまい、地元で働く人の家が足りない状況で、労働力の確保にも苦労しているのです。
特にひどいのは、私の著書『世界のニュースを日本人は何も知らない7』でも紹介したスペインの離島のケースで、家がないためにキャンピングカーに住むホテル従業員や、野宿する人までいるほどです。島の不動産は、ドイツやオランダ、北欧、イギリス、アメリカなど海外の富裕層や中流の人々が買い占めてしまい、スペインの普通の人が買える価格ではなくなってしまいました。
その他にも、例えばクロアチアのザグレブは投資物件が多すぎるので、19%はオーナーがいるものの空き家で、マドリッドの中心部は40%の住宅が短期賃貸向けになってしまい、「普通の地元民」には住める家がない状態なのです。
EU共通の法的枠組みと「建物台帳」の導入
今回の規制は、具体的には「住宅逼迫地域」を特定し、各国政府が講じる措置の妥当性・比例性を評価・正当化するための共通の法的枠組みを提供します。さらに、逼迫地域における短期賃貸プラットフォーム(Airbnb等)などを規制する法的根拠を各国政府に与えます。
さらに画期的なのが、許認可手続きの簡素化・デジタル化や、2028年からの「デジタル製品パスポート」「建物台帳」の導入などが盛り込まれている点です。
つまり、EU共通での「建物台帳」の導入で、複数国共通で誰がどの不動産を入手したか、またどんな建築許可が出ているかなどが透明化されるわけです。
欧州は、各国や自治体ごとに法律が異なる上に、借地借家法や不動産法が「人権保護」のために借り手や買い手に有利になっているので、自治体や国が取得に厳しい規制を強いることができない場合が少なくありません。そのため、各国の法律の「上位」に位置することになるEU規則で、規制をやりやすくするわけです。
借り手や買い手が有利な理由は、かつて、地主である王族や貴族の権利が強すぎたために、店子が苦労したことから保護しようとした名残です。日本の民法もフランスやドイツの影響をかなり受けているので、厳しい規制が難しいのです。
しかし、その人権擁護の規制が、外国人富裕層や独裁国から不正資金を持ち込む買い手に有利になってしまい、自国の不動産が買い占められたり短期賃貸に使用されたりして、地元の人が苦しむことになってしまったのです。
まさに近年よくある「人権擁護のための差別禁止」等のリベラル系の仕組みが、富裕層や独裁国の悪意がある人らにハックされてしまい、本来恩恵を受けるはずの人々が苦しむという仕組みそのものです。
スペインで進む外国人不動産取得への規制
EU各国はすでに対策を講じており、自治体や国によっては、短期賃貸、外国人所有の別荘、空き家を規制する規則を導入しています。
例えば、スペインの社会労働党のペドロ・サンチェス首相は、EU域外に居住する非居住者が購入する不動産の価値に対して100%の税を課すことを提唱しています。実施されるとスペインの不動産価格が事実上倍になり、多くの買い手であるイギリス人やドイツ人が打撃を受けます。
さらに、スペインの超人気観光地のバレアレス諸島の自治体は、「実際に住むための住宅を優先する」として、非居住者による住宅購入を禁止する案を提示しているほどです。
しかし、今回の規制には批判も多く、問題は住宅自体の不足であって、必要なのは公共住宅の増加や建築許可の緩和などの需要と供給のバランスの適正化で、外国人の不動産取得や短期賃貸の規制を強くするだけでは根本的な解決にはならない、という意見が多いのです。
日本がEUの不動産規制から学ぶべきこと
日本も都市部の短期賃貸増加や外国人不動産取得に悩んでいるわけですが、EUの今回の規制に関しては、全国統一の台帳による透明化や、不動産価格がアンバランスな地域の調査を実施し、公開した上で国が取得規制や短期賃貸の数を規制するといったことは参考になるでしょう。特に日本で不動産を取得する外国人は、不正な資金の持ち出しや資金洗浄などが相当あるはずですので、他国と連携した情報の透明化は急務です。
ただし日本の場合は、全国的な空き家の問題や都市部への集中など、もっと根本的な都市計画が緊急課題なので、それらも合わせて議論を進めるべきです。
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日本の常識は欧米の非常識 新聞やテレビでは学べない世界の現実
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