
AIに仕事を丸投げし、1人で会社を回している起業家で、タイに移住した大塚あみさんに話を聞きました。(インタビュー日:2026年9月9日)
AIとの出会いは「宿題をサボる方法」だった
——大塚さんは、AIを使ってアプリ開発などをされているとのことですが、もともとプログラミングやAIを専門に学ばれていたのでしょうか?
大塚:きっかけは大学4年のときのICTの授業でした。私は理系ではなく中央大学経済学部。経済学部を選んだ理由は「金持ちになりたいから」。まあ正直すぎますが、嘘はない(笑)。そんな文系の私でも受講できるICTの授業があったのが、AIとの最初の接点でした。
教授から「提出課題を、AIを使ってやってはいけない」と言われたのですが、これが火をつけてしまった。「AIで課題をラクに片づけられる」と気づき、「ChatGPTを使いつつもChatGPTを使ったとバレない方法」、いわば「宿題をサボる方法」を練り上げ、AIを使って課題を片づけたのが、AIとの出会いでした。
その2か月後には電子情報通信学会で発表し、「ネットワークソフトウェア若手研究奨励賞」を受賞。実態は「宿題をサボる方法」でしたが、さすがにそのタイトルで発表するわけにはいかなかったので、「ソフトウェア開発の効率化」として発表しました。
その後、2023年10月から翌年2月にかけて、AIを使ってアプリを100日連続で開発する「100日チャレンジ」というプロジェクトをやりました。これがX上で結構バズり、自分の名前を売っていく契機になりました。

2026年、学会発表での様子
就活も教授に丸投げ、あっさり就職
——大学4年ということは卒業間近ですが、就職はどうしたのですか?
大塚:同期が就職活動に励んでいた大学3年のころ、私は就職活動を全くせず、「せどり」ばかりしていました。電気機器などを中古品ショップで安く仕入れて、高く買い取ってくれる店に売る仕事です。
朝から晩まで働く生き方はどうしても想像できなかったんです。でも、そのICTの教授の推薦でソフトウェア開発企業に入社しました。エントリーシートも教授が書いてくれたので、私は面接会場に行っただけ。就活まで丸投げしてしまいました。
入社1年足らずで退職、きっかけは出版
——大塚さんにとっては、ソフトウェア開発企業は最高の環境だったのでは?
大塚:入社してみたら、退屈でした。だから、AIを使ってソフトウェア開発を始めた経験を出版しようと思い、出版社(日経BP社)に連絡しました。最初の打ち合わせは4月5日で、入社からまだ1週間もたっていない時期でした。
最初の3か月の研修は動画を見て感想を書くだけで、とにかく暇でした。5月下旬に日経BP社から出版決定の連絡を頂いて、「会社を辞めても、やっていけるかも」という感触を持ち始めました。
研修が終わったあとの仕事はほとんどリモートで、AIでさっと片づけて執筆に集中。渋谷の道玄坂に住んでいたので、原稿を書いては飲みに行くような生活でした。急にコスプレをしたくなって、コスプレの撮影をしたこともありました。
書き上げたのは、『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』という本で、2025年1月11日発売でした。
——ペンネームを使わず本名で出版したんですか?会社勤めするサラリーマンとして、大丈夫でした?ひょっとして、副業OKの会社でした?
大塚:本名で出版しました。学会発表や出版など、実績を全てストックとして積み重ねていきたかったので。
でも、出版と同時にYahoo!ニュースにも記事が流れたのを社内の人が見つけ、私は呼び出しを食らいました。そして、「うちの会社は副業禁止。会社を持っているならば、その会社を清算しなさい」と言われまして。
私は「分かりました、辞めます」と言ったら、人事の人が「分かったな、副業をやめるんだな」と勘違いしてしまって。「いえ、会社を辞めます」と言い直す羽目になりました。
人事の頭の中に「副業ごときで安定を手放す」という選択肢が存在しなかったんでしょうね。サラリーマン思考と起業家思考は、根本的に別の生き物だと思います。
社員ゼロ、AIを駆使して年収2,000万円
——会社を辞めた後は、どのような活動をし始めましたか?
大塚:自分の会社名義で仕事を始めたのですが、業務内容は主に受託での開発、講演、執筆でした。
サラリーマンを辞めて7か月ほど経った2025年9月に、「Shipaton」という開発者のハッカソンがあり、55,000人の応募者の中で3位になり、雑誌「Forbes」にも掲載されました。この頃から仕事が軌道に乗り、年収2,000万円に到達、20年以上の勤務歴のある上司たちをあっさり超えました。
——ご自身の会社は、従業員を雇って組織化していったのでしょうか?
大塚:いえ。たいていの作業はAIができるので、従業員を雇うことはしませんでした。株主兼社長が1人で経営する、いわゆる「ソロプレナー」の形態です。正直、わざわざ人を雇う理由が思い浮かばないです。AI時代には、「都心にオフィスを構えて、多くの従業員を雇う」という会社の形態も変わってくると思います。
日本を脱出、AIが勧めた移住先は?
——今、大塚さんはタイに住んでいるのですが、いったいどういう経緯ですか?
大塚:私の仕事は全部オンラインで完結するものなので、どこに住んでも問題なかったんです。あと、渋谷に住むのに飽きてきたというのもありまして、AIに「毎日スパに行きたい、毎日プールで泳ぎたい。どこに住むべきか?」などと聞いたら、AIがいくつか移住先の候補を挙げてきたんです。
スペイン領カナリア諸島、アルメニアのエレバン、ポーランド、マレーシアのクアラルンプール、ドバイ、そしてタイのバンコクでした。
時間はたっぷりあったので全部行ってみました。
カナリア諸島は、家賃が高い割にボロくてダメ。
エレバンは、住むイメージが湧かず。
ポーランドは、物価が東京並みで、ヨーロッパでは1人飯もしにくく。
マレーシアは、ビザ取得が大変。
ドバイは、中東情勢悪化で飛行機が欠航。
消去法でタイになりましたが、結果、大正解でした。
毎日スパとプール、タイで手に入れた自由
大塚:タイではずっとホテル暮らしでしたが、お気に入りのエリアもでき、新築のタワマンを見つけたので、最近そのタワマンに移りました。800バーツ(約4,000円)くらいのオイルマッサージに毎日行っていますし、プールで毎日泳いでいるので、毎日充実しています。
——タイは食事も美味しいですけれども、普段は自炊ですか?それとも外食?
大塚:私は東京に住んでいた頃から全く食事を作ったことがないので、タイに来てからも自炊をせず、外食かGrab(デリバリー)で配達してもらっています。渋谷に住んでいた当時は、自炊していなかったどころか、冷蔵庫すらなくて、コーヒーやお茶も毎回コンビニで買ってきて飲んでいたくらいですから。そういう点では、Grab(デリバリー)が非常に安いタイは住みやすいです。
——面白いのは、AIを使って「手を抜く方法」を考えることには、ものすごく手間をかけていますよね。一方で、料理・掃除・洗濯は一切しない、コーヒーやお茶の入れ方も分からない。「頑張ること」と「頑張らないこと」の振り幅がすごいです。
大塚:そうですね。「手を抜くための努力」だけは惜しまない、というのが私のスタイルです(笑)。こうしたAIに丸投げする仕事スタイルについて、『全部、AIに丸投げした。─気づいたら、24歳で海外ホテル暮らしの経営者になっていた─』という本に書きまして、2026年10月21日に新潮社から発売されますので、ぜひ読んでほしいです。
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