「できます!」は、いちばん無責任な返事だ

先に結論を言う。「できます!」と即答する人を、私は信用しない。

感じはいい。上司も一瞬は喜ぶ。でも、それだけだ。

採用の仕事で、1万人を超える候補者を見てきた。面接で迷わず「何でもできます」と言う人ほど、何ができるのか確かめようがない。答えが早いことと、中身があることは別の話である。

『頭のいい人だけが知っているズルい伝え方』(白鳥マキ著)ぱる出版

職場でも同じことが起きる。入社2年目で頑張り屋のAさんが、上司に「企画を考えてくれ」と頼まれた。気に入られたい。デキる人と思われたい。その一心で「できます!」。今の力では無理な仕事だった。期限が来ても、企画は出てこない。

腹が立つのは、ここからだ。上司は「できます」と言われた手前、ほかの人に仕事を回せない。待つしかない。待っている間に納期が来る。で、間に合わない。Aさんは信頼を失った。当然だろう。

いや、Aさんが悪い人だと言いたいわけではない。むしろ真面目なのだ。真面目だから断れない。そこが一番やっかいなのである。

上司が本当に困るのは、「できない」と言われることではない。「できる」と言われて、できないことだ。早めに「難しいです」と言ってくれれば、手はいくらでも打てた。

だから、できないときは少し間をおいて考え、「申し訳ないですが、力が及ばず、それは難しいです」と言えばいい。冷たい? 塩対応? 構わない。

それに、断ったら終わりというわけでもない。相手がどうしてもと言うなら、「このやり方ならできるかもしれません」「納期を少し延ばしていただければ」と条件を出せばいいのだ。一度断ってから、条件付きでやり遂げる。これが案外、効く。

心理学では「ゲイン・ロス効果」と呼ぶ。最初の印象が悪かった人が良い方向に変わると、ずっと好印象だった人より好かれる、という話である。最初に「つれない人だ」と思わせておいて、最後にきっちり仕上げる。ズルい? まあ、ズルい。

完璧な人なんて、そもそもいない。いないものを演じるより、できないことを「できない」と言える人のほうが、よほど信用できる。少なくとも私はそう思う。

次に無理な頼まれごとをしたら、一度「それは難しいです」と言ってみてほしい。相手の顔色が変わるかもしれない。悪い方に、とは限らない。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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