なぜ起きてもいない治安悪化に怯える人が国民の8割もいるのか?

先に結論
  • 刑法犯はピークの2002年の約285万件から2025年は77万4,142件。7割減。強盗はピーク2003年の7,664件から1,428件で8割減
  • なのに「ここ10年で治安が悪くなった」は79.7%(警察庁、2025年10月)。3年連続で上がってる
  • そう答えた人に理由を聞くと、76.4%が「テレビや新聞で犯罪報道を見ることが増えたから」。自分や身近な人が被害に遭った(遭いそうになった)は14.2%だけ。本人たちが「ニュースで見たから」と白状してる
  • これが心理学でいう利用可能性ヒューリスティック(Tversky & Kahneman, 1973)。思い出しやすいものを「よく起きている」と錯覚する
  • 「外国人で治安が悪化した」も同じ錯覚。日本は在留外国人が10年で1.85倍になる間に刑法犯が3割減。英国は純移民がピーク(2023年3月期94万4,000人)の時期に殺人率が1977年以来の最低に
  • 英国では国民が「刑務所の外国人は25%」と推定、実際は12%。性犯罪で処分された人の外国人比率は推定30%、実際15%。現実の2倍に見えている
  • 同じ1973年の論文は「錯誤相関」も利用可能性で説明していて、思い込みの結びつきは実際の相関がマイナスでも消えなかった。外国人が増えて犯罪が減っても「外国人=犯罪」が消えないのはこれ
  • ただし正直な但し書き:詐欺は本当に増えてる。特殊詐欺は2万7,758件・被害1,414億円で過去最多。体感の全部が錯覚ではない。怖がる対象を間違えてるのが問題
  • 学術的な注意点もある。「メディアが偏るから人の危険認識も偏る」という古典研究は、2024年の再分析で再現できなかった。この記事では「錯覚が起きうる仕組み」として紹介する

こんにちは。永江です。

昨日の英国の移民と治安の記事の冒頭で「日本の犯罪は激減してるのに、みんな治安が悪くなったと思ってる」と書きました。これ、反応が多かったので今日はここだけ掘ります。

なんで人はデータと真逆のことを、しかも確信を持って信じてしまうのか。心理学ではちゃんと名前がついてます。

① まず事実。犯罪は本当に減ったのか

減りました。それも桁違いに。しかも日本だけではなく先進国はどこも激減しています。日本の刑法犯の認知件数(警察が把握した犯罪の数)は、2002年の約285万件が戦後最多(法務省 令和4年版犯罪白書)。それが2025年は77万4,142件(警察庁「令和7年の犯罪情勢」)。ピークの約27%、つまり7割以上減った。

2002年の約285万件から2025年は約77万件。ただし戦後最少だった2021年からは4年連続で増えていて、2025年はコロナ前の2019年も上回った。

強盗はもっとわかりやすい。ピークは2003年の7,664件(平成30年版警察白書)。2025年は1,428件。8割減です。殺人は2025年で976件。

ただし、ここ4年は増えている

ここは正直に書いておきます。戦後最少だったコロナの時の2021年の約56.8万件から4年連続で増えて、2025年はコロナ前の2019年も3.4%上回った。2021年比だと36%増です。まあコロナの時と比較してもね・・・それでも2002年と比較すると1/5ですよ。

じゃあ何が増えたのか。警察庁の資料で中身を見ると、こうなってます。

罪種 2025年 前年比 2019年比
詐欺 7万2,532件 +26.5% +125.2%
性犯罪など(風俗犯) 2万204件 +9.4% +132.0%
凶悪犯(殺人・強盗・放火・不同意性交等) 7,287件 +3.6% +54.8%
窃盗 51万3,931件 +2.5% ▲3.5%

増えてるのは詐欺と性犯罪。性犯罪は2023年の刑法改正で処罰の範囲が広がったことと、被害を届け出やすくした政策で「認知件数が増加したものと推認される」と警察庁自身が書いてます。凶悪犯の増加も、内訳を見ると不同意性交等の増加が主因。つまり届け出やすくなった分が数字に乗っている部分がある。窃盗はまだ2019年より少ない。

日本の刑法で「強姦」の定義は、主に対象となる行為・被害者や加害者の性別・同意の判断方法が変わってきました。世界各国も同じです。日本の法律はこのように変わって以前なら無罪だったのにそうではなくなったのがたくさん出てきて統計上は性犯罪が増加したように見えます。

2017年7月より前 強姦罪。男性器を女性器に挿入する行為が対象で、被害者は女性、加害者は男性に限られていました。暴行・脅迫が要件で、13歳未満への行為は別扱いでした。口腔性交や肛門性交などは、強姦罪ではなく、事情により強制わいせつ罪などの対象でした。
2017年7月〜2023年7月 強制性交等罪。性交に加えて、肛門性交・口腔性交も対象になり、被害者・加害者の性別を問いません。暴行・脅迫、または心神喪失・抗拒不能などが要件でした。
2023年7月以降 不同意性交等罪。暴行・脅迫だけでなく、障害、酒や薬物、睡眠、突然の事態への恐怖、虐待、立場による影響力などによって、同意しない意思を作る・伝える・貫くことが難しい状態にさせたり、その状態を利用したりして性交等をする行為が対象です。性交等には、膣や肛門への身体の一部や物の挿入も含まれます。配偶者間でも成立し得ます。

2023年改正では、性交同意年齢も13歳未満から16歳未満に引き上げられました。ただし13〜15歳については、相手が5歳以上年長の場合が年齢による処罰の対象です。先進国はだいたい同じように法律を変えたので増えて見えるわけです。

一番数字が伸びてるのは詐欺です。これは後で詳しく。

② それでも8割が「悪くなった」と答える

警察庁は毎年10月に全国の15歳以上5,000人にネットでアンケートを取ってます。「ここ10年で日本の治安はよくなったと思うか、悪くなったと思うか」。

調査 「悪くなった」と答えた人
2023年10月 71.9%
2024年10月 76.6%
2025年10月 79.7%
出典:警察庁「令和7年の犯罪情勢」 図42。「どちらかといえば悪くなった」を含む

5人に4人です。ちなみに内閣府の世論調査(2021年12月〜2022年1月)でも54.5%が「ここ10年で悪くなった」と答えていて、これは刑法犯が19年連続で減り続けた直後の数字です(令和5年版警察白書)。減ってる最中ですら半分以上が「悪くなった」と思ってた。

で、ここからが面白いところ。

③ 本人たちが「ニュースで見たから」と答えている

警察庁は「悪くなった」と答えた人に、その理由も聞いてます。

「悪くなった」と思う理由のトップは報道。実際に自分や身近な人が被害に遭った、という人は7人に1人しかいない。

76.4%がテレビや新聞、61.1%がネットニュース。一方、自分や友人・知人・家族が被害に遭った、遭いそうになったから、は14.2%。報道を理由に挙げる人は実体験の5倍以上います。

つまり「治安が悪くなった」という人の大半は、治安の悪さを体験したわけじゃない。犯罪のニュースを見る回数が増えたんです。本人たちがアンケートでそう答えてる。だから「外国人の犯罪をネットで見たから治安が悪くなっている」と思い込むわけです。これはかなり重症でいくらデータを見せてもなんだかんだ屁理屈を言って信じようとしない。いや、あなたの脳がバグってんだけど・・・

④ 心理学ではこれを「利用可能性ヒューリスティック」という

この現象には名前があります。利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)。心理学者のエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンが1973年に論文で示しました(Cognitive Psychology 5巻、207〜232ページ)。

中身はシンプルで、人は物事の頻度や確率を判断するとき、統計を数えるんじゃなくて、「どれだけ簡単に例が思い浮かぶか」で判断する、というもの。

人は、事例や連想がどれだけ容易に思い浮かぶかによって頻度や確率を見積もる。(筆者訳・要約)
Tversky & Kahneman (1973) Availability: A heuristic for judging frequency and probability. Cognitive Psychology, 5, 207-232

普段はこれで問題ない。よく起きることは思い出しやすいから、だいたい当たる。問題は、頻度と関係ない理由で「思い出しやすさ」が変わるとき。そこで判断が系統的にズレます。

実験1:Kで始まる単語と、3文字目がKの単語

有名な実験。「英語の文章から単語をランダムに選んだら、Kで始まる単語と、3文字目がKの単語、どっちが多い?」と聞く。実際は3文字目がKのほうが約2倍多い。でもKで始まる単語のほうが思い浮かべやすい。

結果、152人中105人が「1文字目のほうが多い」と答えた。K、L、N、R、Vの5文字で試して、5文字とも過半数が1文字目と答えてます。全部、実際は3文字目のほうが多いのに。

実験2:有名人の名前リスト

もう一つ。有名人の名前を39人分読み上げる。片方の性別は「すごく有名な人」19人、もう片方は「そこまで有名じゃない人」20人。そのあと「男と女、どっちが多かった?」と聞くと、99人中80人が有名な人のほうの性別が多かったと間違えた。人数は少ないのに。

有名な名前は記憶に残る。記憶に残ったものを「多かった」と判断する。これを犯罪に置き換えると、そのまんまです。

犯罪報道で起きていること

凶悪事件はニュースで繰り返し流れる。SNSで切り抜きが回る。衝撃的なほど記憶に残る。すると頭の中で「最近こういう事件、よく見るな」が「最近こういう事件、よく起きてるな」にすり替わる。記憶の中の件数が、現実の件数として扱われるわけです。

論文の中でもトベルスキーとカーネマンは、道ばたでひっくり返った車を見たあとは事故の確率を高く見積もる、という例を挙げてます。昨日ニュースで見た通り魔事件が、今日のあなたの治安感覚を決めてるんですよ。

⑤ 「殺人は糖尿病より多い」と答えた人たち

この話は犯罪でも実際に調べられてます。1978年にリクテンスタインやスロビックらが、米国の大学生や市民団体の人に41種類の死因の年間死者数を推定させた研究(Slovicら1980年の解説)。

結果、殺人は糖尿病や胃がんより多いと判断された。実際は逆。脳卒中による死者は殺人の約11倍なのに、ほぼ同じくらいと見積もられた。過大評価された死因は竜巻、火災、殺人みたいな派手なもの。過小評価されたのは、一人ずつ静かに亡くなる病気でした。

翌1979年、同じグループのコームズとスロビックが米国の東西2つの地方紙を1年間(隔月)調べた。病気は殺人の100倍近い命を奪っているのに、記事の数は殺人のほうが約3倍多かった。しかも殺人の記事は病気の記事の2倍以上長い。

そして人々の推定の偏りと、新聞の報道量の偏りはよく似ていた、という結論です。

ただし、ここは注意が必要

公平のために書いておきます。2024年にミュンヘン工科大学のパハー教授(Thorsten Pachur)がこの古典研究を再分析しました(TUMの発表、Cognition 246巻)。

結論は「メディアが派手な死因を多く報じているのは事実。でも人がそれを過大評価しているという結果は、その後の研究では再現できなかった」。むしろ身近な知人の死のほうが危険の判断に強く効いていた、と。

つまり全員が全員「ニュースを見たら必ず錯覚する」とまでは言えない。人はそこまでバカじゃない。りこうなひともいる。ここは大事なので強調しておきます。

ただ、日本の警察庁アンケートでは、回答者自身が「悪くなった理由」に報道を挙げ、実体験は14.2%だけと答えてる。少なくとも治安の体感については、報道が判断の材料になっていることを本人たちが認めてるわけです。

⑥ 悪いニュースほど強く刺さる

もう一つ重なるのがネガティビティ・バイアス。心理学者バウマイスターらの2001年のレビュー論文「Bad Is Stronger Than Good(悪は善より強い)」(Review of General Psychology 5巻4号)は、悪い出来事や悪い情報のほうが、良いものより強く影響し、より念入りに処理される、という研究を大量に整理してます。

「今年も殺人が減りました」はニュースにならない。「白昼の住宅街で強盗」はトップニュースになる。悪いニュースは選ばれやすく、見たら記憶に残りやすい。二重に効いてくる。

日本でもこの「体感と統計のズレ」は昔から指摘されてて、犯罪学者の浜井浩一さん(龍谷大学)は2004年に「日本の治安悪化神話はいかに作られたか」という論文を書いてます(科研費の研究成果)。20年経っても構図は同じ、ということ。

⑦ 「外国人で治安が悪化した」も同じ錯覚

ここからが本題。いまSNSで一番よく見る「外国人が増えて治安が悪くなった」。これもデータで見ると、利用可能性の錯覚とまったく同じ形をしてます。日本と英国、両方見ます。

日本:外国人は1.85倍、犯罪は3割減

在留外国人は2015年末の223万2,189人(出入国在留管理庁)から、2025年末は412万5,395人(同)。10年で1.85倍、初めて400万人を超えました。

その間に刑法犯の認知件数は2015年の109万8,969件(警察庁 犯罪被害者白書)から2025年の77万4,142件へ。約3割減です。

外国人が倍近くに増えた10年で、犯罪は3割減った。「外国人が増える→治安が悪くなる」が本当なら、逆の動きになっていないとおかしい。

刑法犯で検挙された人のうち、来日外国人の割合は2025年で3.7%(警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」図表、内閣官房の会議資料に収録)。過去最高ではあるけど、9割6分以上は来日外国人以外です。

しかも①で見たとおり、ここ4年の増加分の主役は詐欺と、届け出やすくなった性犯罪。特殊詐欺は東南アジアなど海外に拠点を置き、そこから国内の実行犯に指示を出している、と警察庁は書いてます。匿名・流動型犯罪グループで検挙された人の約3割はSNSの募集に応じた人で、20代までが約6割。「近所に外国人が増えたから」で説明できる中身じゃない。

かつての日本でもこの思い込みは強くて、2006年の内閣府調査では、治安が悪くなった原因の1位が「来日外国人による犯罪が増えたから」で55.1%だったとされます。

英国:移民のピークに、殺人は最低

昨日の記事のおさらいです。英国の純移民は2023年3月期に94万4,000人でピーク、2025年は17万1,000人(英国統計局)。その移民が最大だった時期に何が起きたか。

殺人は2025年3月期に被害者522人、人口100万人あたり8.6人で1977年以来の最低(英国統計局、2026年2月5日)。犯罪被害調査では暴力犯罪が1995年のピークから約78%減(同、2026年7月23日)。

移民が過去最大の波だった時期に、殺人は半世紀ぶりの低さ。これが英国の現実です。

英国人は外国人の犯罪を「2倍」に見積もっている

で、決定的なのがこれ。キングス・カレッジ・ロンドンが2026年8月に出した調査(発表・報告書、YouGovで2026年3月に実施)で、英国人に犯罪者の中の外国人の割合を推定させてます。

質問 国民の推定(中央値) 実際
刑務所の収容者に占める外国籍の割合 25% 12%
性犯罪で警告・有罪になった人に占める外国籍の割合 30% 15%
同上(リフォームUK支持者の推定) 50% 15%
殺人で有罪になった人に占める白人の割合 45% 64%
出典:King’s College London Policy Institute, Wrongful convictions? (2026年8月)。実際の値は英国統計局とオックスフォード大学Migration Observatoryのデータ

外国人の割合はどれも現実の約2倍。リフォームUK支持者のズレが一番大きい。そして「刑務所の半分以上が外国人」と思い込んでいる人では、移民により重い刑を求める人が54%に跳ね上がる(全体では35%)。歪んだ認知が、そのまま政策の要求になっているわけです。

「外国人=犯罪」はなぜ消えないのか

実はトベルスキーとカーネマンの1973年の論文には、もう一つ大事な話が入ってます。錯誤相関(イリュージョリー・コリレーション)。本当は関係のない2つのものが、一緒に起きているように見えてしまう現象です。

論文が紹介しているチャップマンらの実験では、単語のペアを同じ回数ずつ見せても、「ライオン—トラ」のように連想しやすいペアのほうが多く出てきたと答えた。論文はこれを利用可能性で説明していて、しかもこの思い込みは反対のデータを見せても消えにくく、実際の相関がマイナスでも残ったと書いてます。

「外国人」と「犯罪」は、ニュースの見出しで繰り返しセットで流れる。だから頭の中で強く結びつく。結びつきが強いと「よく一緒に起きている」と感じる。外国人が増えて犯罪が減っても、つまり現実の動きが逆でも、その結びつきは消えない。半世紀前の実験がそのまま当てはまってるんです。

正直に書いておくと、人口あたりの検挙率で見ると外国人のほうが日本人よりやや高めに出るという分析はあります。若い男性が多いなど年齢構成の違いでかなり説明できますが、ゼロにはならない。これは前の記事で検証しました。でもそれは「日本の治安が外国人で悪化した」とは全く別の話。治安全体は、外国人が増えた10年で3割良くなっている。

こういうと必ず「外国人は逮捕されないから数字にはでない」と主張する人がいるんですが立件さける比率は外国人の方が高いし(法務省発表)、こんなに検挙される人が減ってるのは犯罪を犯しても逮捕されないからだとおっしゃるなら「警察のレベルが下がって逮捕できる比率が大きく下がった」という公的データを見せてください。ないなら単なる妄想です。お薬貰ってくださいね。
ちなみに先進国で犯罪が大減少したのは「科学捜査の進歩」「街中にある監視カメラ」のおかげと言われています。昔ならアタオカの犯人が連続殺人をやらかしたわけですが、いまは一回で逮捕されてしまう。アメリカでも連続殺人は1980年代にピークを迎え、1990年代以降に大きく減少しました。

⑧ でも詐欺の不安は錯覚じゃない

ここまで読んで「なんだ、全部気のせいか」と思った人。それも違います。

警察庁のアンケートで「悪くなった」と答えた人が思い浮かべた犯罪のトップは、オレオレ詐欺や投資詐欺、ロマンス詐欺、フィッシング詐欺などの詐欺で72.0%。次が個人情報の流出と無差別殺傷事件。

項目 2025年 前年比
特殊詐欺の認知件数 2万7,758件(過去最多) +31.9%
特殊詐欺の被害額 約1,414億円(過去最多) +96.7%
うちオレオレ詐欺の件数 1万4,393件 +113.2%
SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額 約1,827億円(過去最多) +43.6%
出典:警察庁「令和7年の犯罪情勢」。特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺は暫定値

詐欺は本当に爆増してる。だから「詐欺が増えた」という感覚は正しい。

問題は、詐欺で感じた不安が「治安全体が悪くなった」「夜道が危ない」「外国人が増えたから」みたいな別の方向に飛び火すること。海外拠点の詐欺グループが国内で実行役を雇ってるのに、矛先は近所の外国人に向かう。無差別殺傷事件も上位に挙がってますが、これはまれだから大ニュースになる類の事件です。

本当に気をつけるべきは、通り魔より親や自分のスマホにかかってくる電話とSNSのDM。お金の被害が1年で倍になってるんだから。

最後に

まとめると、

刑法犯はピークから7割減、強盗は8割減。それでも8割の人が「悪くなった」と思っていて、理由を聞くと76.4%が「報道で見たから」。実体験は14.2%。

人間は統計で治安を判断していない。昨日見た凶悪事件のニュースを思い出して判断してる。心理学ではこれを利用可能性ヒューリスティックといいます。

「外国人で治安が悪化した」も同じ構造です。日本では外国人が1.85倍になった10年で犯罪は3割減、英国では移民がピークの時期に殺人が1977年以来の最低。それでも英国人は犯罪者に占める外国人の割合を現実の2倍に見積もっている。外国人で治安が悪化した、というのは事実ではなく、認知の歪みです。

ただし詐欺は本当に過去最多。怖がる量じゃなくて、怖がる方向を間違えている、というのが正確なところです。

「最近、物騒になったよね」と言われたら、こう返してみてください。「強盗、20年ちょっと前の5分の1だよ。でもお母さん、詐欺電話は気をつけてね」って。で、治安を良くするなら外国人入れないよりネット専門のエンジニアを警察にたくさん入れる方がよほど効果がありますね。

いまの科学捜査って本当に凄いんですよ。読んでみたら分かる

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この記事の検証について
原典確認済み:警察庁「令和7年の犯罪情勢」(刑法犯・罪種別の件数と増減率、強盗・殺人、特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺、治安に関するアンケートの調査方法と各割合)、法務省 令和4年版犯罪白書(2002年の戦後最多)、平成30年版警察白書(強盗のピーク)、令和5年版警察白書(内閣府調査の54.5%)、Tversky & Kahneman (1973) 原論文(定義、実験の人数と結果、ひっくり返った車の例)、Baumeister ほか (2001) の書誌と要旨、浜井浩一 (2004) の論文名と掲載誌(科研費データベース)、出入国在留管理庁(2015年末・2025年末の在留外国人数)、犯罪被害者白書2020(2015年の刑法犯認知件数)、警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」図表(内閣官房資料に収録、来日外国人の検挙人員割合3.7%)、英国統計局(純移民のピークと2025年値、殺人率、暴力犯罪の減少率)、King’s College London の調査(発表文と報告書)
報道・二次情報ベース:Lichtenstein ほか (1978) と Combs & Slovic (1979) の数値(原論文ではなく同じ著者らによる1980年の解説章から)、Pachur (2024) の再分析の内容(論文本文ではなくミュンヘン工科大学の発表文から)
確認できなかった主なもの:内閣府 平成18年「治安に関する世論調査」の「来日外国人による犯罪が増えたから」55.1%(原典を開けず)(筆者計算:7割減、8割減、2021年比36%増、報道は実体験の5倍以上、在留外国人1.85倍、刑法犯約3割減)

編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年10月16日の記事より転載させていただきました。

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