日本病のカルテ(16) 社会保障の世代間格差は「資産格差」

  • 社会保障の格差の本質は世代だけでなく、遺産を相続できる人とできない人の資産格差にある。
  • 老人に偏る資産と「老老相続」で、資産の乏しい現役世代が裕福な老人まで支える不公平が生じている。
  • 積立方式に移行しても過去の年金債務は消えないため、消費税の増税と社会保障支出の削減と年金積立金の活用で負担を軽減すべきだ。

「社会保障国民会議」が設置され、高市首相も「全世代を通じて納得感が得られる社会保障の構築に向けた国民的な議論を進める」というが、有効な具体案は何一つ示されていない。それどころか社会保障の重要な財源である消費税を減税するなど、政策は迷走している。

日本経済の低迷する最大の原因は、高齢化と人口減少である。これ自体は変えようのない運命だが、今の賦課方式の社会保障は、現役世代から老人に巨額の所得移転をおこなって高齢化のひずみを増幅し、現役世代の貧困化と将来不安をもたらしている。

子の世代は親の世代より豊かになる

社会保障の問題を議論するとき、「若者は親より貧しくなる」とか「孫は親より1億円損する」という話が出てくるが、これは間違いである。若者は老人より豊かになるのだ。問題はその豊かさの分配である。

日本のような賦課方式の公的年金は、親の年金を子供が払う国営ネズミ講である。今の60歳以上は、終戦直後の社会保険料の低い時代に払ったので負担は小さく、年金支給額は大きいので、生涯所得で約4000万円プラスになる。

それに対して今の20歳代は、昔より少ない人口で昔の老人の年金を負担するので、社会保険料(年金・医療・介護)が大きくなる。その負担も次の世代に先送りするので、今年生まれた将来世代は、負担が受益より約8300万円多くなる。合計1億2400万円も世代間格差がある、というのが世代会計による説明である。

図1 世代会計による負担と受給の格差(小黒一正氏)

このように税と社会保険料の負担と受益の関係だけをみると、若者は大幅な負担超過になるが、所得と消費は子や孫のほうが多い。たとえば1950年代生まれの私がテレビを初めて見たのは中学生になってからだし、そのころは自宅に電話もなかった。自家用車をもっている人もほとんどいなかった。

それに対して2010年生まれの孫は子供のころからテレビもスマホも使っている。消費する情報量は、この50年で1億倍以上になった。このような消費量を累計すると、孫の世代の生涯消費の累計は祖父の世代のほぼ2倍である(内閣府)。問題はそこではないのだ。

続きはアゴラサロンでどうぞ(初月無料)

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント