10月19日の参院予算委員会で、日本維新の会の猪瀬直樹参院幹事長が生活保護受給者の医療費全額公費負担(医療扶助)について質問した。これに対して上野厚労省は「適正化を図る」とこれまでより一歩前進する答弁をした。

産経新聞
制度の現状と規模
生活保護制度では、受給者の医療費は原則として全額を「医療扶助」として公費(税金)で負担する。患者側に自己負担がなく、福祉事務所が医療機関を選定するなどの仕組みになっている。
2026年度の生活保護費負担金は約3.7兆円で、そのうち医療扶助が半分以上を占める約1.9兆円(過去には1.7〜1.8兆円規模で推移)。すべて国費・税金で賄われており、生活扶助を上回る規模だ。受給者の約85%が医療扶助を利用しているとのデータもある。
猪瀬氏の指摘と主張
猪瀬氏は、自己負担がないために「患者と医療機関の双方にモラルハザードが生じ、頻回受診や多剤重複投薬が起きている」と指摘。具体例として、患者の80%以上が生活保護受給者の病院が合計324あり、そのうち全患者が受給者の病院が11あること、睡眠薬などを無料で入手して若者に配るなどの悪用事例を挙げた。
また、紹介状なしで大病院を受診した際の特別料金(初診時7000円以上)が、働いて保険料を払う人は負担するのに生活保護受給者は免除される点を問題視。「一生懸命働いて保険料を払っている人達とのバランスを考えると納得を得られない」と公平性を問うた。
提案として、受給者を国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入させ、保険料や自己負担相当額を支給することで「不要な医療を控えるインセンティブ」を働かせる案を示した。さらに、給付付き税額控除(負の所得税)の導入で生活保護制度自体を見直す方向性にも言及している。6月の厚労委員会でも同様の主張を展開し、医療扶助費が横ばいなのは行動変容を促す施策になっていないと批判していた。
上野厚労相の対応
上野賢一郎厚生労働相は「医療費の無駄をなくす観点から徹底的に適正化を図っていく」と述べ、課題認識を示した。大病院の特別料金についても「課題だと考えている」とし、厚労省の有識者検討会で議論中で「公平性の観点を踏まえて見直しを検討していきたい」とした。
6月時点では「必要な受診まで抑制されるおそれがある」と自己負担導入に慎重な姿勢を示し、保険料負担能力の欠如や他の被保険者・地方保険者への影響を理由に慎重検討を求めていた。今回は不正事例を認めつつ「まず政府として努力させてほしい」と適正化を強調。高市早苗首相も専門家検討会を通じた対応を支持したとされる。
厚生労働省では「医療扶助・健康管理支援等に関する検討会」で、医薬品の適正使用、適正受診、訪問看護の適正化、データ活用などを議論中で、マイナンバー活用による重複受診・多剤投与抑制なども論点になっている。







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