東京ポイント1万1000円を配るために低所得者にスマホまで無料貸与

東京都は11月から、低所得者を対象にスマートフォンを最大3カ月間、無償で貸与する事業を始めます。通信料も都が負担するというものです。一見すると生活困窮者に優しい政策ですが、その仕組みを見ると、東京都の税金の使い方に疑問が浮かび上がります。

【参照リンク】東京都、低所得者にスマホ無償貸与 ポイント1.1万円取得可能に 日本経済新聞

そもそも、この事業の背景には東京都公式アプリ「東京アプリ」の普及策があります。都はマイナンバーカードで本人確認した15歳以上の都民に、1万1000円相当のポイントを付与しています。スマホを持たない人がポイントを受け取れないため、端末まで貸し出すというわけです。

小池百合子東京都知事 東京都HPより

1万1000円を配るために、いくらかけるのか

問題は、ポイントを配るための行政コストです。

今回の事業では電話予約を受け付け、対面窓口を設け、スタッフが本人確認や初期設定、操作説明を行います。貸与期間が終われば端末を回収し、データを消去する作業も必要になります。

貸与台数は先着500台。わずか500台の試行事業のために、受付から返却までの仕組みを用意することになります。

もちろん、デジタル機器を使えない人への支援は必要です。しかし、1万1000円のポイントを受け取ってもらうために、行政はいったいいくら使うのでしょうか。委託費、人件費、通信費、端末管理費を合計し、利用者1人当たりの行政コストを明らかにすべきです。

3カ月後には元の生活に逆戻り?

さらに疑問なのは、貸与期間が最大3カ月という点です。

都はスマホ購入者へのデータ移行支援も用意しています。しかし、購入費や通信費を継続的に負担できなければ、デジタル格差の解消にはつながりません。

今回の事業が試行的な取り組みなら、評価すべきは貸与台数やアプリ登録者数ではなく、返却後もスマホを利用し続けられた人の割合でしょう。

ポイントを配るために補助金を配る

東京都は高齢者についても、スマホ購入費を最大3万円補助する区市町村の取り組みを支援しています。

つまり、行政アプリを普及させるためにポイントを配り、そのポイントを受け取るためのスマホ購入にも補助金を出し、さらにスマホを持てない人には端末を貸し出す。補助金が次の補助金を呼ぶ構造になっています。

東京都は潤沢な税収を背景に、こうした事業を展開できます。しかし、「都が負担する」という言葉は正確ではありません。最終的に負担するのは納税者です。

本当に生活困窮者を支援したいなら、ポイント配布にこだわらず、より直接的な給付を検討すべきではないでしょうか。

行政のデジタル化は、本来、手続きの簡素化と行政コストの削減を目指すものだったはずです。ところが、アプリを普及させるために電話予約や対面窓口を増やしているのでは、何のためのデジタル化なのかわかりません。

東京都が検証すべきなのは、スマホを何台貸したかではありません。1万1000円を配るために、納税者がいったいいくら負担したのか、ということです。

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