
DREAMS OF VIOLETS | Official Announcement Trailer
AIで作られたドキュメンタリーを観る。興味深い。AIで作られたSF映画を観る。面白い。困ったことに「面白い」のだ。
23年、ハリウッドで起きた俳優たちのストライキは、AIに対する反発が理由の一つだった。「自分たちが要らなくなってしまうのではないか」。彼らの不安は現実になった。著名監督が、AIだけで映画を作り始めたのだ。彼らの作品を観てみよう。
『第9地区』監督のAI映画『NIGHTBORNE』
『NIGHTBORNE』は、『第9地区』の監督ニール・ブロムカンプが手掛けたAI映画である。戦死した兵士を戦闘マシーンとして再生する国家プロジェクトを、ドキュメンタリー形式で描いた作品だ。13分と短いので(ゾンビ映画に抵抗がなければ)是非ご覧いただきたい。
俳優たちの名前がエンドロールで流れる。だが、出演してはいない。「演技」したのはデジタルクローンだ。AIが、俳優たちの画像データと音声データから登場人物を生成し「演技」させている。
32万円で作られた『ドリームズ・オブ・バイオレッツ』
作品をもう一つ。『ドリームズ・オブ・バイオレッツ』は、アッシュ・クーシャ監督によるイランの市民抵抗運動を描いた作品だ。米トライベッカ映画祭公式部門に選出されている。
俳優は過去に知り合った人々を参考に創造し、セリフは監督の声をそれぞれの役柄に合うよう調整し、画像は報道・写真・目撃者証言から生成している。結果、制作期間は6か月、制作費はわずか2000ドル(約32万円)に抑えられた。
AI企業に近付く映画監督たち
なんのことはない。AIに反対していたのは俳優や脚本家だけで、監督たちの反応は冷ややかだった。『アバター』の監督ジェームズ・キャメロンは以下のように語っている。
「あと20年待ってみよう。もしもAIの書いた脚本がアカデミー賞脚本賞に輝いたら、その時に真剣に考えてみればいい」
「AIを兵器として利用することの方がずっと危険だ」
ジェームズ・キャメロンがAI論争に反応「私は1984年に警告していた」
このコメントの1年後、ジェームズ・キャメロンは、AI企業「Stable Diffusion」の取締役に就任している。キャメロンだけではない。『タクシー・ドライバー』の監督マーティン・スコセッシも、AI企業「Black Forest Labs」のアドバイザーを務めている。『スターウォーズ』のジョージ・ルーカスは、以下のように語っている。
「人工知能(AI)のおかげで、映画制作がずっと楽になった」
「それが進歩であり未来なのだ」
どのような未来なのか? AI映画の祭典「ヒッグスフィールド・グローバル映画祭」で、それを垣間見ることができる。
賞金100万米ドルのAI映画祭
「ヒッグスフィールド・グローバル映画祭」は、生成AIによる映画制作に特化した国際コンペティションである。制作ツールはヒッグスフィールド内の生成AIに限定される。俳優を使わずロケを行わないという点では、先の両監督と変わらない。
賞金総額は100万米ドル(約1億5千万円)。応募総数は約67,000作品。「アクション・SF・ファンタジー」の出品が目立つ。これらのジャンルは、セリフが少なく、動きがハデで、表情も大げさにできるため、粗い演技でもごまかしがきくからだ。一方「ヒューマンドラマ」は、微妙な表情、ゆるやかな動き、情感的なセリフなど熟練した演技が求められるため、ごまかしがきかない。そのせいか出品が少ない。
これがそのまま、未来の映画分布となる。「名優」を必要とする映画は減っていく。この先、山田洋次の『男はつらいよ』や、倉本聰の『北の国から』のような作品は生まれてくるだろうか。
衰える感性
映画祭の作品を観る。映像の質は極めて高い。見慣れると演技の粗さも気にならなくなってくる。さぁ困った。面白いのだ。
『春の雪』(2005年)で、姿を映さず気配だけを撮らせた竹内結子。『世界の中心で愛をさけぶ』(2004年)で、頭髪を剃り笑顔を見せた長澤まさみ。彼女たちの凄みを感じられるだけの感性は持ち続けたいものだ。映画に限らず文化・芸術のあり方を決めるのは、私たち大衆なのだから。







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