デジタル庁ダッシュボードが示す「リフィル処方箋」が使われないワケ

猪瀬直樹さんと医療制度について議論している最中に、デジタル庁の「政策ダッシュボード」の話になりました。

デジタル庁は、各省庁の政策のKPIや進捗をデータで可視化して公開しています。そのひとつに「リフィル処方箋の認知率や利用状況に関するダッシュボード」があり、今年8月にデータが更新されたばかりです。

これを眺めていて、改めて考えさせられました。

リフィル処方箋とは、症状が安定している患者さんに対して、医師が定めた期間内に最大3回まで繰り返し使える処方箋のことです。2022年度に導入されました。

高血圧や花粉症、痛風など、毎月同じ薬をもらうためだけに病院に通っている方は多いと思います。その「薬をもらうためだけの受診」を減らせるのがリフィル処方箋です。

患者にとっては通院の時間とお金の負担が減る。医療機関にとっては本当に診察が必要な患者に時間を割ける。そして国全体では、再診料や処方箋料が減って医療費の総額が抑制されます。

誰にとってもメリットがあるはずの制度です。

b-bee/iStock

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では、どれくらい使われているのか。

ダッシュボードが参照している厚労省の資料によれば、2024年11月時点で、全処方箋のうちリフィル処方箋が占める割合はわずか0.07%です。導入から2年半経って、1万枚に7枚。

医師へのアンケートでも、「積極的に検討する」が6%、「患者の希望があれば検討する」が53%で、合わせて約6割に発行意向があります。しかし残りの約4割は「検討には消極的」と答えています。

そして意向のある6割に対して、実際に発行した経験のある医師は3割にとどまる。意向はあるけれど、実際には出していない医師が相当数いるわけです。

なぜこのギャップが生まれるのか。

医師側が挙げる普及の課題で最も多いのは「患者への仕組みの周知が十分でないこと」(67.5%)です。

ここが面白いところで、医師や薬剤師のリフィル処方箋の認知度はほぼ100%に近いのに、患者の認知度は3割に届いていません。「患者の希望があれば出す」という医師が過半数なのに、肝心の患者が制度を知らないから希望が出てこない。

医師は患者が言ってくるのを待ち、患者は制度を知らない。お互いが相手のボールだと思っている状態です。

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もちろん、医療側の言い分も理解できます。

リフィル処方箋が広がれば再診の回数は減りますから、医療機関の収入には直接響きます。「患者の症状の変化に気付きにくくなる」という懸念も、現場感覚としては本物でしょう。

ただ、その懸念があるからこそ、医師の判断で「この患者さんなら大丈夫」と選別できる制度設計になっているはずです。制度上は医師が主導権を握っているのに、使われていない。

そしてもう一つ気になるのが、政府が設定したKPIです。

「2030年度までに95%以上の医師がリフィル処方箋または28日以上の長期処方を発行したことがある」という目標なのですが、同じ調査で「どちらかを実施したことがある」医師はすでに90.8%です。

長期処方(一度に28日分以上まとめて出す処方)は、すでに全処方箋の約半分を占めています。リフィル処方箋と「または」でくくってしまえば、目標はほぼ達成済み。これでは制度を広げるドライブにはなりません。

患者の認知度50%という目標は良いとしても、リフィル処方箋そのものの発行率を直接KPIに置くべきではないか。これは政策改善対話の場でも議論されている論点です。

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リフィル処方箋ひとつで医療費が劇的に下がるわけではありません。

それでも、「制度はあるのに使われていない」ものが医療の世界にはまだまだ山ほどあります。

こうしたものを一つひとつ、データに基づいて潰していく。その積み重ねの先に、現役世代の社会保険料を下げる道があります。

デジタル庁のダッシュボードは誰でも見られます。自分の都道府県の発行率も確認できますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2026年10月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

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