ニュースを読もうとウェブサイトを開くと、突然、性的な描写を含む漫画広告が現れる。女性の胸や下着を強調したイラスト、不倫や性暴力を連想させる漫画など、思わず画面を閉じたくなるような広告も珍しくない。
しかも、こうした広告が表示されるのはアダルトサイトだけではない。一般のニュースサイトや料理のレシピサイトにも登場する。なぜ、普通の記事を読んでいるだけなのに、こんな広告を見せられるのだろうか。
問題の背景には、ネット広告の収益構造がある。

性的広告への苦情は年間1937件
日本広告審査機構(JARO)が2026年7月に公表した2025年度の苦情受付状況によると、広告への苦情は1万2589件と過去最多を記録した。インターネット広告への苦情は全体の60.9%を占め、初めて6割を超えた。
なかでも性的な広告への苦情は1937件に達し、その85.5%がインターネット広告だった。電子書籍・動画・音楽配信に関する苦情1171件のうち、909件が性的な表現に関するものだった。
JAROによれば、電子コミックの広告では性行為や性暴力を暗示する表現について、掲載場所が不適切だという苦情が相次いだ。レシピサイトなどへの性的広告の掲載も問題視されている。
さらに、閉じるボタンが極端に小さい、広告を消そうとすると別のサイトに飛ばされる、画面が広告で覆われて記事が読めないといった苦情もある。
これは単に広告の好みの問題ではない。利用者の意思を無視した広告配信の問題である。
なぜ過激な広告が選ばれるのか
ネット広告の特徴は、広告枠が自動的に取引されることだ。多くのサイトでは、広告主が媒体社に直接申し込むのではなく、広告ネットワークや広告配信事業者を通じて広告が掲載される。
そこで重視されるのが、クリック率やコンバージョン率(購入などの成果に結びつく割合)である。
広告主は限られた予算で、できるだけ多くの客を獲得したい。強い刺激で注意を引く表現が成果につながるなら、そうした広告を選ぶ経済的な誘因が生まれる。
もちろん、性的な広告が他の広告より高い収益を生むとは一概にいえない。しかし、短期的な成果を競う仕組みには、広告の不快感や媒体の信用低下が十分に反映されないという問題がある。
広告をクリックした人数は数値化できるが、広告に嫌悪感を覚えてサイトを離れた人や、その媒体を二度と見なくなった人の損失は見えにくい。
広告主が成果を得る一方、読者や媒体社が不快感や信用低下というコストを負担する。経済学でいう「外部不経済」に近い構造である。
「エロ広告が出るのは本人のせい」は誤解
性的な広告が表示されると、「普段からエロサイトを見ているからだ」とからかわれることがある。しかし、これは必ずしも正しくない。
Googleの広告配信の仕組みによれば、広告には閲覧履歴や推定される関心などを利用するものだけでなく、閲覧中のページや地域などに基づいて表示されるものもある。
したがって、性的な広告が表示されたからといって、本人がアダルトサイトを閲覧していた証拠にはならない。
利用者の行動を勝手に推測する以前に、なぜその場所に性的広告が配信されたのかを問題にすべきだろう。
広告で収益を得るニュースサイトの責任
広告業界にルールがないわけではない。Googleは性的コンテンツに関する広告ポリシーを定め、広告の内容や配信条件を制限している。
日本インタラクティブ広告協会(JIAA)も2026年4月、広告掲載基準のガイドラインを改定し、不適切な広告の排除や広告品質の確保を求めている。
それでも問題がなくならないのは、広告の数が膨大で、表示内容も利用者によって異なるからだ。媒体社がすべての広告を事前に確認することは難しい。
しかし、「広告は外部の会社が配信している」という説明だけで、媒体社の責任がなくなるわけではない。
どの広告配信会社を利用し、どんな広告を許容するかは、サイト運営者の経営判断でもある。広告枠を提供して収益を得ている以上、その品質に一定の責任を負うのは当然だ。
もっとも、こう書いているアゴラもニュースサイトであり、広告収入によって運営を支えている。広告の表示によって記事が読みにくくなったり、読者にさまざまな不便をかけたりしていることもあるだろう。その点は、編集部として率直に認めなければならない。
広告を減らせば収益が減る。収益を確保しようと広告を増やせば、読者の利便性が損なわれる。これはアゴラ自身にとっても他人事ではない。
そんな立場で、他のニュースサイトの広告を偉そうに論評するのも、いささか気が引ける。この記事を読んでいる最中にも、画面に邪魔な広告が表示されているかもしれない。そう考えると、なかなか笑えない話である。
ただし、だからこそ広告の問題を避けて通るわけにはいかない。
成人が性的な漫画やコンテンツを楽しむ自由は尊重されるべきだ。しかし、見たくない人や子どもにも、それを一方的に見せることは別問題である。
ニュースサイトにとって最大の資産は、広告枠ではなく読者の信頼だ。目先の広告収入を優先して読者を失えば、長期的には媒体自身の利益も損なわれる。
ネット広告の本当の問題は、エロいことではない。読者の不快感というコストを誰も十分に引き受けず、その一方で広告の収益だけが追求される構造にある。
読者を犠牲にして広告収入を得るビジネスは、いつまでも続かない。もちろん、これはアゴラ自身にも向けられた戒めである。







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