
「御社の抱える課題を、弊社は解決できます。まずは詳しくお話しをお聞かせください。準備は一切不要です」
こうやって企業に売り込もうとする会社は、とてもよく見かけます。
一見、誠実な売り込みです。しかし企業相手のB2B商売では、この方法で集客しても、問い合わせはまず来ません。受注もほぼ確実にムリです。
企業側のコストを考えていないからです。
こうして売り込む会社は、こう考えています。
「自分たちの強みで、お客様の課題は必ず解決できる。まずはお客様の課題を誠実に聞いて、理解することが出発点だ」
「オンライン会議ならお客様の負担も軽いし、準備不要といえば気軽に話してくれるはずだ」
売り込みを受ける企業側は、こう考えています。
「なんで、ウチの貴重な時間を使わなければいけないの?」
「時間」は貴重なリソースです。
企業の1時間のコストを金額換算してみましょう。
B2B商売は金額が大きく、顧客企業の仕事の進め方にも影響があるので、現場を統括する課長レベルへのコンタクトが必要です。
年収1,000万円の課長の時給は、年1,800時間勤務と想定すると、5,560円です。企業はこの課長に、給料以外の社内コストもかけています。実際の時間コストは1時間で数万円です。
これは課長1人のコストです。実務の影響を判断するには、商談に部下2〜3名を同席させる必要もあります。商談1時間のコストは、10万円を超えたりします。このコストは主に人件費なので、会議がオンラインでも対面でもほぼ変わりません。
またこの10万円は、「これを導入して、効果が得られるか否か」を見極めるための投資コストです。その後の商品購入金額と購入に付随する社内コストは、含んでいません。
つまり1時間の商談を行う場合、企業は「この商材を検討するために、10万円の社内コストをかける価値があるか否か」と考えています。
冒頭の売り込み方法の問題は、顧客がこうしたことを判断できる情報を提供していないことです。だからほとんどスルーされます。
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これがわかれば、対応策もわかります。
① まず、課題と解決策を、サイト上やパンフレットで具体的に示す
『御社の抱える課題を、弊社は解決できます』だけでは曖昧です。
まず自社が、どんな顧客企業のいかなる課題に対して、どのような具体的な解決策を提供でき、その結果、どんなビジネス成果が上がるのかを、明確に示すことです。
顧客は他社の提案も数多く受けています。自社が他社と何が違うのかを、客観的に示すことも必要です。
これが顧客から見て明確ならば、ストライクゾーンの顧客がやっと興味を持ってくれます。
私の印象では、売り込む企業の8割はこれらが曖昧です。一方で好業績の企業はほぼ例外なく、これらが明確です。
② 顧客事例を具体的に示す
エビデンスとして、実際の顧客事例を示し、その顧客がどんな具体的な課題を持ち、いかに自社製品がその課題を解決し、ビジネス成果は何だったかを示します。
これが顧客への説得材料になります。
なお言うまでもなく、事例で紹介する顧客企業からは事前承認をもらう事は必須です。
事前承諾は当たり前なことなのですが、顧客企業の承諾を得ず、『採用企業一覧』として顧客企業のロゴをホームページに掲載している企業も多いようです。
③ 売り込み先へのカスタマイズ
販売活動は、①と②を準備した上で始めます。
ここで必要なのは、売り込み先の顧客企業を事前に調べること。
社名でネット検索してもいいですし、日経新聞を購読していれば、日経サイトで過去記事を検索できるのでより詳しくわかります。
さらに日経テレコンを使えば、 主要新聞や雑誌の過去記事をカバーできるので、かなり高精度な情報が得られます。
こうした情報を元に、自分なりの仮説として
- この会社は、こんなことで困っているな
- ウチなら、こうやって課題を解決できそうだ
- これが解決できると、こんな成果が出るはずだな
と考えておきます。
その上で、顧客にコンタクトする時に、上記①と②を踏まえた上で…
「本社は、こんな課題を抱えておられないでしょうか? 弊社はこの課題を、このように解決し、こうした成果が出せると考えております。あくまで弊社が考えたことですので、ご興味があれば、お時間をいただいて、もう少しお話しできませんでしょうか」
と打診します。こうしたメールを作るのは手間がかかります。しかし顧客から見ると「ウチのことを考えてコンタクトしているな」とわかるので、返事が来る確率はグンと上がります。
一方で、こうした作業をせずに…
「[会社名] [担当者名]様。お世話になっております。貴社の〇〇という事業に大変感銘を受け…」
みたいなテンプレートに、相手の社名、氏名、事業名を入れて送る売り込みメールをよく見かけます。
皆様もこうしたメールを受け取ることが多いのではないでしょうか? 中には「[会社名] [担当者名]様」のまま送ってくる猛者もいます。
こうしたメールはほぼ100%読まれませんし、すぐにスパムメールに仕分けるお客もいます。
こうしたお客が増えると、メールシステムでこの会社のドメインが「スパムメール発信元」と学習され、会社のメールが届かなくなります。これって、怖いですね。
①〜③の作業をやるだけでも、案件獲得の可能性は大きく上がります。
逆にこうしたことをせずに、顧客リストにメールを大量に送り続けても、企業相手のB2B商売では、まず成果はあがりません。
もしあなたの会社のセールスが、「御社の課題を教えてください」という売り込みをしていたら、まずその方法を見直すところから始めませんか?
編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年11月3日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。







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