2026年11月3日に投開票された米サウスカロライナ州の上院選で、民主党のアニー・アンドリューズ氏が共和党のダーリーン・グラハム氏を破り、歴史的な勝利を収めた。共和党の牙城として知られる同州で、民主党が上院議席を獲得するのは1998年以来となる。

アニー・アンドリューズ氏Xより
今回の選挙が注目されるのは、サウスカロライナ州が2024年大統領選でトランプ大統領を約18ポイント差で支持した保守州だからだ。全米では大卒層ほど民主党支持が強い傾向が見られたが、同州では大卒層でも共和党支持が優勢だった。2024年の選挙結果からも、同州が民主党にとって容易に勝利できる地域ではなかったことが分かる。
選挙の構図を大きく変えたのは、共和党候補の選出過程だった。
長年にわたり同州の上院議員を務め、外交・安全保障政策で強硬派として知られたリンジー・グラハム氏が、今年7月に死去した。後任には、同氏の妹ダーリーン氏が任命され、兄の残り任期を引き継いだ。当初は暫定的な後継者とみられていたが、トランプ大統領の後押しを受け、ダーリーン氏は正式な上院議員の座を目指して特別選挙に出馬した。
しかし、共和党予備選の過程で、政治経験や政策知識の不足が露呈する。国家安全保障政策について問われた際、ダーリーン氏は「正直に申し上げますが、私は国家安全保障についてそこまで詳しくありません(I’m not that informed on national security)」と発言。さらに「国家安全保障は私の専門分野ではありません(National security is not my thing, not my area of expertise)」と述べた。
外交・安全保障政策に強い影響力を持ってきたリンジー氏の後継者としては、あまりにも心もとない発言だった。
トランプ氏の推薦にもかかわらず、共和党予備選は決選投票にもつれ込んだ。ダーリーン氏はラルフ・ノーマン下院議員を52.5%対47.5%という僅差で破ったものの、党内の結束には大きな亀裂が残った。
ノーマン氏も本選挙でダーリーン氏への積極的な支持を表明せず、投票日の約1週間前には支持者に対して「良心に従って投票してほしい(Vote your conscience)」と呼びかけた。共和党内の分裂は、トランプ氏の推薦だけでは埋められなかったのである。
対する民主党のアンドリューズ氏は、小児科医としての経歴を持ち、医療へのアクセスや生活費の問題を前面に掲げて選挙戦を展開した。共和党候補の政治経験の乏しさに加え、トランプ政権への不満を抱く無党派層や共和党支持者にも支持を広げた。
選挙直前の世論調査では、ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の合同調査で両候補が48%で並ぶなど、共和党優勢とみられていた選挙戦は接戦となっていた。そして開票の結果、アンドリューズ氏がダーリーン氏を破った。民主党にとっては、実に28年ぶりの同州上院議席奪還である。
今回の結果を、単純にサウスカロライナ州の有権者が保守からリベラルへと転向した証拠とみなすのは早計だろう。むしろ、共和党内の候補者選定の失敗、トランプ氏による過度な介入、そして党内の亀裂が重なった結果と見るべきだ。
とりわけ、トランプ氏が自ら推薦し、選挙戦でも支援した候補者が、共和党の強固な地盤で敗れたことの政治的意味は小さくない。党内予備選での勝利をもって、一般選挙での勝利まで保証されるわけではない。トランプ氏の個人的な影響力にも限界があることを示した選挙だった。
2026年中間選挙に向けて、共和党にとって警戒すべきなのは、民主党が従来の激戦州だけでなく、共和党が安泰と考えてきた地域でも勝機を見いだし始めていることだ。サウスカロライナの一議席をめぐる敗北は、トランプ政治の求心力と共和党の選挙戦略の双方に、改めて問いを突きつけている。







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