東大総長選「異例の大逆転」は文科省への「忖度」が裏目に出たのか

東京大学の次期総長選考をめぐる異例の「大逆転」が波紋を広げている。9月28日の教職員による意向投票では、染谷隆夫教授が1107票を獲得し、藤垣裕子教授の553票にダブルスコアで圧勝した。ところが、総長選考・監察会議が選んだのは藤垣氏だった。

藤垣裕子氏 東京大学HPより

なぜ学内の圧倒的な支持が覆ったのか。その背景として浮上しているのが、国際卓越研究大学の認定問題である。

国際卓越研究大学の認定を取るための「忖度」だったのか

東大は10兆円規模の大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学の認定を目指している。しかし、相次ぐ不祥事でガバナンスへの懸念が強まり、厳しい立場に置かれている。

関連法人の不正問題が発生した時期に代表理事を務めていた染谷氏を総長にすれば、文科省の心証を悪くし、認定に不利になるのではないか。選考会議が文科省の意向を「忖度」した可能性も指摘されている。

【参照リンク】東大総長選 投票はなぜ覆った? 異例の“大逆転”を追った NHK

現時点で、染谷氏本人の不正関与は認定されておらず、文科省が選出に難色を示した証拠もない。

忖度したはずの文科省から説明を迫られる皮肉

ところが、事態は皮肉な展開を見せた。

文科省は10月20日、東大に総長選考の検証を要求。さらに関芳弘文科相は11月2日、選考理由の説明が不十分だとして、さらなる説明を求めた。

仮に文科省の意向を先回りして染谷氏を外したのであれば、当の文科省から説明を厳しく迫られるという皮肉な構図になる。

認定を意識した判断だったとすれば、かえって認定に不可欠なガバナンスへの信頼を損なった可能性がある。

染谷氏には文科省所管の紫綬褒章

さらに注目されるのが、11月4日に東大が発表した染谷氏の紫綬褒章受章である。

染谷氏は「電子皮膚」などの研究を切り拓いた世界的な研究者で、2026年秋の紫綬褒章を受章した。

紫綬褒章は文科省が推薦事務を所管する栄典だ。総長選での敗北後も受章は取り消されていない。

研究業績への顕彰と大学経営者としての適格性は別問題だが、文科省が染谷氏の総長就任を望んでいなかったという見方には具体的な裏付けがない。

「染谷総長では国際卓越研究大学に認定されない」という話は、現時点では根拠の示されていない憶測にすぎない。

問われているのは東大の自主性だ

東大の制度では、教職員投票の最多得票者を必ず選ぶ必要はない。しかし、選考会議には合理的な判断と説明責任が求められる。

問題は染谷氏を選ばなかったことではなく、その理由を十分に説明できていないことだ。

国際卓越研究大学の認定を優先したのであれば、その判断材料を明らかにすべきだ。無関係なら、圧倒的な支持を覆した理由を説明すればよい。

文科省に忖度した結果、文科省からガバナンスを問いただされる。仮に忖度説が事実なら、これほど皮肉な話もない。

日本最高峰の大学がトップの選考理由を十分に説明できない。これこそ東大が抱える深刻な問題ではないか。

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