
米中間選挙で野党・民主党が連邦議会の上下両院の多数派を奪還し、「トランプ共和党の歴史的な敗北」(米CNN、日本の数紙)、「民主党、トランプ氏の政治地図を撃ち砕く」(英BBC)などと報道されています。
トランプ氏は「史上最悪の大統領」とされ、歴史的な愚行であるイラン戦争を始めたのですから、それだけでも今回の敗北は「歴史的」でしょう。
「神が選んだトランプ氏」がなぜ負けた
振り返れば、25年2月の日米首脳会談で当時の石破首相が暗殺未遂事件の写真をトランプ氏に示しました。トランプ氏は耳をかすめた銃弾で血を流しただけで生き残り、拳を突き上げた姿の写真です。石破氏は「歴史に残る一枚だ。大統領はこうして神様から選ばれたと確信していると思う」と、最大級の賛辞を送り、喜ばせました。「神が選んだ大統領」が再選後、2年足らずで敗北するのですかと、石破さんに今、問いたい。
高市首相は25年10月の日米首脳会談で、「日本と米国をより強く豊かにするために、日米同盟の新たな黄金時代をトランプ氏とともに作り上げていきたい」と述べました。
高市氏は「トランプ氏と築く新たな黄金時代」と述べました。黄金時代を築くはずの相手がレームダックになり、今後、高市氏はどのような対米外交をしていくのか。今頃、2人は軽はずみな発言を後悔しているに違いない。1、2年足らずのうちに「トランプ共和党の歴史的敗北」が訪れるとは、思ってもみなかった。トランプ氏一辺倒の外交の危うさを警告する識者は少なくなかった。
すがるトランプ氏はレームダックに
トランプ氏が目指した米中ロの関係強化は今後、どうなっていくのか分かりません。高市氏の下で日中関係が悪化しており、日本外交を修正しようにも、容易ではない。自分ひとりの感情的な思いで政策を動かすのではなく、プロフェッショナルな人材の声に耳を傾ける必要がある。
とにかく、中間選挙の結果を見て、私はこれまでの世界秩序、同盟関係の破壊に懸命な独裁者・トランプ氏を敗北に追い込んだ「米国民主主義の復元力」を見せつけられました。
中間選挙では、有権者は「イラン戦争を始めた米国の危機」、「物価高からくる自分たちの生活の危機」を感じて投票所に駆けつけ、50%程度という高い投票率(通常は40%程度)を記録しました。
米国政界のダイナミズムを感じる
激戦区のテキサス州では民主党のタラリコ氏が上院選で当選し、「真の闘いは左右(民主対共和)ではなく、上下(貧富の格差)だ」と宣言し、オバマ元大統領の再来かといわれています。実業家のマスク氏は企業基盤のあるテキサス州に9月だけで1億5800万ドル(250億円)も集中的に政治献金をし、その全額を共和党候補に回した。それをタラリコ氏が跳ね除けたのですから、すごいエネルギーです。
18歳から29歳の若者の72%が民主党に投票したそうです。日本の若者はどうか。日本の野党は小党分立でまとまらず、投票したくなる政党はないようだ。その米民主党は2つに割れている。日本の野党も与党にくっつく算段ではなく、連合を組んでその中で競争し合ったらどうなのだろうか。そうでもしないと、政権交代はいつまで経っても実現しない。
ミネソタ州ではイスラム教徒の下院議員が、ジョージア州では初の黒人知事が誕生しました。世襲議員ほど当選しやすい日本と違い、政界の新陳代謝が進む。選挙ではトランプ氏のような異物を生み出してしまう一方で、それを排除するエネルギーを内包しています。
トランプ氏の模倣はもうやめよう
「民主主義の復元力」が米国にはある。その米国は今回のイラン戦争に限らず、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン侵攻など歴史的な愚行を繰り返してきました。民主主義も数々の愚行を生む。その一方で、政権交代が常にあり、国家の軌道修正をしてきた。
今回の結果は「トランプ氏への審判でノーを突き付けたことにあり、民主党への積極的な支持があったとは考えにくい」との解説もある。28年の大統領選挙までに実績を作っていかないと、今の熱気は冷めやすい。「民主党と協力する」というトランプ氏の本音は何か。「協力、譲歩するから、過半数を取る民主党主導で弾劾裁判だけは避けてほしい」のでしょう。うっかりトランプ氏の誘いに乗らないことです。
トランプ氏のやり方を何かにつけ模倣してきたとしか思えない高市氏も、分立を続ける野党も米国政治をよく観察して、政治とはどうあるべきかを考える教材にしてほしい。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年11月5日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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