民主党は「郵政国営化」をめざすのか - 池田信夫
日本郵政をめぐるドタバタは、西川社長の続投と減給処分が出ても決着せず、民主党など野党三党は、西川社長の辞任を求めて集中審議を要求することを決めました。「官から民へ」をスローガンとする民主党が郵政国営化を求めるのはどういうことか、鳩山由紀夫代表は論理的に説明する義務があります。
今回の騒動は鳩山邦夫総務相のひとり芝居で、結果的には違法行為は見つからなかった。そもそも総資産100兆円を超える簡易保険の中で、100億円の資産売却だけをこれほど騒ぐ意味があったのか。かりに入札をやり直したとして、今回より高く売却できるのか。もっとも重大なのは、日本郵政の取締役会が西川社長の続投を決めたのに、総務相が独断でそれをくつがえそうとしたことです。これでは何のために民営化したのかわからない。
同じように特殊会社として民営化されたNTTもJRも、株主である財務省は株主総会には出席するが、何も発言しません。経営は民間にまかせ、法令違反などの特別な問題にかぎって政府が介入する権限を残すのが特殊会社の慣例です。今回の鳩山総務相の暴走は、民営化に悪い前例をつくったという意味でも見逃せない。
さらに奇妙なのは、「霞ヶ関の解体」を叫ぶ民主党が総務相に迎合し、日本郵政を国営に戻そうとしていることです。これは国民新党などとの共闘関係の配慮もあるでしょうが、鳩山由紀夫氏が党首討論でも「民主党が政権を取ったら西川氏を更迭する」と言ったことからみても、単なるリップサービスとは思えない。
現在の日本郵政には問題が多く、手直しすべき部分も多いでしょう。しかし、これを国営に戻すことは論外です。それが前例になれば、政府系金融機関や特殊法人などの民営化もすべて不可能になるでしょう。そういう「逆コース」の流れが始まれば、民主党のいう「天下り先を全廃して無駄をなくす」などというマニフェストは絶対に実現できない。
野党のうちは、こういう人気取りの空手形を行き当たりばったりに切るのもいいでしょう。しかし今度の選挙で民主党が政権をとった途端に、こういう矛盾した政策はたちまち行き詰まり、政権は空中分解するでしょう。それは細川政権のとき、小沢氏も鳩山氏も経験したはずです。実現できない政策は約束せず、約束した政策は必ず実行する――それが最低限度の責任政党の条件です。
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