一昨日、久しぶりに京都で電車に乗ったのですが、マスクをしている人の少ないことに驚きました。乗った車両にマスク姿は隣の席の1人だけで、しばらくすると盛んに咳こみ始めました。少し失礼とは思いながらも、我が身かわいさで、離れた席へと移動しました。
最近1週間の推計感染者数は15万人と既に報道(8/28)されているわりには驚くばかりの冷静な対応です。5月、数人の感染者が出ただけで、ものものしい検疫の光景を交えた連日の大報道が起き、街がマスクだらけになったのに比べ、とても同じ国のこととは思えません。
5月の騒ぎでは当初、致死率が過大に伝えられたことを考慮する必要がありますが、早い段階で修正された後もマスコミの大騒ぎは続きました。これは世界でも珍しい現象とされ、日本のマスコミの「異常性格」が指摘されました。
5月の報道が非常に誇張されたものであったことが判明した結果、現在の本格的流行が報じられても、「またか」ということになってしまったのでしょう。皆、新型インフルエンザに飽きてしまったのかもしれません。マスコミはまさに狼少年です。季節性と変わらない病状とはいえ、感染の脅威はこれからなのですが。
一週間の感染者が15万人と推定され、感染の機会は格段に増えているのに、マスコミのこの冷静さも不思議です。マスコミもまた飽きて、ニュースバリューがないと考えたのでしょう。しかしその結果、必要のないときにマスクを着用し、必要があるときに着用しないという逆さまの対応が起きてしまいました。大変不合理なことです。
報道機関の役割は読者・視聴者に必要な情報を過不足なく伝え、適切な対応を促すことにあります。マスクの着用という感染予防対策の実施状況から見る限り、マスコミの果たした役割はむしろマイナスの方が大きかったのではないかとさえ思われます。
食品の消費期限問題、ダイオキシン、環境ホルモンなど、例を挙げればきりがありませんが、誇大な報道が過剰な反応を招くことを学習する機会はいくつもありました。情緒に訴える興味本位の報道によって、読者・視聴者に迎合することが優先された結果なのでしょうが、そこには商業主義の「完成度」の高さを感じます。
藤原正彦氏はベストセラー「国家の品格」で、論理を否定し、情緒を大切にせよ、と教えました。まさかそのせいではないでしょうけれど、報道は情緒を大切にしているように見えます。たしかに迎合には情緒が欠かせません。しかしもともと情緒に左右されやすい国民に対して、マスコミが情緒中心で動けば、付和雷同の先導をするようなもので、碌なことはありません。
あたりまえのことですが、報道機関の役割は適切な反応を引き出すような情報提供であり、反応の適否を検証するまでが仕事の範囲であるべきです。流し放題、あとは知らん、という無責任体制では困るのであります。
コメント
日本ではマスクが風邪やインフルエンザを予防するという「信仰」があるようですが、合理的に考えて、マスクはインフルエンザの予防に大きな効果はありません。なぜなら、マスクの網の目に対して、ウイルスが小さすぎるからです。感染者の飛沫(水蒸気よりかなり大きい)拡散を減少させる事はできますが、息の中の水蒸気に含まれるウイルス拡散を止める事はできません。ですから、咳をしている人がマスクをするのでない場合、マスクをする合理的な理由はありません。それよりもエモーショナルな理由が大きいと思われます。
またウイルスは、香港でSARSがマスクをした医療関係者へ次々と院内感染した経験から、非常に狭い密室に保菌者と一緒にいるのでない場合、空気から直接感染するのではなく、ウイルスは保菌者の口から出た後で、何か(ドアノブや手すりなど)に付着し、それを手で触り、その手で鼻や目や口などの粘膜を触る事により感染するという事がわかりました。
SARSや鳥インフルエンザのリスクが高い香港では、極めて感染力が強い(本当に空気中でエアロゾル感染するウイルス)などでない場合、手で顔を触らないようにし、頻繁に手洗い(=除菌)するのが合理的と考えられています。
http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=908
日本でよく言われる「うがい」も合理的な意味があるとは思われません。うがいの機会は、家や目的地に着いてからです。その間の時間は数十分から数時間。ウイルスが喉の粘膜に付着してから長時間が経過している可能性が極めて高いからです。
マスクに大きな予防効果を期待しない方がよいということはおっしゃる通りでしょう。
ただインフルエンザは空気感染ではなく、飛沫感染するというのが多数の見方のようです。
一般のマスクは空気感染には効果が期待できないことは確かですが、飛まつにはある程度有効であると考えられているために、マスクの着用が意味あるとされているようです。
>飛まつにはある程度有効であると考えられているために、マスクの着用が意味あるとされている
上記では、咳をしている人と、インフルエンザを防衛しようとしていいる人のどちらに意味があると言っているのかが不明瞭に感じます。もう少し具体的な説明をお願いできないでしょうか。
>インフルエンザは空気感染ではなく、飛沫感染する
ゆえに先のコメントで「咳をしている人がマスクをするのでない場合、マスクをする合理的な理由はありません」と述べました。
また、インフルエンザの防衛措置を考えている人に対しては、「手で顔を触らないようにし、頻繁に手洗い(=除菌)するのが合理的」と述べました。