日経ITproによれば、総務省の作業班はきのうの会合で「既存のFPUやMCA、ITSは動かせず、再編できる周波数帯がない」「国内メーカーは700/900MHzのペアを希望し、周波数の国際協調とコストの関係は薄い」などとする報告書を出し、主査である上智大学の服部武氏は700/900MHzをペアで使うという従来からの方向で検討する方針を示したという。この報告書は、事実誤認である。
まず770~806MHz(以下770MHz帯と呼ぶ)のFPUが動かせることは、放送業者自身が認めている。現状ではマラソン中継などに月間数十時間しか使われていない事実を、民放連は総務省のヒアリングで認め、用途を「HDTVによる素材伝送」に切り替えたいという要望を出している。素材伝送を放送局に固有の機材で行う必要はなく、孫正義氏も賛成するように、LTEで伝送すればよいのだ。
この帯域を利用しているA型ラジオマイクについては、免許不要のB型もあり、性能はほとんど変わらないので、最近はこちらを使う業者が増えている。特定ラジオマイク連盟は「FPUとの調整が面倒なので、室内用の3GHz以上で十分だから、高い周波数に移行したいと総務省に要請しているが、総務省は実験もさせてくれない。携帯業者が費用を出してくれるなら、数十億円ですべてのラジオマイクが移行できるので協力したい」と話している。
MCAは加入者が激減しており、デジタル化にともなって汎用の移動体通信に切り替える方針である。携帯電話業者がMCAを買収して、既存の利用者をサポートするという提案も過去にあったが、電波の取引が認められていないため、できなかった。FCCが提案しているように、周波数を取引する電波の第二市場を創設すれば、次世代携帯でMCAを巻き取ることは技術的には可能である。
ITSはまだ正式に割り当てられていないので、「動かせない」はずがない。初期にこれを推進していた業者も、需要がほとんどなく妨害電波の問題が困難であるため、今から降りられるものなら降りたいといっている。
要するに770MHz帯は、技術的には動かせるのだ。ここを含めて710~806MHzを次世代携帯に割り当てれば、世界中の端末が使えるようになり、モバイル・クラウドなどのグローバルなサービスも可能になろう。電波が動かせないと言い張っているのは、既得権を守りたいテレビ局と政治家と、それに迎合する御用学者だけである。
コメント
一つ前の真野さんの記事と池田さんの記事を読んで。
電波の免許が既得権につながらないようなシステムの構築が議論できないものでしょうか。
10年後にはLTEは枯れた技術あるいは寂れた技術になっているかもしれず、単なる利権の譲渡になっても嫌ですし。
例えば特許の登録料金のように、1MHz当たりの使用料金を10年おきに免許更新費用として徴収することで、非効率なものは自然淘汰されていくシステムにする等。