無能な経営陣が経営するから疲弊する - 山田肇

2010年05月13日 23:28

5月12日に総務省の「電波利用料制度に関する専門調査会」が実施した意見聴取で、移動通信事業者が周波数オークションの導入に反対したとの報道がある。今のところ総務省のサイトには各社の資料が掲載されていないので、報道を頼りにするしかないが、各社の主張には納得できないところがある。


日経ITProの記事については池田信夫氏が疑問点を指摘しているので、ここではSankeiBizの記事について指摘しよう。

もっとも気になったのはUQコミュニケーションズによる「海外では、高騰した落札額の支払いで企業が疲弊し、サービス提供に支障が出た例もある」という主張である。これを受けて、SankeiBizの記事タイトルは「電波オークション、携帯事業者が反対 『経営疲弊の要因』」となっている。

第三世代携帯電話の周波数オークションでは、ドイツやイギリスで確かに落札額が高騰した。しかし、この落札で疲弊したはずのT-Mobileは、今、本国ドイツに加え、アメリカ、イギリス、オランダ、ポーランドなど広く欧米で移動通信事業を展開している。09年末の契約者数はドイツが3910万でアメリカが3380万、08年末でイギリスに1680万など、そのプレゼンスは大きなものだ。イギリスのVodafoneも、同様に世界各国で移動通信事業を営み、09年3月期の契約者数は合計で3億を突破している。(数値は両社の発表による)

T-MobileやVodafoneが世界で事業を展開し成長を続けているのに、タダで免許を手に入れた日本の移動通信事業者は国外でのプレゼンスがないに等しい。これはどうしてなのか。

移動通信の経営が疲弊する原因は周波数オークションではない。世界市場で闘うよりも「神の御加護(タダの周波数)」を求める、そんな無能な経営陣が経営するから疲弊するのだ。

「電波利用料制度に関する専門調査会」はなぜ疲弊した移動通信事業者から意見聴取するのだろうか。引き続き来週17日には放送事業者から意見聴取するという。どんな意見が出るか、もう結果は見えている。「各社は導入反対の意見を表明」するに決まっている。そんな意見聴取に無駄な時間を割くのは止めるべきだ。

世界各国で周波数オークションは当たり前のこととして導入されている。鬼木甫氏がその状況を整理しているが、OECD加盟30カ国のうち23カ国で導入済みで、OECD非加盟国でもインド、インドネシア、シンガポール、タイ、台湾、香港、マレーシアなど21カ国が周波数オークションを用いているという。

主要国ではすでに当たり前になっている周波数オークションについて未だに前に進めない日本の状況は異常というしかない。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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