人や会社が日本を捨てて税金の安い国に出ていくのは真に愛国的な行動である - 藤沢数希

2010年07月22日 00:43

21世紀はアジアの時代だと言われている。中国はもちろん、シンガポール、香港、韓国、台湾などアジアの国々は急速な経済成長を続けている。世界の多国籍企業もアジアを最重要マーケットと捉え、積極的に経営資源と投入している。アジアは間違いなく世界の成長センターなのだ。ただし日本を除いて


そのような中で、アジアのこれらの国々の政府は熾烈な人材獲得合戦、企業の誘致合戦を繰り広げている。シンガポール政府などは著名な企業家や投資家に対して、政府高官が自ら赴き移住の勧誘をしたりしている。しかしこれらの優秀な人材や優良企業の獲得競争の最重要な要素は税金である。税金でもとりわけ重要なのが高額所得者に対する所得税と法人税だ。各国が競って高額所得者や企業に対する税金をどんどん安くしているのである。

日本は国内のマーケットが比較的大きく国内だけでまだ食っていけるし、また言語などの文化的な障壁も高いので、今のところそれほど多くの人材や企業が海外に流出していない。しかし金融やITなど国際標準化が進んでいる業種ではかなり急速に東京から香港、シンガポールに流出している。またアジアに進出してくる多国籍企業のアジア拠点は、最近では東京ではなく香港やシンガポールに設置されるケースが圧倒的に多い。日本の大企業も当然、少しずつアジアに拠点を広げようとしている。いずれにしても、人口が減ってマーケットが縮小し、圧倒的に高い法人税、懲罰的な高額所得者に対する所得税を科している日本からは遅かれ早かれ優秀な人材や会社は出ていくだろう。それがゆっくりした変化であれ、急速な変化であれ。

このような激烈なアジアの租税競争において法人税や高額所得者に対する税金は最終的には下がるところまで下がっていく。そうしないと優秀な人材も企業もリテインできないからだ。しかし政府はインフラストラクチャーを整備し、洗練されたフェアーな司法制度を保持し、治安を維持しないといけない。そのためには税金が必要である。そういった社会の基盤が整備されていないところでは、人も企業も安心してビジネスができない。税金は安くなるところまでは安くなるが、あるところで限界があるはずである。そうすると各国政府に民間の会社にとっては当たり前に競争原理が働くのである。つまりなるべく税金を安くして、その限られた税収の中で政府は最大限に効率的にお金を使って良質な社会インフラを構築しないといけないのだ。政府の無駄をなくすという極めて当たり前のことが否が応にも実行される。さもなければ競争に敗れるだけだから。

このようなコンテクストから考えると、高額所得者や日本の優良企業がどんどん日本を捨てて海外に出ていくということは、長期的には大いに日本のためになるはずである。日本のラーメン屋がなぜみんな安くて美味いかというと、まずかったら客が二度といかないという単純な理由からだ。税金を安くして、最大限に効率的な政府を作らないと、どんどん富が流出していくとなると、政治家や官僚、また彼らを直接的、間接的に選ぶ有権者には大いにプレッシャーになるだろう。だから筆者は各国政府の租税競争は非常に素晴らしいものだと思っている。ダメな政治しかしないのに高い税金を請求するような堕落した国からはすぐに出ていくのが真に愛国的な行動なのである。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑