私のブログ記事について、松本さんからツイッターで反論があったので、今週のお題にそって、ここで補足しておきます。
私はソフトバンクが「基地局が繋がりにくいから光の道で救って貰おうと考えている」と批判しているわけではありません。「無線の帯域の不足は無線で解決するしかない」といっているのです。無線トラフィックが激増する(している)ことは、今のソフトバンクの状態をみれば明らかです。これを解決する方法は基地局を増設するしかなく、FTTHは役に立ちません。
ソフトバンクの「アクセス回線会社」構想は、固定回線から無線にトラフィックの中心が移るという流れは認めながら、その急増するトラフィックを屋内のフェムトセルに逃がすためにFTTHにしろという論理になっています。しかしこの論理が成り立つには、少なくとも
- 政府がNTT法を改正してアクセス回線会社を構造分離し、
- 同社が(株主の意思にかかわらず)FTTHを5年間で全世帯に強制的に敷設し、
- 全世帯のFTTHの終端にフェムトセルや無線LANのモデムを装着する
という条件が必要で、これは技術的にもビジネス的にも政治的にも、実現可能とは思われません。かりにそれが実現可能だとしても、今の非常につながりにくい状態を改善する役には立たない。特に都心部では基地局が決定的に足りないので、フェムトセルなどで逃がすだけではとても追いつかない。
ソフトバンクは、iPadに無線LANのモデムを同梱したり、フェムトセルを配ったりしていますが、それを設置するユーザーは少ない。パケット定額制では、接続時間を節約するインセンティブがないからです。混雑するのは都心の屋外で、フェムトの置かれる自宅とは中継系のトポロジーが違うので、FTTHは無線の輻輳問題の解決策にはならない。
ソフトバンクも基地局の建設を進めていますが、その設備投資が経営に重くのしかかっています。しかしそんな巨額の投資をしなくても、基地局の負荷を減らす簡単な方法があります。SIMロックをやめて、iPhone/iPadをドコモのネットワークでも使えるようにすることです。今でもドコモのモバイルWi-FiルータやAPモードでiPadを使っている人は多いので、SIMロックがなくなれば、新規ユーザーの半分ぐらいはドコモに移行するでしょう。これで基地局を新設する必要は、当面なくなるものと思われます。
私は、総務省がSIMロックを規制することには反対だし、ソフトバンクが(公益のためではなく)株主のためにSIMロックをかけることには反対しませんが、現在の状況では過大な投資負担が生じて、株主利益にもならない。ソフトバンクはアップルに一定の超過料金を払っているでしょうから再契約が必要かもしれないが、アップルにとっても回線の容量不足で端末が売れない現状は好ましくないでしょう。
ソフトバンクがSIMロックをやめてドコモと対等に競争することはユーザーにとって望ましく、ソフトバンクの株主利益にもかなうだけではなく、日ごろから「インフラを開放して公正な競争を」とNTTに呼びかけている孫社長の主張にも沿うものです。総務省に規制される前に、ソフトバンクが進んでSIMフリーにして競争を促進すれば、通信業界が活性化し、日本経済のためにもなるでしょう。
コメント
調べたところによると、
ドコモの電波は2GHz帯、1.7GHz帯、1.5GHz帯、800MHz帯の合計で、130MHzの帯域幅を持ち。
ソフトバンクは2GHz帯、1.5GHz帯の合計で60MHzの帯域幅しかありません。
SIMロックをやめた途端、ドコモと対等どころか、大半がドコモに流れ、さらにドコモがシェアを増やす結果となれば、通信業界も日本経済も活性化されなくなると思います。
百歩譲って、SIMロックを外したことにより、iphoneユーザがドコモとソフトバンクに均等に流れ、一時的にソフトバンク回線が快適になったとしても、時間が立てば、ドコモもソフトバンクも回線が混雑し、結局、両社とも無線LANやフェムトセルに頼るようになるのなるのではないでしょうか?
「光の道」のソフトバンク案に反対されるのは結構ですが、池田さんは批評家ではなく学者なのですから、1企業を批判するのではなく、どうすれば、日本経済が良くなるのか、ソフトバンクの案を越える具体的な提案をしてほしいです。
読み手としてソフトバンク批判はうんざりです。
1)私は「光の道」の必要性を主として国民の立場から論じていますが、「どうせソフトバンクの利益の為にやっているのだろう」と決め付ける人が多いのもやむないと思ったので、8月16日の「批評家は何故…」と題する記事の末尾に、9項目に分けてソフトバンクの利益もあることを解説しています。これをよく読んでいただければ、今回池田先生が第3パラグラフで決め付けておられる「論理」は完全に間違っていることがわかります。
2)モバイル通信網のカバレッジを強化するためにはFemtoが有効ですが、これをサポートするためにはADSLでも十分です。キャパシティーを強化するためにはWiFiが有効で、このサポートにはADSLでも或る程度OK ですが、光回線が望ましいと考えています。(1-10 Mbps程度のニーズならLTEでもADSL+802.11b/gでもOKですが、10-100 Mbps級のニーズに安定的に応えようとすると、モバイルでは無理で、FTTH+802.11n/acが必須です。)
3)第3パラグラフの後の3条件の最後も間違っています。Femtoは全く関係ありません。WiFiは希望者がつければ良いことです。なお、第1と第2の条件は、やる気になれば勿論実現可能です。はじめから検証もしないで「出来ない」と決め付ける池田先生のような方が政治家であれば勿論不可能ですが、真面目にプロとコンを検証していただければ、やる気になってもらえるでしょう。(少なくとも今度「総務委員長」になった原口元大臣は理解されるでしょう。前回の「竹中懇」のNTTの構造改革に関する提言は、当時の片山虎之助総務委員長の鶴の一声で「凍結」になりました。)
4)iPhone/iPadをSIMフリーにするかどうかは、アップル社とソフトバンクが相談して決めることです。特に池田先生からアドバイスを頂く必要はありませんし、光の道とは全く関係のない問題です。
ソフトバンクがアップルに、iphone 開発のために技術者派遣を行っていたと聞いた事があるのですが、開発段階からの参加協力があったとすればSIMロック等当たり前と思うのですがいかがでしょうか。
帯域の狭いハンディのもとで普及に際して商品開発の段階から含めて最大の企業努力を行ってきた機種を、普及した所でSIMロック解除しろ、という理屈がとおるのであれば、努力なんて誰もしません。
この理屈が通らない世界があるゆえに僕たちは今iphoneをつかえているということなのではないかと思います。だからiphoneは今の現状では繋がりづらくてしかるべき商品だということになります。
SIMロック解除を要望するなら、ソフトバンクではなく、アップルのほうがよいように思います。海外ではアップルストアでSIMロック解除端末が販売されていますから。「ソフトバンクのiPhone」ではなく、「アップルのiPhone」と思ったほうがよいのではないでしょうか。