TPP(環太平洋経済連携協定)は日本の農業を見直すいい機会だと思う

2010年11月08日 14:02

日本の今後の進路を決めるという点、また国際的な日本のプレゼンスをどう確保するかという点でもTPP(環太平洋経済連携協定)問題の重要性は極めて高いものと思います。
関われば、日本のさまざまな規制、また特に農業などの構造改革を進めることが必要になってきます。逆に関わらなければ、日本は本当に孤立したガラパゴス島になってしまい、経済成長の足かせになりかねないからです。


与党内部からも反対の声、慎重論がでて、参加から情報収集へとトーンダウンしたのですが、まずは、APECで日本が「関係国との協議開始」を表明したことが、各国から評価されたと各紙が報道しています。
TPP、日本方針に高評価=横浜APECが開幕

TPPは、締結国との物品の輸出入の完全自由化だけでなく、サービス貿易、知的財産権、電子商取引、政府調達など広範囲なものですが、どうしても農業問題に焦点があたってきます。
さっそく農政予算を増やせという声もあるようですが、農業問題に決着をつけておかなければ、個別の国との自由貿易協定推進、あるいは地域間自由貿易協定推進ということにもつねに農業問題が障害となってきています。
だから経済産業省は貿易自由化を促進しようとし、農水省が反対するということになってきました。

経済の成長性を求めて自由化を求める動きと、農業保護のためにブレーキをかけるという不毛な対立の構造からそろそろ日本も脱出する必要があるのだと思います。

日本の農政は、農家の保護を行ってきましたが、平成20年に産出額はやや持ち直したものの、就業人口も減り、食料自給率も長期的に落ちてきています。なにか保護政策が農業の安楽死を目指しているのではないかという皮肉な見方すらでてきている始末です。
農林水産省/平成20年農業総産出額(概算)

農業問題に関しては矛盾を感じることが多いのも事実です。カロリーベースで、自給率が40%まで落ちた、もっと自給率をあげようというキャンペーンがあります。しかし、産出額では自給率は70%です。
なぜそれだけの開きができるかというと、飼料となる穀物のほとんどが輸入でまかなっているからです。いくら国産牛だ、豚だ、鶏や卵だと思って購入しても、飼料が輸入なので、自給率はぐっと下がります。
しかも、飼料には関税をかけず、安い飼料を農家が入手できる政策をやっているのですから、この差は縮まりません。
問題の本質は穀物の自給率なのですが、これまで進められてきたのは米価を安定させるための減反政策であり、食料自給率とは矛盾した政策です。
自由貿易協定締結推進のための個別所得補償も、いつのまにかそれがうやむやになり、専業農家が借りていた耕作地を兼業農家が返却を求めるという奇妙な現象となってしまっています。

もうそろそろ、日本の農業をどうしたいのか、またどうあるべきかという将来ビジョンや戦略、とくに環境との関わり、競争力強化による海外への輸出、国内流通の再編などについて、農業関係者だけでなく、国民的な合意が必要になってきているのではないでしょうか。

また国民的議論になかなかならないのが農業問題ですが、TPP(環太平洋経済連携協定)は、そんな議論を活発にするいいチャンスだと感じます。いきなり保護だ、補償だ、農業予算だというのはあまりにも乱暴な議論だと思えてなりません。

コア・コンセプト研究所 
大西宏

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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