新天地を求めて、海外進出する日本企業

小谷 まなぶ

 今年になってから、インターネット上で、日中間の物販ビジネスが非常に注目されるようになった。日本におけるインターネットショッピングの最王手『楽天』の中国進出、対抗馬として、ソフトバンクグループのYAHOO,アリババジャパンの中国進出支援ビジネスモデルが注目を浴び、今年の夏は、株価も上昇したというニュースもあった。


 しかし、9月に入り、尖閣諸島の漁船衝突問題が激化したことを受け、中国国内で反日デモが行われたという報道を受けて、一時は、中国進出という話題が、沈静化したかと思われた。しかし、ここ最近になって、中国への進出を求める企業が急激に増えてきた。多くの進出希望する日本企業の経営者の声は、『日本の将来に対する危機感』ついて懸念した中国進出が相次いでいる。出口の見えない日本の不況、政治不安から来る将来への展望を見出せないでいる経営者が、海外に新天地を求めているような感が強い。
 
 日本の市場に対する閉塞感、特に、消費を促進させるはずの30歳までの若い世代の消費欲が非常に弱く、「何もほしくない」「お金がないから使いたくない。」など、物販を行う企業から見れば、日本の消費者の「もったいない思想」が、市場戦略をどのように推し進めればいいかの策を打てない状況にしている。
中国の消費を見れば、80年以降に生まれた世代「80後」といわれる一人っ子政策を行った後に生まれた世代の消費欲が、中国では、非常に注目されている。80後、90後といわれる『80年代、90年代』に生まれた子供の物欲は非常に強く、中国の消費リードしている。
 また、80後の世代も、結婚する時期に達しており、80後の消費世代の子供を対象にしたビジネスも非常に盛んである。特に、親の世代が、中国の土地改革による政策のおかげで、急激に豊かになったこともあり、子供に非常にお金をかけて育てる家庭が急増している。贅沢をして育った子供は、あまり、後先考えず、消費する傾向がある。上海市の統計で、35歳以下の若者の29%は、定職を持たずにいるというデーターもある。日銭を稼いで、稼いだお金は、すべて自分ために使い。生活費は、親に出してもらうという若者が増えている。
 これは、中国の海岸都市を中心にその傾向が強く出ている。消費することに躊躇しないという若い世代があるのである。また、インターネットの普及により、海外の情報を簡単に検索できるようになったこともあり、中国の若者は、「海外の流行」をよく理解している。「日本のどこのブランドが、人気がある。渋谷では、どんなファッションがはやっている」など・・・ 常に、流行の最先端を紹介する雑誌を毎日チェックしているような若者が多数いる。日本で発信している情報をキャッチしている若者層に、アプローチすることが、日本の商品を中国に売り込むために、大切なことが言える。日系のファッション誌や、情報誌も、中国国内で展開しており、そのような雑誌に情報掲載することで、中国の若い世代に日本の流行を伝えることができる。今、日本のメディア関係者も中国国内で如何にして、日本の流行を伝えるか、また、流行を作るかということで、ビジネスチャンスを狙っている。
 日本のメーカー、日本のメディアが一丸となって、中国国内の商品にどうやって刺激を与えるか躍起になっているのである。
 その理由は、市場としての中国が、過去には考えられないレベルで、重要してきたことがいえる。数年前までは、中国国内への物販に対する考えは、まだまだ『可能性を求めて、出店する』というレベルで、本気だとは思えない企業が多かったが、今は、『中国で展開しなければ話にならない。』という死活問題を抱えて、チャレンジする企業が増えている。日本の消費の落ち込みのもっとも大きな理由である「所得減少」と「人口減少」が大きく関係している。日本の経営者にとって、市場が小さくなるという物理的な条件がはっきり見えてきた以上、新天地に市場を求めて海外展開する以外に方法を見出せないのであろう。

■小谷まなぶの中国貿易ビジネス奮闘記(ブログ)

コメント

  1. mzch より:

    きちんとチャイナリスクを織り込んだ上で進出していく企業ばかりならばよいのですが、昨今、闇雲に中国進出という流れに煽られて進出を決めている企業が多いのではないかという懸念が拭いきれません。需要が低迷する日本に逼塞しているのは死活問題だという切迫感もあるのでしょうが、彼らはいざという時切り捨てられる覚悟があるのでしょうか。
    中国での風向きが変わったから何とかしろの大合唱は、戦前の経験でこりごりです。