「光の道」総集編(続き)-異論と疑念への逐条回答

2010年12月13日 18:00

総務省のタスクフォースの最終報告を踏まえて、民主党内部での議論が進み、近々「光の道」と「NTTのあり方」についての最終的な閣議決定が行われる運びとなりました。既に新聞記事にもなっているように、一言で言えば、閣議決定は大略下記のようなものになるのではないかと予想されています。


(1)国はNTTに対し、2015年までに、光ファイバーの利用料金(他の通信事業者に対する接続料が太宗を占める)を、現在の半額程度に引き下げるよう求める。
(2)NTTは、所謂「機能分離」によって、回線施設部門と他部門の業務を明確に切り分け、相互補助を不可能にする。
(3)上記の進展が危ぶまれる状況になれば、2013年を目途に、NTTの光回線部門の分社化もあらためて検討する。

私から見れば、上記は「理想」からは相当遠い内容ですが、それでも「一歩前進」ではあると思います。現在の政治状況では、何れにせよ「大改革」の即時実行は難しいと判断されるので、この「一歩前進」はそれなりに評価されて然るべきでしょう。

しかし、これまでの例を見ると、「構造分離」のような明確な形を取らない「機能分離」といった措置は、「総論賛成、各論反対」「面従腹背」「建前と実態の乖離」の山を築き、「実質骨抜き」になるケースが多々あるので、引き続き「厳しい監視」が必要と考えています。よく考えてみると、もし「機能分離」を徹底してやれば、もはや「構造分離」をした事とほぼ同じ事になるのですから、何故NTTがああまで頑なに「構造分離」を忌避するのかは私には謎として残り、それが懸念でもあります。

さて、何はともあれ、こういう形での「当面の結論」がほぼ見えたのですから、この時点での「光の道」の議論ももう「手仕舞い」してもいいだろうという考えもあますが、テレビCMに「巨大隕石」まで登場して世の中を十分騒がせたことでもあり、なお色々な事に疑問を持っている人達も数多くおられると思うので、前週の「総集編」の補足を今回もう一度だけ書き足して、アゴラ上での議論をこれで収束させたいと思います。

具体的には、12月6日の総集編で、「光の道構想そのものへの異論・反論」と、「ソフトバンクが出した提言に対する異論・反論」、及び「ソフトバンクの意図そのものに対する疑念」を列挙しているので、今回はこれらの「異論・反論」と「疑念」に対する「私の回答」を逐条で列記することによって、「総集編」を完結させたいと思います。通常の長い記事の更に倍以上にもなる「超長文」となりますが、お付き合い頂ければ大変有難く存じます。

「ソフトバンクの意図」に対する疑念について

1)ソフトバンクがこの問題に異常なまでに熱心で、TVにCMまで出したのは、「光の道」が出来ると何か余程ソフトバンクにいいことがあるのではないか?

→ 「光の道」が出来れば、その上に多くのインターネットビジネスが花開く。これは多くのインターネット関連企業にとって良いことであり、ソフトバンクとしても期待が大きい。逆に、インフラの不備や価格の高止まりから加入者が増えないと、多くのサービスが「採算性に対する疑問」から断念されてしまう。(現在のADSLでは速度が十分でなく、映像を駆使する将来のサービスの足を引っ張る。)この事が、ソフトバンクが本件に熱心な最大の理由である。

→ 「事情通」を自認する若干の人達が、「ソフトバンクは携帯通信ネットワークの弱さを補強する為にFemto Cell(超小型基地局)を各家庭にばら撒こうとしており、それをサポートする為に『光の道』が必要なのだ」と言っているが、これは全くの見当外れで、短視的にしか物事を見られない人達の想像力の限界を露呈するものだ。

携帯通信ネットワークの補強は急を要することであるのに対し、「光の道」はこれから4-5年をかけねば完成しない長期プロジェクトだから、全くタイミングが合わない。また、現時点でのFemtoは3Gネットワークをサポートする為のものだから、ADSLのスピードで十分だ。

尤も、極めて近い将来、多くの家庭には無線LAN(802.11n)が装備されることが常識になるだろうが、この伝送速度は将来は100Mbps程度となるから、これをサポートする為にはADSLでは全く不十分であり、光回線が必要とされるだろう。また、将来のモバイル通信網は、都市部では小セル化が進む一方、各基地局を周囲の電波環境に応じて自立的に作動させる「SON」技術が導入されるだろうから、建物内に設置されるFemto基地局のサポートにも、光回線が必要とされるだろう。

2)ソフトバンクは、「光の道」にかこつけて競争相手のNTTを分割し、その力を弱めようと画策している。

→ 「光の道」の実現を追求していけば、NTTの構造問題の議論は避けて通れないので、ソフトバンクがこの事にも大きく期待しているのは事実だ。しかし、それは、「NTTの競争力を弱めたい」等という為ではなく、「NTTが回線の『卸売り部門』と『小売部門』を同じ組織内に並存させている現状では、『相互補助』が行われ、『小売部門』のみを運営するソフトバンクなどの通信事業者には、NTTの『小売部門』との公正競争は保証されない」という理由による。

→ もっと深刻な問題は、現状をそのまま放置すると、ボトルネック独占状態にある「アクセス回線施設」と「NGNのような通信ネットワークサービス」が技術的に不可分に結び付けられ、他社のNGNは競争出来なくなる恐れがあり、こうなると、アプリケーションレイヤー迄が影響を受けることにもなりかねないという事である。先を読めない人達が安易に現状を容認すると、再びNTTの独占が加速し、暗黒時代の到来を招く恐れがある。

3)ソフトバンクは、このままではADSL事業がどんどん縮小していくので、焦っているのではないか。

→ これは一面事実であっても、全ての問題を言い尽くしてはいない。ADSL事業が縮小するだけなら、他部門でそれを補えばよいだけなので、何という事はないが、現状のように、光への張替え計画も、メタル回線の貸与条件(接続料)も、全てNTTの自由裁量で決められるという事だと、ADSL事業全体の長期計画自体が立てられなくなってしまう。

「メタル回線の光回線への早急な切り替え」は本来あるべき姿なのだが、「メタル回線上では成立していたADSL事業者のビジネスモデルが、光回線上では成り立たなくなる」という事になると、ADSL事業者としては「光化絶対反対」と叫ばざるを得なくなり、「後ろ向きの議論」が無用に紛糾する。

4)ソフトバンクは、政治家を動かして「我田引水の議論」を進めようとしている。

→ ソフトバンクは「日本を大きく変える」事を常に志しており、その為には「政治主導」が必要と考えている。しかし、政治献金は一切行っておらず、政治家の「志」に期待するしかない状況である。政治家に動いて貰う為には、それが「国民(選挙民)の為になる」事を理解して貰うことが必須条件だから、「我田引水」の議論などは、もとよりあり得べくもない。国民の為になる議論でなければ、政治家は動かせない。

5)ソフトバンクは、タスクフォースの専門家を納得させられなかったので、広告などの方法で大衆を扇動しようとしている。

→ タスクフォースの今回の最終報告書が何故あのような形にならざるを得なかったかについては、少なくとも私は、下記のように冷静に分析しており、「官僚や学者の皆さんの立場としては止むを得なかったのだろうなあ」と理解している。

①原口前大臣の指示やソフトバンクの孫社長の提言は、いわば「革命を起こす」事に近い。しかし、「革命」は一方では大きな犠牲を生みだすリスクも孕むので、実務を担当しなければならない官僚機構の立場では、出来れば回避したいと考えるのが当然だ。(原口大臣が退任した時点で、官僚機構は「これで回避できる」と思い、ホッとした筈だ。)

②官僚機構やタスクフォースの委員の多くが、日常からNTTの協力に多くを負っている面がある事は否めず、NTTが本気で嫌がっていることを強制するのは、出来れば避けたいと考えるのは当然だ。ソフトバンク案とNTTの考えが大きく乖離している状況下では、白黒をつける為には、両者に数字を基づいた議論をさせるしかない事は百も分かっていても、NTTがそれを忌避する限りは、強制はしたくないと考えた筈だ。

③ソフトバンク案を本気で検討する必要を感じれば、ソフトバンクの担当者を呼びつけ、中立的なコンサルタント等も雇って膝詰めで精査する手はあったが、これには膨大な作業を要し、限られた時間内ではとても無理だと判断、「不確実性が高い」と言うだけで「かわす事が出来る」と判断した筈だ。(現実問題としても、委員の先生方は本業の合間にこの仕事を引き受けているのであり、スタッフを動員出来るわけでもないので、自力で精査する事は不可能。)

④「税金ゼロで、全国津々浦々まで光回線を行き渡らせる」等という事は、仮に可能であったとしても、「常識の転換」と「組織面での荒療治」があって始めて可能になること故、NTTのように「出来っこない」と切り捨ててしまっても、世間的には(常識の世界では)大きな反発はないだろうと踏んだ筈だ。

⑤NTTと競合関係にある点ではソフトバンクと同じ立場にあるKDDIやケイオプティコムは、「設備競争」を標榜しており、「アクセス回線網での設備競争は無駄な競争である」とするソフトバンクと一線を画している。この状況下では「事業者の中で孤立しているソフトバンク」の提言を切り捨てても、概ね「業界全体のサポート」は得られると踏んだ筈だ。

→ ソフトバンクとしては、ここで早々と「理想」や「革命」は諦め、KDDIやケイオプティコムとも共同戦線が張れる「一歩前進」路線に転換して、「落し所」を模索する選択肢もあったが、孫社長の哲学思想がそれを受け入れなかった。結果として、「総務省やタスクフォースが『ユーザーの立場』より『事業者の立場』を優先し、『抜本的な改革』より『尺取虫のような漸進策』を優先させるなら、議論を『国民レベル』に上げ、これを梃子に『政治主導』による決着を目指した方が良い」と考え、その路線を取った。

6)ソフトバンクは、もともと原口前大臣が選任した「有識者」から構成される「タスクフォース」の報告を殊更に無視しようとしている。報告書に自らの考えを反映させることが出来なかったことが分った段階で、タスクフォースの批判をするのは卑怯ではないか?

→ ソフトバンクの担当者はタスクフォースのメンバーにも個別に働きかけた筈だが、コミュニケーションは十分ではなかったように思う。私自身は担当外だったから何もしていないが、例え接触していたとしても、上記の5)に記載したような理由で、説得は難しかっただろう。

にも関わらず、11月29日の「タスクフォースの報告書(案)を読んで」と題する記事の中で、17項目にわたる理由を挙げて、私がこの報告書を「0点」と酷評したのは、この報告書が原口前大臣の諮問に答える形には全くなっていなかったからだ。タスクフォースの委員は原口さんに選任されたわけだが、もともと「光の道の実現は不可能」と考えていた筈であり、原口さんの退任と共に、プレッシャーがなくなってホッとした筈だ。

学識経験者は、その問題に対する専門的な知識がなくても、「客観的な立場から評価する」のが本来の役割であり、その意味で十分な存在価値はあるが、この様な案件になれば、「市場動向に対する知識」と「事業経験」をもった関係者をもっと呼び込み、種々の選択肢をもっと深掘りすべきだったと思う。この事については、4月19日の「学識経験者とは」と題する私の記事をご参照いただきたい。

7)色々な他の判断要因を全て捨象し、問題を「A案かB案か」と単純化し、更に広告によって大衆の考えを一方向に誘導しようとしているのはフェアではない。

→ 「A案かB案かと聞かれれば当然B案ですよね。それなら、先ずはB案が可能かどうかを検証してみましょうよ。もしB案が不可能だという事が分かったら、次に、A案よりもう少し良い案があるかどうかを考えましょう。A案まで後退するのは、万策尽きた後にしましょうよ」という問いかけ(議論の進め方)は、プロのレベルでのディベートでも当然あり得ること故、このアプローチ自体を「素人騙し」と批判するのは当たらない。

→ 「A案かB案か」の選択を投票の形で表明してもらい、この結果を後の議論のベースとする手法については、当然批判もあろう。しかし、「一般国民の関心を呼び起こす為には、問題を単純化するしかない」という判断故と理解すれば、特に目に角を立てて批判するような事とも思われない。「テレビCMはともかく、新聞広告については、若干のスペースを割いて、もっと深く知りたいと考える人の為の詳細説明を加えるべきだった」という批判もあるが、これも方法論の問題に過ぎない。

8)「他社に比べ携帯電話が繋がりにくい」など、ソフトバンクは本業で多くの問題を抱えているのに、「天下国家」を論じている暇があるのか?

→ 本業の問題を解決して顧客満足度を上げるのが最優先である事は勿論だが、事業経営においては、常に「複眼的」に、「短期の問題」と「長期の問題」に並行して取り組んでいく事が必要だ。また、あらゆる企業は、単に利益を上げて税金を払うという方法だけでなく、色々な角度から国への貢献を考えて然るべきだ。一個人であろうと、一企業であろうと、「国はこうあるべき」と考えたら、それが実現できるように大いに発言し、大いに行動するべきであり、生まれ育ちによって差別されるべきではない。

「ソフトバンクの提案」に対する疑問について

1)ソフトバンクの数字とNTTの数字が違いすぎる。実態をよりよく知っている筈のNTTの言っている事を頭から否定し、ソフトバンクの提案に乗るわけにはいかない。

→ NTTの数字は現在の経営のベースとなっているものに基づいているわけだから、保守的であって当然であり、一方、ソフトバンクの提言は、先ず「税金ゼロで全国に敷設」という目標から出発し、「発想の大転換」をベースとしているのだから、この両者間に相当の数字の乖離があるのは当然である。こういうケースにおいて、想像だけで結論を出してしまうのは乱暴すぎる。「不確実性があるので検討しない」というのも論外だ。当然、項目ごとに具体的に数字を精査して比較すべきだ。

2)ソフトバンクは、メタル回線を全廃すれば膨大なメタル回線の「保守費」が節減できると言っているが、「保守費」の太宗は「人件費」だから、人を減らさなければ保守費の節減は出来ない。ソフトバンクは人員の大量解雇を提案しているのか?

→ ソフトバンクの提案は「現在メタルの保守に関わっている人員を光の建設に振り当てる」ということであり、要するに「労働移転(配置転換)案」だ。一方で「光敷設工事の大幅前倒しは、工事要員を確保出来ないので不可能だ」と言う人もいるのだから、一石二鳥の案とも言える。NTTは「こんな面倒は御免蒙りたい」というのが本心だろうが、この際労を惜しんでは貰いたくない。なお、この事については、「労働移転の可能性を論じない『光の道』の議論は意味がない」と題した、私の8月30日付の記事をご参照願いたい。

3)ソフトバンク案では「新会社の経営責任」が曖昧だ。昔の「公社」に近い形に戻すのは改悪だ。

→ 公益性の強い会社だからと言って、「公社」に近い形には戻すべきではなく、民間会社の経営に近い形で経営するのがよいというのはその通りだ。NTTの現在の経営者がやる気になってくれれば一番よいが、やる気がないのなら新しい経営者を公募するしかない。ソフトバンクの孫社長は「誰もやらないのなら自分にやらせて欲しい」と言っているが、出来れば、かつてのNTTが石川島播磨から真藤氏を招聘したように、中立的な民間経営者を業界の外部から招聘し、各通信会社が取締役を派遣してこれをサポートする形が望ましい。

4)ソフトバンク案では、新設の「アクセス回線会社」の株式の40%を国が保有する事になっている。これは税金投入と同じ事だ。

→ これはとんでもない勘違いだ。現在のNTT持ち株会社の株式の実質40%は国が保有しているので、もしこの一部である「アクセス回線部門」を分離するのなら、分離したその日には、その新会社の40%は何れにせよ国が保有している事になる。公益性を担保する為にも、この状態をずっと続けるのは極めて自然だ。勿論国の負担が一銭も増えるわけではないし、まして況や、税金の投入などは一銭もない。

5)メタル回線を全て撤去するのなら、そこに膨大な償却損が発生する。これによって新会社は債務超過に陥る。

→ 勿論一時的に償却損が発生する。債務超過を回避するためには、アクセス回線会社は増資し、その回線を利用して通信サービスを行う各通信会社がこの増資に応じる事にすればよい。

6)光回線の新設工事に必要な膨大な金額の資金を、「アクセス回線会社」は社債によって賄うとしているが、その担保は何処にあるのか? 一方でソフトバンクは、「分離されるNTTのアクセス回線部門は現状が赤字経営であり、資産価値は殆どない」と言っているが、これは矛盾するのではないか?

→ 担保は、これから利益を生み出す「既存プラス新設の光回線施設」である。社債権者は、原則的に、自らが提供する資金によって建設・運営される「光回線網」(及び「それが生み出すエコシステム」)を担保として押さえる事になる。

7)全般的にソフトバンクの提案は荒削りであり、しかも、途中での追加変更が多い。この状態では、事業計画自体に確信が持てない。

→ ソフトバンクの提案は、NTT東・西の内情を推察しつつ作った「叩き台」であるから、荒削りで「不確実性」が大きいのは当然である。この様な「斬新な発想に基づく巨大プロジェクト」の事業計画が、初めから「精緻で完全なものに近い」事は通常でもあり得ない。この様なプロジェクトでは、先ずは荒っぽい骨組みを作り、その全ての構成部分の妥当性を一つ一つ検証しながら次のステップに進むのが常識であり、それがなされるまでは、最終判断など出来るわけはない。

8)ソフトバンクの現在の携帯通信ビジネスにおいて、ネットワーク品質のレベルに懸念を持っている利用者が多い。また、ソフトバンクは自社で技術開発を行うより、他社が開発した物を取り入れるケースが多い。そのような会社に「アクセス回線会社」を任せるのは不安だ。

→ 「品質」と言う言葉は曖昧故、先ず言葉の定義を明確にする必要がある。「アクセス回線会社」が提供する「品質レベル」については、どこかで線を引かなければならないが、その検証方法も含め、会社設立の時点で、明確に文書で規定しておけばよい。なお、「アクセス回線会社」が提供するのは「線路」の部分であり、「交換」「伝送」「無線」のように頻繁に技術革新がある分野ではない。一旦敷設すれば、30年以上は継続して使われることが望まれるので、この分野では「頻繁な技術開発」を過度に意識するべきではない。

9)ソフトバンクの「資本分離案」「新会社設立案」はNTTの既存株主の権利をないがしろにするものだ。国がこんな案を受け入れれば、NTT株は暴落し、NTTの既存株主は国を告訴するだろう。

→ これは、「何が何でもNTTの既存体制を守りたい」と考える人達が25年前から言い続けてきたことだ。つまり「そんなことをすれば狼が来るぞ」と言い続けてきたわけだが、実際に現れるのは「狼」ではなく「天使」かもしれない。(私自身は「天使」だと確信しているので、私がもしNTTの社員なら、社内で「分割論」の急先鋒に立っていただろう。)「狼」だという人は、何故そうなのかを一度も説明出来ていない。

また、株主による行政訴訟は勝ち目がない。NTTはその独占的側面と公益的側面故に、生まれながらにしてNTT法で縛られている(つまり国の監督権の下にある)のであり、NTTの株主はみんなその事を知って株を買ったのだ。逆に、もしNTTの経営者が経営数字を秘匿する事によって「分割のチャンス」を逸したというような事になれば、「それによって利益が害された」とする株主代表訴訟の対象となる事は免れないかもしれない。この辺の事については、「『光の道』構想は実はNTTの株主にとって朗報だ」と題する11月18日付の私の記事をご参照願いたい。

10)ソフトバンクの「光の道提案(通称B案)」はガラパゴス案だ。

→ この事については、あまり論じる必要はないと思うが、世界の趨勢についてご興味のある方は、外国の事例の一つとして、「豪州とニュージーランドにおけるブロードバンド政策」と題する6月28日付の私の記事をご参照願いたい。

「『光の道』構想自体の妥当性」に対する疑問について

1)日本のICTインフラは世界最高峰であり、遅れているのは「利活用」の方である。今更何故インフラに焦点を当てるのか?

→ 日本のICTインフラは世界の他の国に比し進んではいるが、既に韓国には抜かれている可能性もある。何れにせよ「完全」と言うには程遠いわけだから、現状に胡坐をかくのは禁物。「値段は高いが、世界で一番進んでいる」と自負してきた「高機能携帯端末」が、その先進性において、一夜にしてiPhoneや一連のAndroid端末に追い抜かれた事実を忘れてはならない。

→ 現在「利活用」が進んでいない最大の理由は、「値段が高い」事と「全国に行き渡っていない」事による。「施設は90%出来ている」という当初の話は嘘で、「架空線は50%、宅内への引き込みは33%」というのが実態だから、インフラの問題は未解決だ。NTTのセールスマンは熱心にフレッツを薦めているが、宅内に回線を引き込んで貰って利用を始める為には、相当な金額を払わなければならず、これがネックになって利活用が進んでいないのが現実だ。

大都市部以外は回線敷設の採算が悪いので、全国に行き渡っていないことも、問題の一つとして残っている。サービス提供者にとっては規模の利益が十分出ないし、電子政府、教育、医療などの公益分野では、全国カバーがないとサービス開始に踏み入れない。

2)現実に、都市部では、光回線の提供においてもKDDIやケイオプティコムがNTTと競争している。すでに民間会社間での自由な競争が機能しているのに、何故国がしゃしゃり出る必要があるのか?

→ 通信回線は、道路や水道、電力線のような社会インフラであり、レセフェールの市場経済に任せておくわけにはいかない。自由競争だけでは、採算の悪い地方部は必ず切り捨てられる。かつての電話線は、独占の準国営企業であった電電公社が電話債券で資金を調達して全国に敷設した。しかし、これは、近い将来、道路は道路でも「自動車が満足に走れない道路」と言ってもよいようなものになってしまうだろうから、今の時点で、あらためて「将来の重要な社会インフラ」として考え直す必要がある。

 インフラの問題は、全体のサービスのうちの一つの構成要素に過ぎない。それなのにインフラのことばかり議論しているのは、サービス分野は基本的にレセフェールの自由競争に委ねるべきで、議論する必要が殆どないからだ。全体のバリューチェーンの中で、仮にインフラの占める部分は30%程度に過ぎないとしても、「国策」の議論をするときには、インフラの話が90%程度を占める事になるのは当然だ。

 設備競争の問題、KDDIやケイオプティコムの問題は、11月15日付の「光の道と電力系の通信会社」、及び、11月16日付の「光の道とケーブルTV会社」と題する私のアゴラの記事をご参照願いたい。「設備競争」が不合理、不効率である分野はたくさんあり、「設備競争万能論」は明らかに間違っている。

3)必要でない人にまで「光回線」を提供する必要はなく、無駄である。「光回線」というインフラは、利用を希望する人が出てきた段階で実需要に基づいて構築すればよい。

→ 「インフラ」というものはそういうものではない。「実需要に基づいてインフラを作っていく」等という考えで、五月雨式にインフラを増強していけば、最終的に恐ろしく高いものになってしまう。「電力需要の増大に伴ってダムの高さを高くしていけばよい」とか「自動車の数が増えれば、その都度道幅を広くしていけばよい」と言うような頓狂な人はいないだろう。事業家は誰でも、今は目に見えない将来の需要を推測して設備投資を行う。そして、その結果として出来上がったインフラや商品が需要を創造していくのだ。国も同じ様にしなければならない。

4)何故「光の道」でなければいけないのか? 無線を使った方が安く上がるところもあるのではないのか?

→ 目指すのは、「誰にでも一定以上の能力を持った回線を提供する」という事と、「それを最も安いコストで実現する」という事だ。近未来を視野に入れると、「一定上の能力」とは、「普通の状態で、一世帯当たり100Mbpsの回線スピードが供給される事(それ以上の能力が求められる場合は、回線数を増やすことで対応出来る事)」と規定するのが妥当だろう。

これを考えると、全国の殆どの場所では、「既存のメタル回線を光回線に変え、これをNGNのようなIPネットワークに繋ぎ込む」のが「最も低コストのソリューション」である事が分かるだろう。それが「光の道」構想の原点だ。無線の場合は、一定の周波数帯域をその地域にいる数人から数十人、数百人の利用者でシェアする事になるので、一人当たりの回線スピードは相当低下する可能性が高く、光のソリューションに対抗する事は殆ど出来ないだろう。

光100%なのか99%なのかに、何故か偏執的に拘る人がいるが、これはいわばどうでもよい些細な問題だ。現在でも電話線が家に来ていないような地域もあるのだから、そういうところではLTEを使うほうが或いは安上がりかもしれない。また、光海底ケーブルを敷設できないような離島では、固定通信衛星を使うことが合理的だろう。一つ一つ個別にコストを検証していけばよいだけのことだ。

以上、恐ろしく長くなりましたが、これで大体、ほぼ全ての疑問にまとめてお答え出来たと思います。

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