昨年7月の参院選の前というタイミングであえて消費税率引き上げに勇気をもって言及した菅首相、昨年末に政府が発表した税制改正大綱、改造内閣での与謝野馨経済財政担当相の大抜擢。いよいよ消費税増税の舞台は整った。菅内閣と財務省は並々ならぬ決意でもって消費税シフトを敷いた。この消費税率引き上げに比べれば、筆者には日本のその他の政策課題は些細な問題に思えてくる。自民党も消費税率を少なくとも10%に引き上げることを、前回の参院選の前に提案していた。もはや消費税率の引き上げは決まったのではないかと筆者は思っている。そこで今回は消費税率が引き上げられるという前提のもと、どうやって消費税を引き上げるべきなのかを議論したいと思う。
筆者は消費税率の引き上げには基本的に賛成である。増税の前に政府の無駄をなくせというのはあまりにも正論であって、完全に正しいことだ。しかし無駄をなくすのは難しい。なぜなら政府の無駄は必ず誰かの利益になっているからだ。むろん政府にそういった無駄(つまり不当に利益を得ている集団)をなくすように圧力をかけ続ける必要はある。マスコミやインターネットのメディアは政府の無駄を見つけ出し、追求していく責務を負っている。とはいっても日本の低負担、中福祉の実態は持続可能でないのは明らかだ。日本は政治家の人気取りのために高額所得者の所得税や大企業の法人税は世界最高水準だが、それらは付加価値を生み出す個人や企業の海外流出を後押しするだけで、結果的には多くの日本国民の負担をかえって増やすことになろう。
さて、消費税を上げる際に一番重要なことは何だろうか? 筆者は例外を作らないことだと思っている。なぜならば特定の業界への例外的な税制の優遇措置は政治の腐敗を引き起こし、必ず経済の効率性を大きく損なうからだ。政治家への働きかけによって、消費税の例外に入れてもらえるとなれば、レントシーキングは激しいものになる。そういったロビー活動に費やされる労力は全くもって国民を豊かにしない。特定の団体と一部の政治家や役人を潤すだけだ。
例えば、生活必需品に関しては消費税を免除しようという議論がある。スーパーで買う食品や、通勤の定期券などだ。しかし筆者はこういった例外措置には大反対である。まず第一にどこまでが「生活必需品」で、どこからが「嗜好品」なのかの線引きが難しい。そしてその境界領域の業界団体に強烈なレントシーキングのインセンティブを与えることになる。また税制も不必要に複雑化する。
そもそもスーパーで食材を買って自炊することを税金で優遇し、レストランで食事をすることに税金をかけたり、満員電車で通勤することを優遇し、タクシーに乗るのは贅沢だと税金をかけようという発想そのものが根本的に間違っている。なぜならば自分で自炊すると、確かにレストランよりは安いかもしれないが、時間という非常に貴重なリソースが使われるからである。むしろ所得の低い人ほど積極的に外食して、それで空いた時間を使ってスキルアップし、人的資本の価値を高めるべきなのだ。また、そうすることによって外食産業での雇用も生まれ、国全体の経済効率は高まっていく。タクシーも同じである。とにかく日本国民は特定の業界に利益を誘導するような消費税の特例措置には断固として反対していかないといけない。
もし本当に例外のない消費税が可能ならば、たった消費税率10%ほどで他の税金を全て廃止しても、現在の日本の税収を超えることになる。現在の日本の税収は年間40兆円程度だ。GDPは500兆円なので10%の消費税をしっかり取ればそれだけで税収は50兆円になる。本当に例外のない消費税を目指せば、たったの10%程度で、現在の全ての税収を補って余りあるのだ。菅内閣にはレントシーキングの起こらない消費税の引き上げを期待したい。
参考資料
2020年、日本が破綻する日、小黒一正
政府の規制や補助金はなぜ醜悪なのか? ―レントシーキングの罠― 金融日記
いよいよ消費税が切り上がる、アゴラ
コメント
個人的には、経済の成長戦略と歳出の大幅な削減(社会保障、子供手当等)を実行する事を前提とした上で、税金を上げて頂きたい。もしこの二つを実行せずに、税金を上げても、政党政治の悪癖であるバラマキ路線が消費税増税分を超えて強くなり、近い将来すぐに税金を上げざるをえないようになる。今の政治家なら、いくらでも、財政を支出する口実は見つかるからだ。
私は、上の二つを前提としなければ、断じて増税を許さない。
消費税の増税前に無駄をなくすのは当然です。無駄をなくすのではなく、特別会計を一般会計化し、国会で審議できるようにするのが筋です。政権交代は、このためにあったと言っても過言ではありません。これができるまでは、何があっても消費税の増税を肯定してはいけません。
マスコミに何を期待しているのでしょうか?テレビ局が支払っている電波利用料を知っていてこの記事を書かれているのですか?
低所得者が外食をして、その時間でスキルアップですか?外食をするということは、そこに人件費がかかり、家族がそろって出かけなければならない。時間の無駄も発生します。スキルアップするには、本人が認識することが必要であり、これは小さいころからの教育によります。低所得者層の教育をしっかりすることが大切なのではないでしょうか?
私も賛成です。
ただ、増税に踏み切って選挙時に支持が得られるような根拠を
どうやって国民に示すか、が問題だと思います。
どうして、各政党は、国家の収支をちゃんと説明しないのでしょうか。
消費税率を上げる前に、益税、損税、免税などの不公平が入り込む余地を完全に排除していただきたいと思います。そのためにはインボイス制の導入が不可欠です。これを議論せずに単に税率だけを上げれば、不公平が同じだけ拡大するからです。インボイス制の議論は税率の議論と同時進行でなければおかしいと思います。
http://www.facebook.com/kazuyo.katsuma
このくず共が消えて良かったですね!!
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/zeisei/04.htm
財務省のホームページによれば現在消費税が5%で税収が今年9兆6千億円。
これによれば1%の値上げで約2兆円の税収増です。
それがどうして10%の増税で50兆円の税収が出てくるのでしょう?
それと貴方の理論にはほかの税収の落ち込みは考慮されていません。
消費税が上がった平成9年度と比較してみれば法人税は13兆6千億から6兆円。
所得税は19兆2千億から12兆6千億円の減収になっています。
消費税引き上げを社会保障の財源にするなら断固反対する。社会保障の削減を約束するなら賛成。
fmggt127さま
日本の消費税では、輸出企業には輸出品を輸出する分の仕入れの代金にかかっている消費税は、還付される仕組みになってます。10%の消費税で50兆円になるというのはこの還付をなくせという話であって、つまるところ輸出企業は国内での税制によるコスト面で、10%のハンディを追いながら、海外と競争をしろという暴論です。そんなコスト負担していたら、輸出なんてできっこないことは自明でしょう。
以上ご検討くださいませ。
消費税に限らず、増税のために一番やらなければならないのは憲法および財政法を改正して社会保障支出の総額を例えば税収の50%以内に制限する事だ。これが250%にもなる惨状では、いくら税率を上げても税収は増えないだろう。詐欺や強盗や自殺者を増やすだけだ。
一見正論の様に見えるし、私も正論だとは思うのですが、「無駄をなくすのは難しい。」と「レントシーキングの起こらない消費税の引き上げを期待したい。」は論旨が一貫していないですね。
どちらも絶対にできないんだから。
後者ができるのなら前者もできるはずだし、もし後者が前者より可能性が高いのなら、その根拠が欲しい。
増税しないと財政が持たないのも分かるけど、増税すれば必ず害虫が発生するとおもいますよ。
したがって私は消費税増税は反対しますし、消費税増税を容認する候補者には投票しません。
むしろ、このまま財政破綻の過程を見てみたい。
> たったの10%程度で
(11) H22年度一般会計歳入の消費税分は9.6兆円。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/002.htm
(12) GDPを500兆円として、
実効的な消費税率の国税分は1.9%という解釈でよいか?
(13) GDPの2.1%(=消費税の国税分4%-上記の1.9%)を免除している
又は徴収し損ねているという解釈でよいか?
(14) 追加でGDPの2.1%(=10.5兆円)を(きちんと)徴収できれば、
所得税と法人税を50%減税しても過不足なさそう。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/002.htm
(15) 消費税を10%に上げなくても(14)ぐらいでよさそうな気もする。
(16) ただし、
「免除している又は徴収し損ねている」部分の内訳は何だろうか?
たとえば住宅家賃に対応する消費税分?
(21) 「消費税率を10%します」って言ったら、
GDPは下降傾向になって500兆円とか維持できなくなるだろうな。
部分的には消費税が上がる前の駆け込み需要があるかもしれないけど。
(22) 国民は(少なくとも私は)、
「引き続きなし崩し的に消費税率を上げるのだろう」って判断して、
財布の紐を硬くするだろうな。
(23) 政府に「安易に税率を上げられる」と思われたくない。
個人の納税者が税負担増の可能性に対し、
(なかば)ヒステリックな態度をとるのは悪くない対応だと思う。
(31) ところで話は変わって、
銀行の法人税。
http://d.hatena.ne.jp/yumyum2/20101116/p3
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三菱東京UFJ銀、17年ぶりに法人税納付?
1995年3月期以降、法人税を払っていない大手5銀行。
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(32) 銀行の法人税、その2。
http://d.hatena.ne.jp/yumyum2/20110107/p1
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日本では税を払わないのに外国へは
(略)
日本の大手銀行の多くは1995年3月期以来15年間、
日本では法人税を払っていないが外国には税金を払うのだろうか。
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(41) 結局のところ、
消費税率を上げる前にやるべきことが山のようにあるんじゃね?
消費税を上げることとセットで考えなければならない重要なこととして、わたしは給付法制の見直しを上げたいと思います。これまで日本においては、国民の政治不信感からか政府は増税ではなく保険制度の設定で社会福祉を賄ってきました。しかし、国家が保険制度の運用にここまで一々関わるというのはそもそも、世界的にみてもやや特殊なのではないでしょうか?今後は、保険の運用は行政からもっと切り離して運用されるべきですね。そして、混合医療、混合介護などの、価格メカニズムや選択肢の導入ももっと図られるべきでしょう。日本の保険制度が効率的に運用されているかどうかについては、私は懐疑的です。レントシーキングの類いも多そうですね。これらに税金を投入するための増税であってほしくないですね。