福島第一原発の状況はまだ予断を許しませんが、かなり大量の放射性物質が周囲に出たことは間違いありません。しかし、いま発表されている程度の放射線量であれば、発電所の周辺を除いて人体には影響がないでしょう。これについては過去の核実験で多くのデータが蓄積されており、計算可能なリスクです。
もう一つの問題は、他の原発の建設や運転をどう考えるかということです。特に懸念されているのは東海地震の震源の近くにある浜岡原発で、「今すぐ運転を止めろ」という意見もあるようです。これは過去に前例がなく、個別の立地条件や設計に大きく依存するので、確率を正確に計算できない不確実性です。
これについては過去の原発訴訟で、国と反対派の間に一定の合意ができています。それは原子炉が破壊されて大量の死の灰が周囲に降り注ぐチェルノブイリ型(レベル7)の事故が起こる可能性はあるが、その確率はきわめて低いということです。しかしその危険の評価は大きく違い、国は「それは隕石に当たって死ぬ程度の無視できる大きさだ」と主張し、反対派は「もっと大きい」と主張しました。
今回の事故は反対派が正しいことを証明したようにみえますが、必ずしもそうともいえない。今回の地震は耐震設計で想定した規模を超えましたが、原子炉そのものは崩壊せず、緊急停止しました。もし地震で炉が崩壊していたら、チェルノブイリのように臨界状態の核燃料が周囲に飛散して大事故になったでしょう。
電源が落ちてECCS(緊急炉心冷却装置)が止まったことも想定の範囲内ですが、このとき炉内を冷却するポンプが想定をはるかに超える津波で壊れ、予備の電源も壊れてバックアップの冷却装置も動かなくなりました。これは反対派も想定していなかった事態で、従来の論争の枠組の外側のブラック・スワンです。
タレブもいうように、こうしたサンプルの少ない出来事については、あらゆる可能性を列挙することができないので、ブラック・スワンが生じることは避けられない。だから確率の大きさを論じることには意味がなく、最悪の場合に何が起こるかという最大値が問題です。
この点で今回の事故は、1000年に1度の最悪の条件でもレベル7の事故は起こらないことを証明したわけです。誤解を恐れずにいえば、国と東電の主張が正しく、軽水炉(3号機はプルサーマル)が安全であることが証明されたといってもいい。しかしこういう論理は、政治的には受け入れられないでしょう。今後、日本で原発を建設することは不可能になったと考えるしかない。これは日本経済にとって深刻な問題です。
コメント
100%賛成です。
I cannnot agree with anything more than this.
今回の地震の、津波の規模に関しては、これは別に100年に一度クラスでもないのでは?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E6%B3%A2
地点別のデータがないのでなんともいえませんが。水をかぶることは充分に予測可能だったのではないかと思ってしまいますが。まあ結果論ですね。
「これは別に100年に一度クラスでもないのでは?」
世界規模で見れば、確かにそうですね。M9クラスの地震も1900年以降5回起きていますし。日本近海に限れば1000年に一度クラスということでしょう。
> 1000年に1度の最悪の条件でも
2010年のチリ地震も M 8.8 だったので、二年間2回も起こっています。
2009年のサモア沖地震も M 8.1 でした。
また、同規模の地震が日本でも起こる可能性があることは、昨年中に予想されていました。
→ http://bit.ly/etOlZt ,http://bit.ly/gVAxLd
今回の地震はもともと予想範囲のうちにあります。1000年に1度のブラックスワンではなく、起こるべくして起こった地震です。あらかじめ警告されていたのですから。
> レベル7の事故は起こらないことを証明したわけです。
証明されていません。メルトダウンのあとの爆発の危険性はまだあります。
> 国と東電の主張が正しく、軽水炉(3号機はプルサーマル)が安全である
想定マグニチュードが 8.2 であったので、それ以上の地震が来たときにはフェイルセーフ機構がストップしてしまう、という人為的なミスがありました。
原子炉自体がいくら安全でも、フェイルセーフ機構が不完全であれば元も子もないということです。
過度に危険をあおることは不要ですが、反省すべき点を反省しないと、同じ条件のもとで、今後も同じことが起こるということを示しています。
なお、マグニチュードが 8.0 でも、陸地のそばで起これば、今回以上の被害が発生します。今回はまだ被害は少ない方です。気を緩めると、とんでもないことになります。
> 2. ikuside5
> 水をかぶることは充分に予測可能だったのではないかと思ってしまいますが。
予測されていますね。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-03-01/2010030101_05_1.html より引用
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吉井議員の話 2007年の新潟県中越沖地震では、地震の揺れそのものによって柏崎刈羽原発が被害を受けた。津波でも、海面が上がると冷却ポンプが水没する危険があり、海面が下がると冷却水喪失の恐れがある。これらは、原子炉の崩壊熱による炉心溶融を懸念させる事態だ。今後も、地震の揺れや津波への対策を前進させるために、国会でも取り組みたい。
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bobbob1978> 日本近海に限れば1000年に一度クラスということでしょう。
日本でも百年にいっぺんぐらいは起こっていますよ。地震の年表からわかります。
→ http://bit.ly/gTtkZK
関東大震災は、約90年前です。
「日本でも百年にいっぺんぐらいは起こっていますよ。地震の年表からわかります。」
「M9クラスの地震は1000年に一度クラス」ということです。M9クラスは貞観三陸地震以来です。
菅直人が今、何か出来ることがあるかといえば、
停止してる原発を起動させて電力不足を解消し、必要であれば原発を新たに建造することを厭わないという姿勢を見せることじゃないでしょうか。
古い原発を延々使い続けるほうが危険ですしね。
全く同意できません。今回の事故の原因は津波で機械、電気機器、電気制御パネルなどが冠水、運転できなくなった事が原因です。東電のホームページの「原発/津波への対策」には「過去最大の津波を上まる地震学的に想定される最大級の津波をシミュレーション」して余裕をもたせていると表現してます。想定している具体的な数字は記述されていません。福島原発は津波が増幅されるような地形ではありませんが、少なくとも最大5M位の津波は想定していたはずです。実際には最大7Mの対策しかとられていなかった。安全率は僅か1.4しかない。東電のホームページに図入りで解説されているが、「最大津波の高さ」と「津波に対する余裕」をみると余裕は40%以下にしかみえない。工学では機械、建築、土木の全てで想定外の事態を考慮し安全の為、余裕をみて設計するが、原発で最も重要な津波に対する安全率が僅か1.4しかないというのは信じがたい事です。
「1000年に1度」かどうかは問題ではないし、誰にもわからない。問題は、世界史上の歴代5位という地震がもう一度起こるのかということ。
1979年のスリーマイル島の事故であった水素爆発の対策もとられてませんでした。福島では格納容器の下部プールと原子炉建屋で水素爆発が発生してますが、制御不能になった場合圧力容器内の反応で水素ガスが流出する危険があることがスリーマイルの事故でわかっていた。空気よりはるかに軽い水素は建屋の上部に集まるのでベントで逃がすことは構造的に極めて容易です。この対策が採られていなかった為に爆発が起こり対処が更に困難となりました。
>6
冷却ポンプの水没
電力会社のエンジニアはゼネラリストでスペシャリストではないと私は強調したいのですが、冷却ポンプが水没しても使用できる「水中ポンプ」は何十年も前から広く使われてます。これはポンプとモーターを一体化し水の中で運転するものです。現在電力会社で使用している竪型ポンプより信頼性は高く、かつ安価なのですが保守的な電力会社は使用しないのです。
# bobbob1978> M9クラスの地震は1000年に一度クラス
意味ないですよ。7メートルの堤防を越えるのには、M9は必要ありません。M8でも容易に起こります。
Mの大きさが問題なのではなく、堤防の耐えられる大きさが問題なのです。堤防が2メートルなら、台風でさえ危険です。そういう問題。
実は、堤防などは1メートルでもよかった。肝心なのは、ポンプ類や発電設備を、浸水しない高さに置くということ。
フェイルセーフの問題です。自然災害の規模の問題ではなく、対策の問題。
津波の高さもそうですが、波長と速度(≒体積)を どの程度に想定していたかも重要です。
極論だと、高さ1mが時速300kmで1時間押し寄せれば、100mの堤防でも越えるのでは?
さらに幅まで広ければ、左右に水が逃げることすら出来ません。
この観点での設計基準が知りたいですね。
今回の地震は1000年に1度だと思いますが、100年に一度の地震であっても今回の事故は起きたかもしれません。北陸中日新聞2011年3月17日朝刊29ページによると、福島第一原発の想定する最大の津波は 3.1メートルです。それに、潮汐を見るとあのあたりはちょうど引き潮の時間帯であり、満潮だとさらに1メートル弱水位が上がっています。
台風が来ている時に地震が来ていたら、放水車も使えていないでしょう。
この件はもっと検証してから結論を出したほうがいいかもしれません。
「大地震が頻繁におこっているから危ない」を突き詰めていけば「そもそも、そんな日本に住むのが割に合わない」になると思うのですが。ライフラインがたたれることが日本ではいつでもどこでも起こりうると言うことを証明したわけですから。
今回の地震と津波が1000年に1回の規模だとしても、これだけ原発の個数が増えたところで地震とか隕石とか戦争とかテロとか人為的ミスとか人為的ミスとかのリスクを足し合わせれば、今後20~30年のうちにはもう1回くらい原子力災害が起きるような気がします。
他の産業活動に伴う健康被害とくらべて重大であるとはいえないのかもしれないけど、一件で経済的ダメージは甚大だろうし、この事故がそれほど例外的で特殊なものであるかは疑問です。「あり得ない偶然」は日々世界中で起きるものですから。
じゃあ電力なしで毎日の暖房や照明もままならずどんどん貧乏になっても良いかと言われたら、そうなったら案外早く事故のトラウマも忘れられるかもですが、今のところ原発推進が良いアイディアとは思えません。
確かに大げさに騒ぎすぎですよね。
それによしあしは別として
今後、新たに原発を建設するのが
難しくなるのは先生のおっしゃるとおりでしょうね。
結果論でものをいうのはたやすいこと。たとえM9.0でなくても直下型なら同様なことが起こる可能性はあるのでは。
ではどこまで最悪の想定するのかということになると結論は出ないと思う。手っ取り早いのは建設しないということ。でもそれは非現実的。
今回の事故が想定できたかできなかったかということではなくて、東電の対応のまずさがすべてだと思う。今回の事故が想定を超えたものであれば、IAEAや米国の協力をすぐに受けるべきだったのではないか(たとえそれが徒労に終わっても)。
もし爆発がなかったら、このような議論は別の展開をしていたと思う。
すべてが終わって全貌が明らかになってからするべき議論ではないか。
> 「過去最大の津波を上まる地震学的に想定される最大級の津波をシミュレーション」して余裕をもたせている
福島第一原発の防波堤がつくられたのはいつでしょうか? 1-3号機が建設され1965-1975頃の計算機にこのようなシミュレーションはできませんでした。
当時最高のスーパーコンピュターのCDC6600のクロック・サイクルは0.1secで、 炉心の3Dモデルには100x100x100位のメッシュをつかっていました。 これでは、津波のシミュレーションは不可能です。 当時のメモリは30円/ビットでした。つまり、 主メモリが4Mバイトもあれば、それだけで1億円を越えました。
構造が耐えたことは確かですし、制御棒がしっかりはいるところまで作動したのも確かなので、その意味では最悪の事態にはならなかったとは言えるかもしれません。しかし、被害は充分に大きいので、ツメが甘く冷却系が潰れたことが本当に悔やまれますね。あれさえなければなんとも無かったわけですよ。
また、おなじことがもう一回起こっても今度は充分に耐えられるはずです。なにより同じ地点では今後数百年くらいは同規模の地震はないともおもえますし。なにもかもが悔やまれますね。
にしても、起きる起きると言われていた大地震が、初めて目の前で起こった意義は大きいので、これを機に原発に関してはさらなる安全対策を国際的に推進するしかないですね。最悪の事態にはならなかったというのはたしかにそうだと思います。
マグニチュード9.0は1000年に一度かもしれませんが、今回の地震で福島県の震度は気象庁発表で6強となっています。その程度の地震はかなり頻繁にあります。証明されたのは、震度6強での原子炉の耐震性だけではないでしょうか。
さらに原子炉の安全性とは耐震性だけが問題なわけでもなく、これで「軽水炉の安全性が証明された」とは、いつもの核心をついた議論からすればあまりにも粗雑です。残念です。
1000年に一度の事故でもレベル7の事故は起こらなかったから原発は安全だった、という議論はやはり乱暴だと思います。
風評被害も含めて、一体どれだけの損害賠償の負担を、国、すなわち我々と東電は負うことになるのか。1000年に一度、数百年に一度、原発に深刻な問題を引き起こすどんな問題・災害が発生するか、予想して対応策を準備しておくことはできないというべきで、そうであれば同様の事態はまた発生する可能性があると考えるのが自然です。今まで、原発は安全だからとして、被害と損害賠償の問題を政治的タブーとして避けられてきました。この問題を正視した時に、原発を引き続き推進するのは、残念ながら無理と思います。
もう1点。チェルノブイリは比較の対象外に置くとして、スリーマイルの事故は1日で終結しています。悪条件が重なったとは言え、1週間たった今の現状を見ると、日本には、原発の予測出来ないトラブルに対処する技術力もなかった、と謙虚に認めるべきだと思います。
21. humanurist様の御意見に賛成です。
(1)「今回の事故は、1000年に1度の最悪の条件でも
レベル7の事故は起こらないことを証明した」
→レベル7でなくレベル5なら起きても止むを得ない(安定した
電源供給のメリットと比べてデメリットとしては小さい?)と
先生はお考えなのでしょうか?「誤解を恐れずにいえば」と
お書きのとおり、実にミスリーディングな表現だと思います。
(2)「軽水炉(3号機はプルサーマル)が安全であることが
証明された」
→「特に懸念されている・・・東海地震の震源の近くにある
浜岡原発」が断層だらけの地盤の上に立地しており、その上
東海・東南海地震が近く発生するのは確実と言われる中でも
先生はそこまで言い切ることが出来るでしょうか?
(3)「いま発表されている程度の放射線量であれば、
発電所の周辺を除いて人体には影響がないでしょう」
「大本営発表」のデータが正しいかどうか判断するには、
IAEAも含めた今後の調査の結果が必要だと思います。
現段階で判断するのは早計でしょう。
(4)「しかしこういう論理は、政治的には受け入れられない
でしょう」
→これまでは住民の顔を札束で叩き、地方自治体には電源
交付金等の金を与えることで立地してきましたが、おそらく
福島の農業・観光業は壊滅的な風評被害を被ることでしょう。
こうした事態を見れば、確かに原発立地を受入れる人々は
確かにいなくなるでしょうね。
(5)「今後、日本で原発を建設することは不可能になったと
考えるしかない。これは日本経済にとって深刻な問題です」
→企業用にはLNG火力発電所、家庭用には太陽光発電を
促進することに加え、今回の教訓として節電を一層推進する
ことで解決する道はあると私は考えています。
原発行政は沖縄の基地問題と被りますね。
ただ昔でいうと炭鉱の事故に近い印象があります。危険であろうとも止めるわけにはいかない。原発の解体にしろ、莫大なコストと時間が必要でしょう。千数百億円とか30年とか。
当然、見直しをして推進すべきでしょう。
フクシマでいいと思いますよ。100km圏内は
最初から住むことを禁止すべきですよ。たぶん、住めないかもしれませんが。補助金がもらえるからと、わざわざ原発の近くに引っ越す人を排除すべきでしょう。
石炭の時代もかなりの雇用がありましたが、原発も同じように雇用が生まれています。
結局は時代を戻るか行くかですから。
より技術革新が進むことを望みます。
天災は予測することが難しいし、コントロールすることなどなお難しい。起きてしまったことに対して迅速に対応するしか人類にはないのではないでしょうか。もちろん予測や備え等をおろそかにしろという訳ではありません。それらも同時に進行していくことが大事だと思います。
ただ、すべてのことに関して言えるのは、エネルギーが必要だということです。特に電力は重要です。
原発が危ないからすべて停止してしまえというのはあまりにも乱暴です。電力の停止はあらゆる活動の停止を意味します。関東地方の人はこのことを身を以て知ったのではないのでしょうか。数時間停電するだけでこれだけ混乱することを忘れてはいけません。その上で、エネルギーをどうするかを長期的視点で考えるべきです。
もちろんそれは今後の国の形そのものを議論することと同義です。他人の足の引っ張り合いなんかもう意味がありません。
確かに原子炉そのものの安全性は今回の件でむしろ実証されたともいえると思いますが、原子炉を制御する原発というシステムは喧伝されていたのと違いセキュリティーホールだらけ・例外処理はバグだらけであったことが露呈してしまいました。日本人は失敗の研究が苦手だとはよく言われますが、両者を区別しない空気は危険かもしれません。仮に原発を廃止するにしろ、今日明日というわけにはいかないのだから。
> 9. hogeihantai
> 想定している具体的な数字は記述されていません。
おそらくこれだと思います。
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/report/bknumber/0504/pdf/ts050407-j.pdf
上記サイトの左下に「福島第一」o.p.+3.1m と書かれています。
(しかし、ここの海岸は満潮時には平均水位 +60cmくらいになるように見えるんだけど…実質 2.5mの津波しか想定してなかったのか…)
> スリーマイルの事故は1日で終結しています。
TMI の事故では、2次冷却水の問題から冷却塔からの給水ポンプが停止し後、 次の事象が発生しました。
1) 1次冷却水の加圧器の逃し弁が減圧のため開かれたまま固着した。
2) 逃し弁の開閉を示すべき指示計は実際の弁の状態でなく、弁が開状態であることを意味する駆動モータの状態を示していた(設計の誤り)。
3) 炉内の水量は減少しているにもかかわらず、 沸騰のため水位計は水位が回復されたことを示していた。 こうした状態での水位計の動作はテストされていなかったということです。
ここで、2と3は、それぞれ想定外の現象です。
その後、次のシフトの運転員が逃し弁の固着に気づき、 1時冷却水の流失を止めたのは、 2時間30分ほどあとです。
EECSは正常でしたので、 炉心の冷却は進みましたが、 3日後に圧力容器内に水素が検出され、 この水素が触媒剤で除かれるまで、 緊張状態は一週間ほど続きました。
福島の現状はEECSが動いていないので、 TMIの事故よりはるかに厳しいです。
> 原発の予測出来ないトラブルに対処する技術力もなかった
まともな技術者なら、自分達が作っているものが絶対安全であるなどとは思っていなかったとおもいます。 だだし、それを口にだすことは禁句でした。
また、 原子力発電の仕事は、 技術的には高度で金も潤沢でしたので、 技術者にとっては魅力的でした。 パール・バックに「原子雲のかなたに」という小説があります。 この小説では、 このような科学者・技術者の心情を70%好意的に30%批判的に書いています。
これは、 技術中毒のようなものでしょうか? 私もその軽症患者です。
> 「大本営発表」のデータが正しいかどうか判断するには、IAEAも含めた今後の調査の結果が必要だと思います。
TMIの事故では、 逃し弁の固着に運転員が気がついた時点で、 事態は収束に向かいました。 非常電源も失われず、EECSは正常に動作しておりました。 この一基の事故のレベルが6です。
IAEAが事故レベルを6と発表ておりますが、私はこの数値を好意的なものとみています。 非常電源が失われ、EECSも運転不能になり、格納容器にひび割れが生じたものもあり、さらに使用済み燃料プールの水も失われるという状況では、 事故レベルはすくなくとも6.5だとおもいます。
保安院が事故レベルを4から5に上げたという記事をどこかで見ましたが。 これだと、「大本営発表」といわれてもしかたがないとおもいます。
昨日から外部電源の回復によりEECSが動き出すことを祈りつづけています。 現場の作業員にとっては、 自分達に責任のない事故に対峙し、 涙を流しながらの必死の作業です。 弁の開閉も高度に汚染された格納容器の中に入って人力で行っているようです。 このようにしかとれない記事がありましたが、誤りかもしれません。 しかし、電源がないのですから、弁は手で動かすしかありません。
池田さんの記事に反対する気持ちはよくわかりますが、原発がないことの結果をまだ経験していないからではないかという気がします。
この夏が終るころにどういう意見が出てくるか…
それでも原子力発電所が必要だという方に,「それは違う!」などという気は毛頭ございませんが・・・
そのような方々には,次回事故が発生した場合,家屋敷を含む全財産を被災地の復興に充てるための財源として没収されても何ら異議を申し立てないという契約書にサインさせてはいかがでしょうか.「この非常時に遊興にふけるとは何事か!」とか「我々は一蓮托生の運命共同体だ!」などと考えていらっしゃる方々は決してサインすることを拒否しないことでしょう.
決定する者と,行動するあるいは責任をとる者とが分離された社会ほど恐ろしいものはないとあらためて考えさせられます.
私は原子力に関しては全く無知で、反原発派でもなく、もちろん共産党員でもありませんが、今ネット上でも話題になっているこの文書をみると、今回の原発事故が本当に「ブラック・スワン」だったのか、疑問に思ってしまいます。どのように考えたらよいのでしょうか?
http://bit.ly/eEFWaH
TMIの事故のレベルは5でした。 また、福島の事故レベルを6としたのは、フランス原子力安全局のようです: http://getnews.jp/archives/104912
訂正します。
予想外の出来事はある。というのは前提で、それによる今回の事故の存在を許すか許さないかは、別問題のような気が。
事実と解釈(評価)でいうと、解釈(評価)は多様化する。
正しい事実認識も、難しいというのを再認識。(観測の問題など)
今回しのいだから次も大丈夫という保証はない。可能性の問題であるならばそうなる。部品の耐久性もあるし、条件が毎回違う。大丈夫の証明にならない。
素人の勘違いかもしれないが、可能性はあるという話と、証明できたという話を同じページですると、矛盾が出やすいような気もする。
それでも中国電力の祝島、上関原発建設の方針はびくともしてません。
県や町の要請を踏まえ、東京電力福島第1原発で発生した事象について正しい説明をすることが不可欠として、建設予定地の工事を一時中断した、と説明。・・・上関原発が重要な電源であるとし、国レベルの原因究明や対策を反映し安全、安心な発電所づくりにつなげると表明している。〔毎日新聞:山口東版〕
> 29. minourat の訂正
EECS ==> (ECCS:Emergency Core Cooling System)
それから、 ECCSのポンプおよび弁は格納容器の外側にあります。 http://www.bousai.ne.jp/vis/bousai_kensyu/glossary/hi_eccs.htmlの図を参照してください。 福島の原子炉はBWRです。
なお、RHR (Residual Heat Removal System) は、 格納容器の下部の圧力抑制プールの水をを海水で冷却します。 この図にはでていません。
5・6号ではRHRは動き出しました。
何しろ、40年前の知識をつかっていますし、もうろくもしました。 多謝。
最悪の範囲の、その中でもなんとか想定内の事故というには、少なくとも近隣の福島・郡山などの都市部の放射能レベルがもっと安定して居住に問題がないくらいにならないと、私は納得できないですね。申し訳ないじゃないですか。
>過去の核実験で多くのデータが蓄積されており、計算可能なリスク
誰も指摘しないので書いておきますが、「過去の核実験」でいったいどれだけ大勢の人が死んだか、後遺症に苦しんだか、環境が破壊されたのか知っていて書いているのでしょうか?
何も知らない人々に放射能を浴びせる人体実験ですよ。
多くのデータというのは死んだ人や後遺症で苦しんだ人の数ですよ。
それを蓄積とか計算可能なリスクだとか...言葉も出ません。
『M9.0』は未曾有な災害なんだと言い訳の道具に使われる記号に過ぎない。健康に害がなくても被災者が被曝した現状に安全を結論づけるのはいかがなものかと。風評は続きますよ。
そもそも福島県民に向けて今、この見解(記事)を発信できますか?
原発がある町にも同様に。ネット社会ではなく。
まだ事故が収束していない段階でここまで言い切るのはいかがなものかと思うけど、最近よく見かける「人命尊重=避難範囲の拡大」という考え方には賛同できない。20キロでも避難中に入院患者が亡くなっていたり、他の被災地で避難所で高齢者が亡くなっていたりするのに、あの携帯キャリアの社長が言うように50キロまで広げたら、どれだけの人の健康に害を及ぼすことか。私の親戚は原発から50キロ程度のところで生活していますが、避難所で生活するより遙かに健康的な生活を送っています。もし、避難所暮らしになったら、90近い祖母は大きく寿命を縮めるでしょう。私の家族なら、我が家で引き取ればいいでしょうが、50キロともなれば他にもそういう人々はいっぱいいて、そのうち県外に身寄りのない人だってたくさんいるのです。放射能のリスクにばかりとらわれるのでなく、避難や避難所暮らしのリスクについても、軽視せずに考慮してから主張して欲しいものです。
レベル7級となりましたね.全くの同レベルではないでしょうが,このこと自体(圧力容器が破損し,毎時テラベクレル単位で放射性物質が流されている)が池田先生にとってのブラックスワンでしょう.
予想可能と,計算可能なリスクと思われていたリスクを超すリスク.こんなリスクも存在したのかと驚かされます.
恐ろしや,ブラックスワン.
言ってしまえば何だってありな気もしてきます.
津波15メートル超で「炉心損傷」経産省所管法人は「想定外」を想定
産経新聞 5月31日(火)0時48分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110531-00000503-san-soci
原発の安全研究に取り組む独立行政法人「原子力安全基盤機構(JNES)」が平成19年以降、津波被害を想定した研究報告をまとめていたにもかかわらず、所管する経済産業省や東京電力が具対策を講じていなかったことが30日、分かった。東電福島第1原発の事故は、ほぼ研究報告通りの展開をたどっており、国や東電が「想定外」と主張する津波の波高についても想定。15メートル超の津波を受けた場合の炉心損傷確率を「ほぼ100%」としていた。
—
防げるはずの人災が発生してしまうこともまた、ブラックスワンなのかもせれません。