危機管理・災害対策の一環としての「テレワーク」再考

2011年03月19日 18:00

「テレワーク」とは、IT(情報通信技術)を活用して時間や場所にとらわれない柔軟な働き方をいい、語源はTele(遠い・離れて)とWork(働く・仕事)にある。

テレワークについて、日本ではワークライフバランスの一環として取り上げられることが多かったが、いくつかの災害や9.11(米国同時多発テロ)等を経験したアメリカでは危機管理・災害対策の一環としても推進されている。


実際、アメリカは2000年のPublic lawで各連邦機関にテレワーク実施を義務づけており、徐々にその適用を拡大している。アメリカ連邦政府がテレワークを推進している理由は、いくつかが主張されている。つまり、①交通混雑緩和、②環境問題への対応(通勤での車の減少)、③危機管理・災害対策、 ④オフィスコストの削減、等である。

このうち、③の危機管理・災害対策については、9.11(米国同時多発テロ) 以降、テロや災害などが再び起こっても、いつでも業務を継続できるような仕組みとしてテレワークを位置付けている。
いま、アメリカでは、GSA(General Services Administration)とOPM(Office of Personnel Management)という組織が共同で、連邦機関のテレワーク推進を図っている。

欧州のSIBIS調査(2001年~2003年にEUの情報社会プログラムの一環として実施された期間限定の調査)によると、テレワーク先進国アメリカのテレワーク人口は労働人口の24.8%にも達しており、IBM、AT&T、アメリカン・エクスプレス等が積極的に活用していると言われる。また、オランダは26.4%、フィンランドは21.8%、デンマークは21.5%、スウェーデンは18.7%、イギリスは17.3%である。だが、これは2003年の調査結果であり、現在のテレワーク人口はさらに増加していることが見込まれる。

一方で、国交省のテレワーク人口調査によると、2008年時点で、日本のテレワーク人口は労働人口の15.2%を占めるに過ぎない。

いま日本は未曽有の危機に直面している。3月11日に発生したマグニチュード9.0の東北関東大震災は、三県(岩手・宮城・福島)を中心に東北関東地域に甚大な被害を及ぼした。そして、大規模な計画停電や予断を許さない福島原発問題は、現在、家庭生活だけでなく、首都圏の道路や鉄道・地下鉄の交通網といった様々な範囲に影響を与えているが、この状況は暫く継続するという識者も多い。

このため、研究者のような一部の業種では、既にテレワークを進めつつあるが、他の業種でも、ワークライフバランスなどの目的のみでなく、いまこそ、危機管理・災害対策の一環としてのテレワークについて、日本でも本格的に推進してみてはどうだろうか。企業のオフィスコスト削減にも役立つならば、日本経済の競争力向上にも寄与するに違いない。

(一橋大学経済研究所准教授:小黒一正)

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