今回の震災に際し、NHKの放送がUstreamやニコニコ動画で再送信されていたのを見て、やはり国民的大災害だからなあ、などと、感心していたなら、大きな勘違い。昨年12月3日、ほとんどのテレビ局があえてあえてまったくニュースで採り上げない間に、じつは「放送法等の一部を改正する法律」が公布され、今年3月1日からばらばらと条項ごとに施行になってきているのだ。7月24日に、アナログ停波が決定されているが、おおよそ8月末までには、この法律も完全施行となる。
放送法等の一部を改正する、というと、些細な変更であるかのような印象を与えるところが、総務省もなかなか小憎い。実質的には、放送法の根幹から引っ繰り返すもので、施行後は「新放送法」と呼ぶべきものとなる。というのも、この「改正」は、放送法の対象である「放送」の定義そのものを変えてしまうものだからだ。
すなわち、従来は「放送」と言えば、放送法第2条1の2によって「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」だったのだが、この「改正」では、「電気通信(電気通信事業法第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)」とし、この条項は、すでに3月1日から施行されている。
くわえて、NHKの受信料に関する旧第32条「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」を新第64条にずらし、これに第4項として「協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をするものについても適用する。」という規定が加えられる。
ようするに、先月までのNHKは、無線の放送の受信を普及するだけのものだったのに、今や、あらゆる電気通信手段で日本全国への映像配信を普及する、などという、壮大な国家的事業目的を持つ組織へと「発展」したことを意味する。そして、この壮大な事業のために、携帯やカーナビはもちろん、今年の夏の終わりまでには、ケーブルテレビだろうと、ネットにつながっているだけのパソコン(テレビ機能無し)だろうと、とにかくNHKからの映像が見えてしまうものを持っているやつら全員から、ごっそりと受信料を巻き上げることができるようになる。とくに会社や事務所は、パソコンが置いてある部屋ごと、部課ごとに、個別に1件分として課金されるので、総計すると莫大な金額だ。
東北から関東までぐっちゃぐちゃの状況において、昨日3月18日も、定例閣議でちゃんと「放送法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」が出され、着々と話は進んでいる。他のテレビ局がさんざんネット配信にちゃちゃを入れてきたのに対し、NHKだけは「接触者層を増やす必要がある」などと言って、昨年12月6日からYoutubeで自局のアニメ番組ほかの無料配信をやって、太っ腹そうに見えたが、それもこれも、こういう下心があればこそ。今回のストリーム配信も、この一環だ。
だれもろくに反対もせず、国民が選んだ国会議員たちがわけもわからず決めちまった話なんだから、いまさらどうしようもない。仕事専用のパソコンなのに、ネットにつながっているというだけでNHKに受信料を取られるのはおかしい、と思うなら、改正法の全条施行前に、プロバイダ側に、再配信も含めてNHKの映像すべてを有害ブラクラとして検閲遮断したファイヤーウォールでも準備してもらうほかあるまい。
(純丘曜彰 教授博士 大阪芸術大学・哲学)
コメント
> 仕事専用のパソコンなのに、ネットにつながっているというだけでNHKに受信料を取られるのはおかしい
デマは書かないでください。Ustreamやニコニコ動画は、誰でも見られるわけではありません。アカウントを取得して、サインイン(ログイン)した人だけです。国民の大半はそれに当たりません。
Ustreamやニコニコ動画で有料配信を選択した人なら、それを見るのに金を払っても不思議ではないでしょう。一方、大半の人は対象外です。
今回の事例は、NHK が自前で有料配信する体制を整備するというだけでしょう。有料配信を強制的に購入させるという意味ではありません。そんなこと、あるわけないでしょ。強制課金システムすらないのに。
greetreeはばかか?!
それならテレビもチャンネル解除すれば対象じゃないという理屈。
youtubeには言及していないのはなぜ?
デマでも何でもなく、法律をそのまま文理解釈すればこの記事が正しいと理解できますよ。
但し、NHKの放送をインターネット上に同時再放送することが条件になります。同時では無い、蓄積型は対象外ですね。
それより、被災者のみなさんは、すぐにでも放送受信機の廃止を届けないと、口座からとっとと受信料を引き落とされますよ。
一応被災者には8月まで免除する方針のようですが、これとて申請しないとダメでしょう。
どうせ申請するんなら、手間は同じなんだから廃止したほうが9月から復活する心配がありません。
明らかなデマです。放送の定義である「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」における「公衆」とは、不特定多数という意味です。ニコ動やUSTREAMはこちらから送信の要求をしてはじめて見られるようになるものであって、特定の通信であり、不特定多数に向けられたものではありません。したがって、放送法における「放送」にあたりません。
同趣旨のことは、176回国会において、総務大臣が答弁しています。以下引用します。
法律では、先ほどお話しになられましたように、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」となっておりますが、その場合、「公衆」というのは不特定多数という意味でありますので、送信者に対する受信者からの要求に応じてその受信者に対して行う送信は、相手が特定された送信となりますので、「公衆」には当たらないという解釈が出てくると思います。
サラ > テレビもチャンネル解除すれば対象じゃない
アンテナがなければ、対象じゃないですよ。装置があっても、映らなければ、対象じゃない。壊れているテレビも同様。
3> NHKの放送をインターネット上に同時再放送することが条件になります。
ログインすることが条件でしょう。さもなくば、世界中の数十億人からNHK料金を徴収できる。ありえないでしょ? 逆に、ログインするなら、外国にいる人も料金を徴収される。
3> 法律をそのまま文理解釈すれば
だったら、法律が底抜けなんでしょう。底抜け法律をそのまま額面通りに受け取るのは馬鹿げている。現実にありえない話なのに。
本文> 総計すると莫大な金額だ。
「原発がすごい放射能を出して死者続出」というのと同じ類のデマ。
原口総務大臣のときに、それは国会で否定してたはず。
これはケーブルテレビ経由であることを理由に契約しない人向けの条項でしょう。
なお、仮にあらゆるパソコンやカーナビに課金されることになっても、全然心配はいらないですよ。課金対象の数が増えれば、1件あたりの課金金額は減少しますから。
国民が取られる総額は、NHK の予算総額と同じです。その額はNHK の予算によって決まります。課金対象の数によって決まるわけじゃありません。
マクロ的に考えましょう。
ちょっと面白かったので再度コメントを。
>課金対象の数が増えれば、1件あたりの課金金額は減少しますから。
これが正しいと仮定した場合、コストの根拠が正しいことを証明しなければなりませんね。
放送などのサービス事業は、その殆どが人件費なのです。つまりNHK職員の給与(とか年金とか)がコストの大半なのですが、その給与額が正しいという根拠を示して欲しいのですね。
公共事業を謳っている海外の放送局の平均給与とかを調べれば明らかなように、日本の民放の平均給与に近づける根拠は有りません。
せめて米国の公共放送並のボランティア団体程度の給与であれば、受信料を払っても良いかな、と思っておりますが、それでも反対者は多そうな今日この頃です。w
これは無理だろ。
受信設備じゃないし。
発信者に対しての課金だと思うよ。
ワンセグもスタート時にNHKはワンセグはカウントしないって約束でスタートしたしね。
>ワンセグもスタート時にNHKはワンセグはカウントしないって約束でスタートしたしね。
こんなことをヒトコトも言っておりません。正しくは「ご自宅で受信契約を結んでいただいておれば、新たな受信料は発生しません。」ということ。
つまり自宅で受信契約していなければ、ワンセグといえども受信契約は必要なのだ。
いや、じゃあなぜこの地デジ切り替えの年に改正したのか、その理由があるはずです。記事の解釈はデマでもない。回収の方法は後から構築し、まずは対象の窓口を広げた。そう見えますが。
ちがう!デマだ!と語る方。では「何の為の改正なのか」の意図を答えていない様に見えますが。
日本は、三権分立だから、立法府は司法府を規定することができない。書かれた条文のみが有効。で、国会答弁は、法的拘束力が無く、言った本人の政治責任しか問われないよ。こういう政治の基本を知らない議員たちは、かんたんに役人に丸め込まれて、法案を通過させてしまう。法案があいまいだったら、答弁で納得せず、法案そのものの条文を厳密に書き直させる必要がある。狡知にたけた熟練の役人があいまいな文章を作って、大臣に答弁させるなら、むしろそこがものすごく怪しい。
それと、「携帯電話」と「設置」の問題。NHKって、自分でかってに独特の法解釈をするからねぇ。契約に歩いているのは、NHKの競争入札で業務を落札した外部の会社に雇われた人で、NHKの社員ではないし。
NHKの営業用内部資料(現行)
日本放送協会放送受信規約
2 受信機(家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。以下同じ。)のうち、地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置(使用できる状態におくことをいう。以下同じ。)した者は地上契約、衛星系によるテレビジョン放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は衛星契約を締結しなければならない。