災害復興カジノの導入を提案します - 木曽 崇

アゴラ編集部

3月15日にここで提案させて頂いた全国規模の震災復興宝くじの発行は、すでに検討段階に入ったとの情報を関係者より伺っております。より多くの復興資金獲得のためにも、なるべく早い時期に全国民を巻き込む形で発行まで至って欲しいものです。

さて、先の宝くじの提案の時にも「ギャンブルで復興資金獲得など許されない」という良識派(?)の方の意見も頂きましたが、ギャンブルの専門家である私の立場から、もう一つ彼らに怒られそうな提案を差し上げたいと思います。それが「カジノ導入を利用した災害復興」の提案です。先の投稿からの繰り返しになりますがギャンブルというと眉をひそめる人も多いでしょうが、実は多くの国において緊急で必要となる公共財源を広く市井から集める手段として利用されています。災害復興においてもそれは同様で、間近では2005年に米国を襲ったハリケーンカトリーナからの復興計画の中でカジノが利用されました。


カトリーナは2005年8月に米国南東部を襲った大型ハリケーン、最大風速78m/s、上陸時の最大風速65m/sの全米史上最大級の自然災害です。このカトリーナ被害と今回我が国を襲った東日本大震災の共通点は、大規模な水害で湾岸沿いの広範囲の街が文字通り瓦礫の山と化してしまった点にあります。
カトリーナはその襲来が事前予測されたため死者数こそ1,557人程度だったものの、倒壊家屋35万戸、家を失った居住者80万人、被災による失業者55万人という大きな被害をもたらしました。被害総額は約15兆円と試算されており、今回の震災が起こるまでは世界最大の被害額を生んだ自然災害でした。

この米国を襲った未曾有の大災害の際に、米国で災害復興に利用されたのがカジノです。災害復興にはインフラの復旧、被災者への直接援助、地域産業の復興、雇用の創出など広範囲の対策が同期的に必要です。米国政府はカトリーナ被害に対して5年で約10兆円にも及ぶ緊急予算を組みましたが、全被害を政府の拠出金だけで補うことは不可能です。そこで米国、なかでも最も被害が大きかった州のひとつであるミシシッピ州で採用されたのがカジノ導入による民間資本の活用でした。

ミシシッピ州は最も被害が大きく、復興が困難とされた河岸地域をカジノ開発地域と定め、民間資本の誘引を積極的に行いました。
この施策によって集まった資本はカジノ開発への直接投資だけで約2.6兆にも及びます。この投資が呼び水となって、地域にショッピングセンターやゴルフ場、宅地造成など様々な開発投資が行われました。ミシシッピ州の被災地はその後急速に回復し、被災当初35万個あった倒壊家屋は約5年で90%が回復し、現在では疎開していた住民の95%が地域に帰還しています。

また、ミシシッピ州ではカジノ導入によって観光産業を中心とした新たな雇用が生まれました。現在、ミシシッピ州のカジノ訪問客数は年間3,100万人、うち70%が州外からの観光客です。ミシシッピ州カジノは現在、2.5万人を雇用する地域の主要産業の一つとなっており、周辺住民に対して落とす支払給与総額は684億円にも及んでいます。もちろん、地域に観光客が来訪することによって様々な周辺産業に相乗効果が生まれています。

そして何よりもカジノを利用した復興施策の最大の利点は、その施策が新たな復興財源を生むことにあります。
ミシシッピ州では11.2%のカジノ税がカジノの売上に対して課されています。2010年現在、ミシシッピ州のカジノ税収は年間240億円。被災時から累計で約1,500億円が被災自治体に渡り、その他の復興施策に役立てられています。被災地に対する様々な復興アイデアはあれども、民間資本導入、雇用対策と同時に新たな財源を生むことのできる施策というのは、カジノ導入以外にはないと言って良いでしょう。

実は、上記のようなカジノを利用した復興案は、我が国においても1995年の阪神淡路大震災の際にもアイデアとして出されていました。しかし、その実現のためには国レベルでカジノを合法とする特別法の制定が必要であり、時間もかかる事からすぐにその案は立ち消えました。
一方、阪神淡路大震災から16年を経た現在、その環境は一変しています。2006年、我が国では当時与党であった自民党の政務調査会内にカジノ・エンターテイメント検討小委員会が発足し、同年6月にはカジノ合法化基本方針が発表されています。政権が民主党に移った現在においてもこの検討は引き継がれており、現在、観光庁および内閣府の中で合法化の是非について論議が行われています。昨年には民主党、自民党など5党からなる超党派議連から、カジノ法案の骨子までが発表されている状況。
カジノ導入を利用した復興案は、もはや我が国にとって絵空事ではなく「実現可能なアイデア」として提案できるレベルにまで来ているといって良いでしょう。

被災地の復興は10年がかりの長い計画となりますが、ぜひその計画の一部としてカジノ導入ご検討頂ければ幸いです。なお、より詳細な提案内容に関してはこちらのリンク先に纏めております。ご興味のある方はご一読下さい。

(木曽崇 国際カジノ研究所 所長)

コメント

  1. onyasu0222 より:

    簡単にできることは、パチンコを遊戯から賭博に変更・課税することにより、税収が見込めます。異論があると思いますが、その方たちはパチンコ既得権者ということでしょう。郵政より、こっちの方が簡単にできるのに、一向に進まないのが不思議でなりません。
    カジノを解禁したからといって、パチンコやその他のギャンブルから金が移行するだけです。カジノは、外国人を含む旅行者がターゲットであり、観光産業の一部にすることが大切ではないでしょうか。

  2. bizan00 より:

    復興宝くじ、僕も震災の発生当初から考えていましたが、妻は不謹慎だとすごく懐疑的でした。
    先日のエントリにも批判があったということは社会の一定のセグメントにはそういう人がいるんでしょう。

    カジノはそこからさらに一歩進んだ考えですね。宝くじの欠点は単発であまり繰り返し使えない手だと思っていたので、そういう意味ではカジノのほうが恒常性、継続性もあり、コンスタントに復興資金を確保していくにはよさそうです。

    あとは、上記のような不謹慎論者がどれくらいいるか?

    世の中、イデオロギーだけではメシは食えないと思う人とイデオロギーのためにはメシ抜きも厭わずという人に分かれるんでしょうね。

  3. nnnhhhkkk より:

    >1
    誰でも参入できるパチンコが既得権者ですか?意味が分かりません。どうしてパチンコをやり玉にあげるかずばり襲えて差し上げます。成功している在日に嫉妬しているからではないですか?
    就職などでさんざん差別を受けた人種と言うのは、みんながやりたがらない汚い仕事をやるものです。差別を受けてきたユダヤ人がそうであるように、在日も随分と差別を受けてきました。消費者金融に在日が多いのもそういう理由です。つまり差別してきた過去のなごりに過ぎません。俺から見たら、おたくはユダヤ人を差別してきたヨーロッパ人と何が違うのかという感じです。
    既得権者というなら公営ギャンブルの方ではないんですか?絶対に民間が参入できない競売や競輪などはその典型でしょう。
    パチンコ税を導入しても税収は見込めません。みんな潰れてしまいます。マルハンだって経常利益率はたったの2.5%ぐらいしかありません。つまりほとんど儲かっていないのです。多くの店は赤字かギリギリでやっています。それらの店がなくなって困るのは在日だけではなく日本人も困ります。液晶や電子部品産業にも影響が及びます。不動産の所有者も高額家賃を払ってくれる店子が消えて困ります。
    事実上の規制を敷けば税収が増えると思ったら大間違いです。みんなが損をしてますます税収が減るだけです。偽善で世の中は成り立たないことを理解できていない人がどうしてこんなにも多いのか不思議でなりません。

  4. bobbob1978 より:

    パチンコ業界は警察官僚の縄張りなので簡単には規制や課税は進まないでしょう。
    今回の記事のカジノにしても、前回の記事の復興宝くじにしても新しい制度を新設しようとするから反発を招くのだと思います。
    今年度に限り宝くじ販売の利益を全て復興に回すなどの時限的な対処をする分には反発が少ないのはないでしょうか?

  5. タカビー より:

    こんばんは。

    どうもおっしゃっているプランが、絵に描いた餅のように感じてなりません。

    今現在、ここまで自粛ムードが進んでいる日本という国のことを、あまりご存知ないのではないでしょうか?

    もう一つ、日本人の民族性についてもいささか認識されていないご提案と感じました。

    >民間資本導入、雇用対策と同時に新たな財源を生むことのできる施策というのは、カジノ導入以外にはないと言って良いでしょう。

    こういった復興のための案というものは、そもそも不確実性があってはならないものです。

    だからこそ、復興国債発行に対しても政府は慎重にならざるを得ないのです。

    それを姑息な手段の宝くじや、ましてやカジノ導入に求めるなどいかがなものでしょうか?