東電を解体しないと電力自由化はできない

2011年05月22日 00:00

発送電の分離についての議論が盛り上がっていますが、業界の中の人は意外に醒めています。「NTTの中途半端な分割にも15年かかった。当時の自民党よりはるかに政権基盤の弱い民主党政権でできるはずがない」という声が多いようです。これは官民の力関係もさることながら、そのメリットが見えないことも原因です。


今は世の中が「東電憎し」で盛り上がっているので、送電網を分離するというと拍手を浴びるかもしれないが、分離したら本当に競争が起こるでしょうか? 海部美知さんも指摘するように、規制強化だけやっても、ガチンコで闘うライバルが出てこないと競争は生まれない。東電をスケープゴートにして「公正競争」の建て前を振りかざしても、ビジネスは変わらないのです。

かつて電電民営化のとき、中曽根内閣は土光敏夫氏を第二臨調の会長にし、オール財界のバックアップで電電公社と全電通を追い込みました。電電を民営化するだけでなく、第二電電(現在のKDDI)というライバルをつくり、社長には真藤恒氏を送り込みました。今でいえば、東電を解体して「第二東電」をつくり、東電の社長に柳井正氏を送り込むようなものでしょう。それぐらい周到な仕掛けがあって初めて電電公社の独占は崩せたのです。

それに対して、民主党政権は東電の破綻処理もできないで「債権放棄」を要請するなど、迷走しています。発送電を分離しても、日本のPPSは東京ガスや新日鉄などの重厚長大企業ばかりで、東ガスの最大の顧客は東電だから、八百長にしかならない。一部で期待されていたソフトバンクの電力事業参入も、「メガソーラー」では話にならない。太陽光発電というのは補助金がないと成り立たない農業みたいなもので、東電のライバルにはなりません。

期待は外資系ファンドぐらいですが、J-POWERのとき外資を排除した経産省が許さないでしょう。外資も成熟した日本より中国に関心をもっています。この状況では、法律だけ変えても競争は起こらないし、そもそも民主党政権には法律を変える力もないでしょう。古賀茂明氏も指摘するように、現在の政権は財務省の子会社みたいなものですが、その財務省が東電を破綻処理すると公的資金が必要になるのをいやがっているので、本質的な変化は期待できない。

かつての電電改革が民営化なしでできなかったように、東電を解体しないかぎり発送電の分離はできません。その支配力は圧倒的で、いうことをきかない業者は業界から排除されます。東電救済への批判をかわすリップサービスに発送電分離を口にするような政権では、どっちもできないで終わるでしょう。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑