古くは太陽王ルイ14世。毎度、奇抜な格好をして登場。すると、次の舞踏会までには、みんなマネをする。マネをしないと、舞踏会で居場所が無い。王の寵愛を得られない。そんな風に流行は始まった。
だが、いま問題となっているのは、このような模倣追随による一般大衆側の主体的な流行ではない。マスコミの、バンドワゴン型プロパガンダ、と呼ばれる流行の捏造だ。ドガチャカ、ドガチャカ、鳴り物入りでやってきて、もうみんな乗っているよ、早く乗らないと時代に乗り遅れるよ、損をするよ、と、繰り返し、繰り返し、ガナリ立てて、人々を追い詰めて洗脳していくやり方。
これは、ドイツのような多元的な国では成り立たない。ところが、日本は、明治の絶対的中央集権とともに、ゴミのようなものを、東京ではやっている、と言い張って、地方の連中に騙して売りつけるインチキ商法が急速に普及した。たとえば、テキ屋の寅さんも、銀座の一流デパートでお姉ちゃんに、ください、ちょうだい、で、いただきますと、五千、六千は下らない品物、とやっている。
こんな下品な田舎者騙しのテキ屋商法を、戦後の高度成長期末期に、潰れかかってやけっぱちになった角川(『犬神家の一族』1976~)がテレビを使って大々的に展開。これがうまくいってしまったものだから、バブルに入って、テレビ局や新聞社は、自社事業局を爆発的に拡大。他人の商売の宣伝より、自社の事業の宣伝。電波の私物化。
アナウンサーをタレントに仕立て、ニュース番組でまで平然と自社イベントの宣伝をするようになり、住宅展示場から、ドラマのタイトル曲のプロモーション、そして、映画への進出と、どんどんと手を広げていく。そのうえ、出版社や玩具メーカーも、メディアミックスだとか言って、変身ものやロボットもの、少女ものを次々と無理やりはやらすべく、子供たちに宣伝の十字砲火を浴びせる。
文学ですら、『なんとなくクリスタル』(1980)あたりから、読み捨ての流行りものとして、たちまち何万部! というように、売れていることばかりをウリにするようになった(実際は売れてもいないのに大量に刷り増して、書店に積み増ししただけ)。さらには、演劇まで、劇団四季(『オペラ座の怪人』1988~)などが大量CMを打つ始末。
ここで暗躍したのが、広告代理店。この世論操作のために、全面大量の広告出稿や、タレントの営業出演などを条件に、番組や新聞記事、雑誌本文にチョウチンを割り込ませる。まともな評論家は試写会などから追放し、テレビ局や出版社に圧力をかけて、番組や雑誌の仕事を干して潰す。
恥知らずにおべんちゃらだけを言う「タレント」たちを、おいしい「仕事」で接待して、いかにも、業界で大流行、というようなウソを捏造する。インチキIT実業家たちが熱烈にテレビ局を欲しがったのも、それそウソ拡声機のテレビ局さえ握れば株価操作でもなんでも、やりたい放題にできるようになるから。
だが、ネットの時代になって、ウソがつきにくくなった。今、何がはやっているか、なんて、ウェブカメラや検索ランキングでダイレクトにわかってしまう。そもそも、連中が捏造した「東京」や「業界」で何がはやっていようと、いまどき知ったことではない。それでも、やつらは、ネットの中にまで、カネでレヴューブロガーを雇って口コミを捏造したり、エージェントに掲示版のコメントを監視させ、ソックパペット(靴下人形)で大量の発言を捏造し、あたかも批判は少数派にすぎないかのように世論操作を続けてきた。こうして、韓流だ、『1Q86』だ、AKBだ、と、いまだに残るM2やF3あたりの情弱連中から搾り取れるだけ搾り取っていた。
だが、もう終わりだ。あんたらの馬脚が見えてしまった。結局、原発問題も、韓流問題も、AKBも、根は同じ。円高と株安、民主党代表戦で大騒ぎの昨年8月25日、NHKのニュースのトップで、ほとんど日本では無名の韓国のシンガーグループ「少女時代」の来日で5分間もはしゃがせ、「KARA」の辞める辞めないで、その後のワイドショーにのさばったものの、今年、7月14日のTBSの『チャン・グンソクSP』の視聴率は、ゴールデンタイムにもかかわらず、結局、わずかに3.9%。
あれだけ、国民的アイドルの総選挙だ、とマスコミ中で大騒ぎしたAKBも、その一位の主演ドラマ『イケメンパラダイス』の視聴率は、8月1日でたったの5.5%。原発も、政治家や財界人がなんと言おうと、世論で「増やせ」は、ほんの2%ぽっち(NHK、7月11日発表)。あんたらのやり方は、もう完全に時代遅れなんだよ。
いまの国民はバカじゃない。こういうバンドワゴン型世論操作は、やればやるほど強い反発を買う。そんな当たり前のことが、連中には、なぜいまだにわからないのだろうか。テレビのCMや新聞雑誌の広告なんかに莫大な無駄ガネを使っている企業の商品に、ロクなものがないのは、もはや周知の事実。
同じような世論操作で国民を騙してきたソ連の一党独裁が崩壊して、すでに二十数年。この場に及んでなお、ヤラセだの、シコミだの、サクラだの、典型的な詐欺商法をやっていて、人間として恥ずかしくないのか。
スポンサーも、そんな時代遅れのイカサマ野郎たちに自社の宣伝なんか任せていると、カネばかり巻き上げられ、もっと反発を買って、さらに商品が売れなくなるぞ。
(純丘曜彰 大阪芸術大学芸術計画学科教授(哲学・美学)美術博士(東京藝術大学))