安倍晋三よ、カツカレーをどんどん食べなさい 政治家と贅沢

常見 陽平

安倍晋三氏をひっぱたきたい。38歳中年ライター、ダイエット中なのにカロリーが高いカツカレーを食べてしまったではないか。

自民党総裁選を前に、安倍晋三氏が3500円+αと言われるカツカレーを食べたことが話題になった。ネット上では「オレもカツカレー食べたい」という声がある一方、「庶民感覚がない」などの声もあった。またか、という印象だ。政治家の贅沢について考える。


まず、安倍晋三氏に怒りと感謝が混じった気持ちを伝えたい。実に数年ぶりにカツカレーを食べてしまった。私が食べたのはチェーン店にある630円の実に庶民的なものだったが、これが、美味いのなんの。小泉武夫氏風に言うなら、小生の胃袋めがけて超特急はやて号であった。630円でこれだ。3500円のカレーなら、小生は悶絶、卒倒し、店員に介抱され、救急車で運ばれること必至である。

ここからが真面目な話だ。この手の話があると、「国民の血税で贅沢しやがって」「庶民感覚がない」という話になるのだが・・・。政治家の仕事とは何かということを考えたいのだ。政治家の仕事とは、まさに政治をすることである。もちろん、明らかな汚職や金権スキャンダルなどは問題だが、いいじゃないか、カツカレーくらい。

まぁ、カツカレーで3500円ということがツッコミどころだったわけだが、高いカツは高いのだ。実は私はとんかつマニアなのだが、ちょっと高い店になると2500円から3000円くらいはする。これは私が先日食べた、人生最高のカツサンドだが、1人前2000円だ。とはいえ、焼肉や寿司を食べるよりは安い。

また、ランチである。ランチで3500円はプチ贅沢のレベルだ。総裁の座がかかっているならなおさらだ。しかも、「カツカレー」と「勝つ」をかけるなんて、極めて庶民的ではないか。最近ではキットカットが受験や勝負事のおまじないお菓子になっていたり、九州では受験祈願のお菓子として「かつおせんべい」というものが売れている。日本人は、「勝つ」ことを祈願するときに、何かちなんだものを食べてしまうものである。

私が現人神と崇拝する永ちゃんこと矢沢永吉氏はエッセイ『アー・ユー・ハッピー?」(日経BP社、角川文庫で文庫化)でこんなことを語っていた。

「銀座で飲むロマネコンティも屋台で飲む焼酎も、両方楽しめるということ」

贅沢を楽しむだけの品格と、安いものを楽しめる庶民感覚は両方大事なのだ。

そして、何より、本業を全うすることだ。政治家になっても清貧が求められるなら、夢もへったくれもないじゃないか。

安倍晋三氏、空気読まずに今後もカツカレーを食べるべし。ただ、今度はカレーチェーンのも食べなさい。ちゃんと野菜も摂取し、運動もしてほしい。しょうもないことで批判されてオツカレー様。おあとがよろしいようで。

そうそう、庶民感覚という言葉が出たが、庶民の処世術の本を書いた。『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)だ。牧歌的欧米礼賛論を批判しつつ、これからの普通のサラリーマンのあり方について、ガンダムのジムにたとえて表現した。手にとって頂きたい。