ダイヤモンド社は上杉問題の真相を解明せよ

池田 信夫

ダイヤモンド・オンラインは、きのう「当サイト記事に対する『図表流用』という指摘についての見解」を公表した。

ダイヤモンド・オンライン2011年9月22日に掲載した、上杉隆氏のコラムの中で、 「3月23日 現在、原発事故への各国政府の対応」の表が、他のメディアからの流用ではないかとの指摘 がなされています。当編集部の確認に対して、筆者である上杉氏からは法的な解決の道を検討しているので、全面的な資料提供はできないとの判断が示されました。これを受けて、当編集部は、結論が出るまでの間、本記事と関連記事の掲載を停止いたします。


これは編集部が「盗用ではないという証拠を出せ」と要求したのに対して、上杉氏が証拠を出さなかったため、彼の弁解に信用性がないと判断して連載を中止したということだろうが、これでは「結論」が出るまで問題は先送りされる。「法的な解決を検討」というのはよくある時間稼ぎだが、彼のいう「リスト」も「情報提供者」も存在しないのだから、訴訟すら成り立たない。

事実は明白だ。上杉氏は昨年9月22日のダイヤモンド・オンラインの記事(魚拓)で、韓国が被災地への渡航制限を解除したという読売新聞の記事を「不誠実」だと批判した。それは〈日本への渡航制限が行われていた〉というニュースを読売が報じなかったからだというのだが、その証拠として彼が使ったのが、なんと昨年3月19日の読売の記事の丸ごとコピーだったのだ。

これはおそらく読売の記事を3月23日のメルマガに盗用したことを忘れて(あるいはスタッフが盗用したことを知らないで)ダイヤモンドの記事に使ったのだろう。これ自体は引用元を書かなかったという些細な違法行為で、「出所を表示するのを忘れていた」と謝罪すればすむことだが、読売の記事を盗用して読売を批判したとなれば天下の笑いものだ。

これを上杉Wikiが指摘し、私のブログで紹介したところ、上杉氏は10月18日の記事で「BLOGOSとアゴラの悪意と作為に満ちた劣悪な記事やその筆者である池田信夫氏の言論を多様性を根拠に放置することは、百害あって一利なしだったのだ」と江川紹子氏や私に難癖をつけてきた。

私は彼の嘘に興味はないが、こんなことをいわれて黙っているわけには行かない。そこでダイヤモンド・オンライン編集部に抗議したところ、細川一彦副編集長は「対応する気はない」と言い切った。この経緯をブログで公表したところ大きな反響があり、きのうになって上の「見解」が出たわけだ。

しかしこれで幕引きというわけには行かない。ダイヤモンド社は真相解明を上杉氏にまかせず、独自に調査すべきだ。といっても、むずかしいことではない。問題のリストを外部の「情報提供者」から入手したかどうか、読売新聞に問い合わせればいいのだ。読売は私の問い合わせにも「自社の取材だ」と答えているので、そんな情報提供者は存在しない。

このまま問題を先送りしていれば忘れるだろうと思ったら、大きな間違いだ。週刊朝日の事件にも見られるように、ソーシャルメディアで火がついたら、どちらかが全面的に謝罪するまで鎮火しない。すでに一般ニュースにもなり、問題は拡大する一方だ。ダイヤモンド社が真相を解明して読売と江川氏と私に謝罪するまで、問題は収まらない。