法政大学准教授上西充子先生のツイートで発見したのだが、リクナビ2014に載っている漫画マンガでわかる!就活のギモンがひどい。
リクナビ編集部は、日本の雇用や若者の実態をまったくわかっていないことが可視化されてしまった。
まず、イラストそのものが個人的好みではなく、虫唾が走るものであり、学生をバカにしている感がいっぱいだったのだが、それはおいておこう。なんせ内容がひどい。
第1回目では
「うちのパパ昔は大企業で残業なしでのんびり働いていてたんだけどさー」
とあるが、大企業の残業の実態をわかっているのだろうか?学生をミスリードするものでしかない。その後に登場する、仕事が忙しくてもキラキラしている人の描写も「やりがいの搾取」そのままではないか。「まともな働き方」という視点が欠如していると言わざるを得ない。
特にひどいのが第2回目だ。ブラック企業に対する記述がひどい。ブラックとは人使いが荒いだけでなく、法令を順守していない会社である。また、ここである描写のように、やりがいに踊らされることが問題なのである。「やりたいこと」を優先で人間関係など関係ないという描写があるが、若年層の早期離職理由の上位に職場の人間関係が入っていることをわかっているのだろうか。
第4回では、刺身に花を載せる仕事を蔑視している。工場で働く方の気持ちをわかっているのか。また、学生時代に努力した経験の描写も学生を茶化したものだと言わざるを得ないだろう。
揚げ足取りだと言う批判もあることだろう。もちろん、漫画だからと言われればそれまでだし、根底には学生に多様な価値感を伝えよう、社会の現実を伝えようという想いもあるだろう。学生もバカではないだろう。ある意味、そういうやりがいの搾取に気づかせる意味もあるのだろう。
ただ、就活という修羅場をくぐり(ここも大学群やタイプによって差があることは別途レポートする)、その先にあるのは劣化した職場という現実である。
まあ、所詮、この媒体は採用広告であり、クライアントに効果を返せればそれでいいという考えなのだろうが。リクルートグループはミッションとして「まだ、ここにない、出会い。」を掲げているが、学生たちの出会いの先をわかっているのか?この漫画こそは、劣化した職場に対しても就活を続けざるを得ない、若者を小馬鹿にしたものだと言わざるを得ない。学生たちもバカにされてはいけない。
リクナビ編集長の岡崎仁美と編集部の構成員に告ぐ。
少なくとも、第4回目の「刺身に花を載せる仕事」の描写は、職業蔑視である。即刻削除を要求する。また、第1回目、第2回目の描写についても表現の再考を要求する。
ぜ っ た い に だ。
勉強のために、若者の雇用・労働問題に取り組むNPO POSSEが発行する『POSSE』の何号かと、東大の本田由紀先生の『軋む社会』(河出文庫)、甲南大学の阿部真大先生の『搾取される若者たち』(ちくま新書)を読みなさい。拙著、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)もエピソードの3分の1くらいは、私がサラリーマン時代に味わったやりがい搾取の日々を描いているから読むといい。
それにしても、日本を代表する就職ナビサイトで、このような漫画が載ってしまうこと自体、日本の職場の劣化、これに極まれりということなのだろうか。
今月は、勤労感謝の日もある。これをキッカケに、まともな働き方について考えよう。