法人税って何?

2013年06月11日 23:54

最近は安倍首相も「デフレ脱却」といわなくなって「第3の矢」の構造改革に関心が移っているようですが、その中身がほとんどないので株価暴落のきっかけになってしまいました。そこであわてて秋に追加対策として「投資減税」という話が出ていますが、これは特定の企業だけに補助金を出すような筋の悪い話です。それより「法人税を20%台にする」という自民党の公約はどこへ行ったのでしょうか?

法人税というのは、法人つまり会社の上げた利益にかかる税金ですが、これっておかしいと思いませんか? 法人という人はないのに、いったい誰が税金を払うんでしょうか? 会社の利益には40%の法人税がかかりますが、その残りの60%の利益を配当すると、株主の所得になって所得税を取られます。つまり法人税は二重課税なのです。また会社の借り入れに対する利息は経費として控除されるのに、投資に対する配当には課税されるので、企業が過剰に借金するゆがみが起きます。


世界各国の法人税率(2011年)

図のように日本の法人税は主要国で最高です。アメリカはオバマ政権が「20%台に下げる」と公約したので、日本と違って本当に下げるでしょう。特にアジア諸国との差が問題で、日本から企業が流出する原因になっています。

たとえば日本で電機メーカーが日本で生産して1000億円の利益を上げると392億円も法人税を取られますが、工場を台湾に移せば法人税は131億円ですみます。それを日本の本社に配当したら40%の法人税を取られますが、台湾で設備投資すればいいのです。連結決算では海外子会社の利益も合算されるので、なるべく海外子会社で生産して海外に再投資することが賢い経営です。

法人税を下げろというと労働組合が反対しますが、上に書いたように法人という人はいないので、最終的には個人が負担します。誰が負担するかはケース・バイ・ケースですが、アジアとの競争が激化している電機産業などでは、新しい工場がアジアに建つという形で雇用が流出するので、ほとんどの法人税は労働者が負担します。利益は海外子会社と連結なので、株主は日本から工場が出ていったほうが得です。

法人税を下げると海外から企業を誘致できるので、それを少しでも下げようという租税競争が起こります。これによって税率は下がりますが、企業の流出が止まるので税収はあまり減りません。EUでは、この10年間に法人税率が10%ぐらい下がりましたが、税収はほとんど減っていません。他方、日本の法人税収は2006年の半分以下です。これは法人税が高いため、製造業の海外移転が進んだ影響が大きい。

だから理想をいえば、法人税は廃止することが望ましいのですが、それはむずかしいので、法人税をすべて地方税にしてはどうでしょうか。今でも法人税の1/3は法人事業税(地方税)ですから、大阪府のようにそれをゼロにすれば実効税率は26%ぐらいになって企業誘致ができ、地域間競争が活発になります。その代わり消費税は100%国税にし、地方交付税も減らせばいいと思います。

それなのに安倍さんが法人税の減税を引っ込めたのは、財務省がいやがるためだと思われます。でも法人税が今のように高いままだと、上にみたように空洞化が進み、税収はかえって減ります。正体不明の「成長戦略」なんかより、法人税の減税とか地方税化のほうがはっきりした効果があると思います。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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