NECの折りたたみ式携帯を懐かしむ --- 多田 純也

アゴラ

NEC(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)が7月31日、国内外のスマートフォン事業からの撤退を発表した。

私は「iモード」が出てきたり、今のソフトバンクモバイルがジェイフォンだった頃に、携帯電話販売会社で雇われ店長をしていたことがある。その仕事に就いた時から「docomo以外は携帯じゃない」状態で、中でもNECの折りたたみ携帯が頭一つ二つ抜きん出る人気機種だった。


テレビドラマで某ジャニタレが使っていた、との理由から、NECの折りたたみ式Nシリーズが馬鹿売れしていたのだ。キムタクが使ってたから、という理由だそうだが、あの頃からテレビをあんまり見なくなっていた自分にはサッパリだった。

常時入荷が厳しく、ある意味で「docomoがを扱えないケータイ屋はケータイ屋と呼べない」状況だった。そのために必死こいてNシリーズのケータイの在庫確保に奔走したものだ。次に人気だったのがパナソニックのストレート型のPシリーズ。これも飛ぶように売れていた。弱小ショップとしては、あの手この手でNシリーズとPシリーズを掻き集めていたのである。

当時、docomoショップとdocomoからの信頼の高いショップにだけ「アラジン」と呼ばれる、携帯の初期設定をする謎のマシンが置かれていた。もちろん、ウチのような弱小ショップに「アラジン」はなかった。「アラジン」を設置しているショップへ持ち込み、端末の初期設定をしてもらってはお客様に渡す、ということを繰り返していたが、これがまた時間がかかる。お客様は早く使いたい。雇われ店長としては、そのへんの対応が実に大変だった。

さらに苦労したのが、お客様にdocomo以外の他社携帯を買わせることだ。あの頃、docomoの端末を売っても利益は殆ど出なかったのが実態で、利益率もキックバックも高いdocomo以外の他社の端末を勧めなければ儲けが出なかった。たとえば、docomoのNシリーズを真似た折りたたみ式のPHSなどがあり「〇〇のほうでしたらハンコとか必要ないですよ~」と必死になって勧めたりしていたのだ。

あれから数年、まさか「NECあってのdocomo」、docomoに最も貢献していたあのNECがスマフォ事業から撤退するとは夢にも思わなかった。現時点での最新機種にして最後の機種となる「N-05E」は面白い端末だと思うのだが……。

今となってはNMPで今の電話番号のままキャリアを変えることも可能だし、やはりiPhoneの登場は大きかったといえるだろう。その対抗馬としてdocomoはサムソンと手を組んだ。そして、ソニー・エリクソンのエクスペリアとサムスンのギャラクシー2トップ体制にすることで無慈悲にもNECを斬り捨てた。このことが将来的にdocomoにどんな結果をもたらすか、非常に興味深い。

その割に「docomoが夏にもiPhone発売か」という報道が定期的に出る。今となっては真っ先にAppleの条件を丸呑みし、日本でのiPhoneとiPadの独占販売権をしていたほうが良かったのでは? と思わなくもない。まさにオオカミ少年状態のこんな「iPhone出す出す詐欺」をdocomoはいつまで続けるのだろうか?

多田 純也
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