「新しい働き方」は、65歳以上の最低賃金適用除外から --- 山口 俊一

2013年11月06日 14:39

11月5日号のニューズウィーク日本版の特集「高齢化時代の仕事」が興味深い。欧米諸国の高齢化問題の現状と対応を中心にした記事だが、その中で「多くの国で高齢化が急激に進んでいる。60歳以上が人口の3割を超えているのはまだ日本だけだが、今世紀半ばまでにはさらに63ヵ国が後に続く見通しだ」と述べられているように、日本が高齢化社会のトップランナーであることは間違いない。


折しも、日本では今年4月から、企業に対する65歳までの雇用義務化がスタートした。年金受給年齢の引き上げを、企業に雇用の形で負担してもらおう、という政策だ。しかし、実質的な定年が65歳になると、今度は65歳以降の過ごし方をどうするのかという問題が重要課題となってくる。

「そんなの年金がもらえるのだから、趣味でも、旅行でも、ゆっくり過ごせばいいではないか」という声もあろうが、そう簡単にはいかない。平均的なサラリーマン世帯の場合、夫婦二人で受け取れる公的年金月額は20~25万円程度。住宅ローンを払い終えた家庭なら何とかやっていけそうだが、賃貸住宅やローン残高が残っているなら、貯金を切り崩しながらの不安な生活となるだろう。

しかも趣味や旅行で豊かな余生をということになれば、多くの家庭で収支が足りなくなる。平均寿命を考えると、65歳といっても、男性で残り15年、女性だと20年以上残っている。

冒頭の記事の中でも、「日本の労働者のうち、65歳以降も働けるうちは働きたいと考えている人は37%」という内閣府の調査結果を紹介している。37%とは、「働きたい」という人だけでなく、「(経済的に)働かざるを得ない」という人も多く含まれていると考えるべきだろう。

一方、厚生労働省の労働市場分析レポート「65歳以上の高年齢者の求職・就職」によると、「65歳以上層の就職率は 60~64歳層の約半分」として、65歳以上層の就職の難しさを述べている。

要するに、日本の高齢者の多くは「働きたい」し「働かざるを得ない」のに、「働けない」ということになる。今の65歳といえば、正に団塊の世代。日本で一番人口の多い年齢層である。早急に対処しなければならないが、これ以上企業に負担を強いるべきではない。

そこで、「65歳以上に対する、最低賃金適用除外」(公的年金受給者限定でもよい)を提案したい。

最低賃金は毎年上がっており、今年東京では869円。前年の850円から19円、率にして2%強上昇した。生活保護世帯との収入逆転解消や、非正規社員層の待遇改善などが狙いだが、高齢者の就職にとってはむしろ逆効果だ。企業は、時給が上がった分、雇用数を絞ろうとするからである。

この最低賃金を、65歳以上の年金受給世代に関しては、適用除外するのだ。

今でも、最低賃金の減額特例が認められるケースが、法律で定められている。

————————————————————————–
最低賃金法第7条(最低賃金の減額の特例)

使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する。

1.精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者

2.試用期間中の者

3.職業能力開発促進法第24条第1項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの

4.軽易な業務に従事する者その他の労働省令で定める者
————————————————————————–

もちろん、高齢者をこき使うのが目的ではない。若者などと違い、「年金」という基礎収入がある以上、最低賃金というハードルを下げることにより、様々な仕事の可能性が広がるのではないか。

慢性的に人手不足業種である、介護、福祉、医療、保育などのサービス業のほか、小売・飲食・旅館、農業、公共事業など、人手が欲しいところは山ほどある。しかし、同じ869円以上払うのなら、できれば体力のある若い人を採用したい。

例えば、極端に時給500円だとしても、週4日・6時間勤務で、月給にして5万円程度にはなる。現役世代には耐えられないが、年金で基本的生活が成り立っている人であれば、小遣いや余暇を楽しむ資金としてなら十分にやっていける。夫婦二人で働くなら、更に余裕資金が生じ、海外旅行などの消費促進にもつながる。

その代わり、重労働や長時間労働は禁止する。旅行や通院などに使うための休暇も取りやすくする。

完全なボランティアではないし、ガッツリの仕事でもない。高齢化社会最先進国として、新しい働き方のスタイルが定着するかもしれない。

ニューズウィーク誌の記事では、完全に引退してしまった人に比べ、たとえ週数時間だけでも働いている人の方が「健康効果」があるという調査結果も紹介している。

やっぱり日本人は、できるだけ働いている方が幸せなのではないだろうか。

山口 俊一
株式会社新経営サービス
人事戦略研究所 所長
人事コンサルタント 山口俊一の “視点”

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑