著作権について思うこと。その3 --- 中村 伊知哉

2014年06月23日 08:34

著作権政策は、もはや「行政」による「制度論」では限界がある。だから従来の行政モデルから脱却すべきと考えるのですが、そうは言っても危険もあります。

フェアユースと同時に法制化された違法ダウンロード罰則化。これは政府が閣議を経て提出した法案ではなくて、議員立法でした。正確に言えば、政府提出法案に議員修正案が乗る形で立法化されたものです。


それは関係業界のロビイングが功を奏した成果とされます。超のつく有名人が走り回って国会議員を口説き落としたと聞きます。三権を使おうよ、というぼくの立場からすればうるわしいできごとです。

でも、音楽業界として喜んでいてよいのか。念願の法改正がサクっと実現した、その結果、収入は増えてはいません。逆にネット利用に対する規制が強まることで、利用者の音楽離れを起こしただけではないかとの指摘もあります。法制度の改正とその結果は、業界としてもアカデミズムとしてもしかと検証すべきでしょう。

さらにぼくが気になるのは、ロビイングの力勝負になるということ。音楽業界がうまくやったんなら、IT業界はもっとうまくやるかもしれない。だって資金規模が1ケタ違いますからね。いや、外資がもっと強烈にやるんじゃないか。2ケタ違いますから。そうか、日本も行政=官僚国家じゃなくなって、国会を動かせば何とかなるぞ、とわかってしまえば、音楽業界に不利な事態がうんと起きる可能性だってあります。
 
司法もそう。クラウド事業の参入を著作権制度が萎縮させている問題についても文化庁で議論が始まりました。「まねきTV」と「ロクラクⅡ」が最高裁でテレビの著作権侵害とされたことで、テレビ局は司法の争いに勝利し、コンテンツ二次流通の資格を得ました。目の前の侵害問題を司法で解決するというのはあるべき戦術でしょう。

しかし結局、クラウド事業が日本ではできないという萎縮状態をもたらしました。その結果、GoogleやAppleなど海外サーバによる海外事業者にマーケットを持って行かれているわけです。局地戦で勝って戦争に負けてるといいますか。

権利を強化するか否かとか、三権のどれを使うかとか、そんなことじゃなしに、そもそも何を守るかを根本的に考えなおさないといけません。著作権法の1、2レイヤ上位にある、メタレベルの問題設定が必要ということでしょう。

てなことをつぶやく「学」はどうなんでしょうね。

口には出しませんが、著作権は、どうしてそんなに学者が多いんだろう、と思っています。こうした会合(この話をしたシンポ)などに来ても、著作権を専門とする学者や研究者がたくさんおられる。だからコンテンツ政策の議論をするとすぐ著作権制度論になります。実はコンテンツ政策上、著作権制度は小さな話だとぼくは思っているのです。

知財と両輪をなすITを考えてみると、通信法の学者なんてあまりいません。ぼくが通信自由化を担当した30年前は、理論的バックボーンが薄くて困りましたが、その後、たくさん通信の制度を専門とするかたがたが生まれました。

でもその後、急激な規制緩和があり、自由化され、制度スキームよりもビジネスや利用の環境が重要となり、制度屋の役割は薄まったんだと思います。いい仕事をして、問題を解決したから、大勢で当たる必要がなくなってきたんでしょう。

これに対し、著作権は制度論が解決しないから、いや、ますます制度論に傾くから、学者の食い扶持が保たれてるんじゃないか、という気さえします。などというとこの場におられる関係者に殴られそうですが、ぼくはグズグズした制度論は放っといて、政策として解決していく、ことにしたい。

著作権法じゃなくてコンテンツ政策で解決する。一時、着メロや着うたが大きな産業を形成しました。ケータイに音楽を提供することに権利者側は当初、躊躇を見せていました。著作物の管理に神経質でした。でも豊かなサービスとして成立しました。その際、著作権法は改正されていません。なぜ音楽が提供されたのか。もうかったからです。先発企業がもうけたから他の企業もコンテンツを出した。カネが動けば実態は動きます。契約で、実態で解決していく、まずそれでしょう。

テレビ番組の二次利用を促進することが長い間、政策課題になっています。日本の放送番組の二次利用は13%程度だと聞きます。映画や音楽は60-70%が二次利用のビジネスです。テレビだけ進まないのは、制度のせいじゃないですよね。ビジネスモデルの問題です。著作権処理のシステムや契約で解決していく。権利処理をスムーズにする機関であるaRmaの設立を政府が応援する。正しい政策だと思います。

(つづく)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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