人口減少と「女性の権利」は無関係

池田 信夫

都議会のヤジ問題は、アゴラがいち早く取り上げてアクセスが激増したが、はっきりいって大した問題ではない。江本真弓さんのようにこれに便乗して「従軍慰安婦」などというデマを流す人もいるので、警告しておきたい。


「少子化」は、先進国ではどこでも起こっている現象で、それ自体は大した問題ではない。これが深刻な問題になるのは社会保障が破綻しているからで、塩崎恭久氏のように問題をすり替えて移民を増やすのは、問題をさらに複雑にするだけだ。

人口減少は、女性の権利とは関係ない。これは労働経済学でよく知られているように、雇用慣行の問題だ。長期雇用を前提にすると、市場の変化に対応するために男性を転勤させる必要があり、妻が退職せざるをえない。そして女性が総合職をいったん退職すると、再就職はパートしかない。

また保育所が実質的な「国営」で増設されないことが「待機児童」を増やし、子供を産めない原因になっている。これは幼稚園と同じように民営化し、幼児教育と位置づけて一元化すべきだ。

このような雇用慣行と社会保障のゆがみが、女性が安心して働けず、子供が少なくなる原因である。これを「男尊女卑」やら「儒教的価値観」と結びつけて批判するのは西洋人の偏見だ。もちろん女性の権利を尊重するのは結構なことだが、労働市場を変えないで「ウーマノミクス」と称して女性枠を増やしても経済効果はない。女性に必要なのは結果の平等ではなく、機会均等である。

「従軍慰安婦」とか「性奴隷」とかいう言葉も、問題を混乱させる元凶だ。戦争に強姦と売春はつきもので、性犯罪の起こらない戦争なんか歴史上ひとつもない。これは都議会のヤジとは何の関係もない。女性の権利を盾にとったプロパガンダはやめてほしい。