シティバンク日本撤退からわかる、金融商品だけの資産運用の限界 --- 内藤 忍

2014年08月20日 22:28

日本経済新聞の報道によれば、米シティグループが日本国内の個人向け銀行業務を売却する方針を固めたそうです。

富裕層を対象とし、グローバルに業務を展開する個人向け金融では、スタンダード・チャータードも日本撤退、HSBCの個人金融部門も日本撤退。日本国内では、この手の銀行のサービスはすべてなくなってしまうことになります。


スタンダード・チャータード、シティプレミアム、そしてHSBCプレミアといった個人向け外資金融機関が、メインの顧客対象としていたのは、金融資産1000万円~3億円程度の顧客です。プライベートバンクでもない、普通の銀行でもない、「プチ富裕層」を対象としたビジネスモデルは、比較的高金利の定期預金商品で顧客を取り込み、仕組み預金や投資信託などの高コスト商品を販売して収益を上げるビジネスモデルでした。

しかし、このような手数料が割高な「ハイリスク・ローリターン」金融商品は、長期的には顧客のポートフォリオを毀損していきます。仕組み預金や、販売手数料や信託報酬が高い投資信託に投資すればするほど、確率的に考えてもリターンは上がらない。コストが高いのですから、金融理論的に見て当たり前のことです。ただ、コストが見えにくいから、金融リテラシーの低い個人投資家が、焼き畑農業のように次々に顧客になっていくだけなのです。

金融商品で資産運用するなら、まず考えるべきはコストを下げることです。対面型の金融機関で手数料を支払うよりも、ネット証券で販売手数料のかからない投資信託を購入したり、コストの低いETFなどを活用すれば、1%~2%程度のリターンの向上は、誰にでも実現できるのです。

金融機関の富裕層向けサービスにおいて、それよりも問題なことは、金融機関で資産運用していると、投資商品が金融商品だけになってしまうことです。

資産運用の対象は、金融資産と実物資産に分けられます。どちらにも一長一短があり、2つの資産を車の両輪のようにバランス良く組み合わせて、ハイブリッドなポートフォリオを構築することで、最適な資産運用を実現できます。私自身、国内外の不動産投資を始めとする実物資産投資を実践しつつ、マネックス証券のインデックスファンドの積立も10年近く継続しています。

今回のシティバンクや、スタンダード・チャータード、HSBCといった資産運用を提案する金融ビジネスが行き詰るのは、実物資産を含めた資産運用のソリューションを提供できないからではないかと考えました。金融資産だけでは、片方のタイヤが外れた車と同じで、満足できる資産形成は実現できないのです。

残念ながら、日本国内で金融資産と実物資産を組み合わせた資産運用を具体的に提案している人は、私の知る限りどこにも見当たりません。株、債券、投資信託、FX、日本の不動産、海外の不動産……それぞれ単品の投資商品のスペシャリストはいても、資産全体のグランドデザインを考えられる人がいないのです。

今回のシティバンクの報道は、日本人の資産運用に関しては、まだまだ大きな改善の余地がある。つまり、それだけ大きな価値を提供できる可能性がある事を示していると思っています。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。


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