東京都の保育士不足解消「地域限定保育士」導入を考える --- おときた 駿

2014年10月22日 10:15

待機児童問題が一向に解決しない原因の一つとして、都市部を中心とした深刻な「保育士不足」が挙げられます。

責任と仕事量に比してその待遇は決して良いとはいえず、離職率が高いことも課題となっており、賃金改善などが望まれますが、それには莫大な財源が必要になります。


そこで、財源の(それほど)いらない打開策として、社会起業家のフローレンス駒崎さんなどが積極的に提唱していたのが、「保育士試験の複数回化」です。

提案し続けてきた「保育士試験を複数回にして!」が実現へ! | 駒崎弘樹公式サイト

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>一方、今すぐできる策としてあるのが「保育士試験の複数回化」です。
>年に1回だと、保育士の供給が年1回に制限されるわけです。保育士需要がそこまでない時代は、
>それでも事足りましたが、今は年度途中でも園を増やしていかねば追いつかない時代です。

>これが可能になれば、例えば保育事業者が、実務経験や子育て経験等はあるが、
>資格をまだ取っていない人材を採用し、数ヶ月間で密度の濃い実習と座学の研修を行い、
>保育士を機動的に養成していくことが可能になるのです。

そして記事の通り、この提案がこの度「特区」のメニューとして、「地域限定保育士」という制度で実現する運びとなりました。

特区限定の保育士創設 厚労省、まず神奈川で導入へ

これは素晴らしい! ではぜひ、一番保育士不足が深刻な東京都でも導入を…。

と、担当局に現時点でのスタンスをレクチャーしてもらったのですが、どうも東京都は現時点でかなり消極的・慎重にこの特区制度を捉えているようです。

その理由を知るために、長くなりますけど、そもそもの「保育士試験」の存在から確認していきましょう。

保育士はご存じの通り国家資格・国家試験ですが、この試験の実施主体は法律上は「都道府県」となっています。とはいえ事実上、保育士試験は全国統一で年1回のみです。

これはなぜかというと、平成16年より国の法律が変わり、都道府県知事が指定する試験機関に試験事務の委託が可能になったことによるものです。このため、現在は47都道府県すべてが例外なく

全国保育士養成協議会(通称:保養協)

という組織に、保育士試験を完全に委託しています。そしてその保育士試験に係る費用はすべて受験料で賄われるため、委託する都道府県側の財政負担はゼロです。

保養協が受験料だけで実技も含む高度な資格試験を運営できるのは、もちろん国の手厚いサポートと、全国一律というスケールメリットによるものであることは間違いありません。

ここで何が言いたいかというと、実は都道府県はその気になれば独自に保育士試験を年に何回でも実施してかまわないのだが、保養協にすべてを委託しているため、そのノウハウは現時点では一切ない、ということです。

建前としては自治体独自の施策ができるようになっていても、行政得意の「全国均一金太郎アメ」になるように精密に仕組まれている。。

どこかに天下りの香りがしながらも、これが現在の保育士試験の実態と言えます。以上を抑えて、今回の「地域限定保育士」と東京都の見解を見てみましょう。

地域限定保育士は、現在行われている形とは別の試験を都道府県が実施し、それで保育士資格を得たものはその地域限定で保育士業務につくことができ、3年間以上の勤務でその「地域限定」が解除されるという仕組みです。

東京都の担当局からヒアリングした内容を私なりにまとめると、現時点での主な見解は以下の通り。

1. 特定の地域だけで働ける「地域限定」保育士という存在がクリアではない
2. 独自試験で資格取得をした保育士と、統一試験での保育士とで質に差が生じる恐れがある
3. そもそも、別の試験を設けなくても、都道府県は保育士試験を実施できるはず
=よって、国が責任を持って、現行の保育士試験を複数回実施させるべきではないか

端的に言うと、

「特区・地域限定保育士なんて仕組みを使う必要がない」
「今の枠組みで、国がしっかりとやってくれ。複数回化すること自体には賛成だ」

というのが東京都の言い分です。

確かに、現在の保養協がやっている試験が全国で複数回化されれば、それに乗っかればいいだけなので、東京都としては一番手っ取り早い方法です。

ですが、待機児童・保育士不足は主に大都市特有の問題であって、これを全国統一で複数回化するというのは、それこそコストに見合わない愚策です。

とかく全国一律でないと動けない日本の社会福祉政策において、だからこそ、都市部地域のみが実施できる「特区制度」での考案がなされたのだと考えられます。

「地域限定というのはおかしい」という言い分も、むしろおかしいです。コストをかけて独自に自治体が試験を行うのだから、その自治体だけで保育士が勤務してくれた方が、むしろ独自試験を行うインセンティブになるはずです。

「試験によって差が出る」のは言い出したらキリがない話で、大学受験でもTOEICでも回によって点数や合格者に差が出ます。「できない理由」を探すより、差がでないような方法を探すべきでしょう。

…結局のところ、もちろん都は明言しませんが、これは財源・財政負担の問題を懸念しているのではないかと推察されます。(もしかしたら、試験を独占している保養協の利権も絡むのかもしれませんが)

現在、保養協にすべての試験を委託している東京都は、独自で保育士試験を行えるノウハウも人材も持っていません。

それをイチから創り上げるにせよ、保養協に別の試験策定・実施を依頼するにせよ、受験料だけでは賄えないコストが発生することになるでしょう。

前述のように、保養協がやってくれる試験に乗っかっているだけならば、受験料でペイされているので東京都の負担はゼロですから、地域限定保育士の存在にアレコレと懸念を示すわけですね。

何度も何度も何度もぶつかる壁ですが、結局のところ、社会保障政策は、限られたパイ(財源)の奪い合い

強力なリーダーが、意図を持って予算・政策誘導しなければ、せっかくの制度があっても使われることがありません。

地域限定保育士に不安があるなら、現行の保育士試験を東京都が独自に複数回実施することだって、理論的には可能です。未曽有の少子化・待機児童問題に対して都知事と東京都は

「やれることはすべてやる、財源は最優先に回す」

覚悟をもって臨んでいただきたいですし、引き続き実施についての政策提言を続けていきたいと思います。

取り急ぎのご報告まで。

それでは、また明日。

おときた 駿
◼︎おときた駿プロフィール
みんなの党 東京都議会議員(北区選出)/北区出身 31歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。

twitter @otokita
Facebook おときた駿


編集部より:この記事は都議会議員、おときた駿氏のブログ2014年10月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださったおときた氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。

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