米12月雇用統計・NFPは好調も、賃金は予想外にマイナス反転 --- 安田 佐和子

2015年01月11日 10:14

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比25.2万人増と、市場予想の24.0万人増を上回った。2012年1月以来の高水準を達成した前月の35.3万人増(32.1万人増から上方修正)を下回ったとはいえ、巡航速度を保つ。過去2ヵ月分は5.0万人分、上方修正された。なお3ヵ月平均は28.9万人増、6ヵ月平均は26.6万人増、2014年平均で26.4万人増。2014年通年のNFPは295万人増と1999年以来で最高を遂げ、民間就労者数でも1997年以来の高水準を達成した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が24.0万人増加した。急増を遂げた前月の34.5万人増(31.4万人増から上方修正)を下回りつつ、市場予想の22.8万人増から加速。ただしサービス業は17.3万人増と、前月の29.4万人増を下回り4ヵ月ぶりに20万人台を割り込んだ。

(サービスの主な内訳)

・ビジネス・サービス 5.3万人増<前月は8.7万人増、増加トレンドを維持

そのうち派遣は1.5万人増<前月は2.4万人増、足元で最も小幅ながら増加トレンドを維持

・教育/健康 4.8万人増>前月は4.1万人増、増加トレンドを維持

・娯楽/宿泊 3.6万人増<前月は5.3万人増、増加トレンドを維持しつつ4ヵ月ぶり低水準

そのうち食品サービスは4.4万人増、2014年の平均値3.0万人を上回る

・貿易/輸送 2.3万人増<前月は7.9万人増、増加トレンド維持もホリデー商戦終了を背景に伸び鈍化

そのうち小売は0.8万人増<前月は5.6万人増、4ヵ月連続で増加しなかで最小

・政府 1.2万人増>前月0.8万人増、増加トレンドを維持

・金融 1.0万人増<前月は2.0万人増、9ヵ月連続で増加

・情報 0.2万人増>前月は0.1万人増、2ヵ月連続で増加

財政産業は6.7万人増となり、前月の5.1万人増を上回り2013年11月以来の高水準。12ヵ月連続で増加している。

(財政産業の内訳)

・建設 4.8万人増>前月は2.0万人増、11ヵ月連続で増加し平年を上回る気温を背景に11ヵ月ぶり高水準

・製造業 1.7万人増<前月は2.9万人増、増加トレンドを継続

2014年のNFPは、力強い回復を達成。

bls
(出所:BLS)

時間当たり平均労働賃金は、前月比0.2%減の24.57ドル(約2910円)。市場予想の0.2%増に反する結果となり、2013年7月以来のマイナスを示現した。下げ幅自体は少なくとも2006年で最大となり、前月の0.2%(0.4%から下方修正)を打ち消している。前年比も1.7%の上昇にとどまり、市場予想の2.2%および11月の1.9%(2.1%から下方修正)以下に終わった。週当たりの賃金も、前月比0.2%減の850.12ドル(10万円)となる。ただ前年比では2.5%の上昇を示した。

週当たりの平均労働時間は前月に続き34.6時間となり、市場予想と一致し2008年5月以来の高水準を保つ。製造業の平均労働時間は41.0時間となり、6月に続き2007年以来の高水準に並んだ11月の41.1時間から短縮した。

失業率は5.6%となり、市場予想の5.7%および前月の5.8%から改善が進んだ。2008年7月以来の6%割れを維持しただけでなく、2014年12月時点の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想に接近している。マーケットが注目する労働参加率は62.7%と前月の62.9%(62.8%から上方修正)を下回り、2014年9月と同じく1978年2月以来の低水準に並んだ。

失業者数は前月比38.3万人減となり、前月の8.8万人増を除き過去6ヵ月間で4回目の減少を示した。雇用者数は11.1万人増と、7ヵ月連続で増加している。就業率は3ヵ月連続で59.2%と、約5年ぶりの高水準を維持した。

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は11.2%と、前月の11.4%から低下した。4ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。一方で平均失業期間は32.8週と前月の33.0週から短縮しつつ、少なくとも2010年3月以来でもっとも短い2014年9月の31.5週を上回る水準を保つ。失業期間の中央値は12.6週と、前月の12.8週から短期化した。少なくとも、2009年以来の低水準となる。

フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億1993万人となり小幅ながら5ヵ月ぶりに減少した。パートタイムは1.0%減の2751万人と、3ヵ月ぶりに減少した。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率──の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点─○

12月は11.2%、11月の11.4%を下回り2008年9月以来の低水準に。不完全失業者数も前月比0.9%減の679.0万人と、8ヵ月連続で減少。

2)長期失業者 採点─△

6ヵ月以上の失業者数は12月に278.5万人と、前月の282.2万人から1.3%減少。ただし失業期間が6ヵ月以上の割合は31.9%と、11月の31.0%を上回っている。平均失業期間は32.8週と、11月の33.0週から短縮した。

3)賃金 採点─×

12月は前月比0.2%減と2013年7月以来のマイナスに落ち込み、前年同月比も1.7%の上昇と2012年11月から続く1.9~2.2%のレンジから脱落。生産労働・非管理職の時間当たり賃金にいたっては0.3%減の20.68ドル(約2450円)と、ヘッドラインの0.2%減より下げ幅を拡大。前年比では1.6%増と、2012年11月以来の低水準だった。

4)労働参加率 採点─×

12月は62.7%と、11月の62.9%から低下し1978年2月以来の低水準だった9月の水準に並んだ。非労働人口は9290万人と、前月の9244万人から増加。これまでの最大だった2014年9月の9260万人を上回り、過去最悪となる。軍人を除く民間労働人口も1億5613万人と、0.2%減と小幅ながら3ヵ月ぶりに減少した。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、米雇用統計後にFed番のヒルゼンラス記者による「強い米12月雇用統計でも底流はまちまち、Fedは忍耐強さを維持へ」と題した記事を配信した。記事では、今年のFOMC投票メンバーであるシカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁が大半の見方に反し2016年以前の利上げに否定的と指摘。賃金の低下に加え原油安、世界経済の減速、低下を続ける長期金利、ドル高へが与える影響も不透明であり、金利引き上げののろしとなる「忍耐強くなれる(patient)」の文言削除は、1月27-28日開催のFOMCでは非常に困難とまとめた。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、失業率に注目し「6月頃までに2014年12月時点の2015年末予想を抜け5.0%への接近が予想されるなか、ゼロ近辺の金利政策が金融安定を脅かすと考える大半のFOMC参加者が黙っていられなくなる」と予想。その上で、第1弾の利上げ見通しを「6月」で据え置いている。1月27-28日開催のFOMC声明文に対しては、米10-12月期雇用コスト指数の発表が30日という事情もあって「雇用動向を上方修正する必要もなく『忍耐強くなれる』の文言をはじめほぼ前回通りになる」と見込んだ。

BNPパリバも「FOMCのハト派は失望を誘う賃金動向を意識すると考えられる一方で、大勢は失業率の低下に重点を置く」と予想。第1弾の利上げ時期を「今年6月」で据え置いた。

ロイターによると、米短期金利先物は賃金低下を背景に9月の利上げ織り込み度が後退した。米12月雇用統計前の59%を下回り、55%にとどまる。

——以上、米12月雇用統計はNFPこそ2014年を華麗に幕引きさせました。失業率も5.6%と労働参加率に引きずられ低下をたどり、数字上では改善トレンドを維持。エコノミストも、失業率の低下ペースを重視するスタンスで今年半ばの見方を変えていません。ただ時間当たり賃金の低下や食品サービスの雇用増加が示すように、質的には内容が伴っておらず。200ドル安を迎えたダウ平均など、米株の反応こそ素直だったという印象は禁じ得ません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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