気になるあの不動産取引

岡本 裕明

最近、都内の二つの大型有名物件に動きがありました。

一つは森トラストが昨年8月に約1300億円で取得した目黒雅叙園で、わずか5か月でアメリカのファンド系であるローンスターに1400億円で売却されました。森トラストは初めから雅叙園を抱える気はなかったのか、稼働率を上げる努力を重ねて、ほぼ満室状態にしたところで100億円上乗せしてローンスターに売却したことになります。


森トラストに乗せられて入居したテナントさんにしてみればあれ、という事になるのでしょう。というのは不動産はその所有者が不動産価値を向上させることに重きを置くタイプとひたすらリターンのみに執着するタイプがあります。往々にしてファンド系の所有の場合、不動産を改良、改築、改善し、より最新のものにするための投資は抑えることが多いものです。

ところで雅叙園といえば雅叙園観光事件で有名になったその隣地と戦前は一体であり、もともとは隣地の方に雅叙園の新館を建てた経緯があります。ところが1948年に興行師 松尾國三が隣地であるその土地を取得したことから目黒雅叙園とは完全に分離され、別世界が展開されます。雅叙園観光の方は最終的に伊藤寿永光のイトマン事件に巻き込まれその間数奇の黒い闇事件が発生したことで知る人ぞ知る不動産とヤクザとバブルの象徴的物件であります。

もちろん今回の森トラストが売却した目黒雅叙園はその話とは全く関係なく、(事実、雅叙園観光事件で世間が大騒ぎしていたころ、目黒雅叙園がうちは関係ありませんという広告を出したのを覚えています。)、不動産事業をたしなむ者としてなつかしい連想となっただけですが、5か月だけ保有して売却するというのもどうなのか、と思います。

さて、もう一つの不動産の動きとは朝鮮総連ビルであります。ご記憶の方も多いかと思いますが、同ビルは本邦に於ける北朝鮮総本山のようなものでしたが、債権者に差し押さえられ競売となり、紆余曲折して香川県のマルナカに22億円で売却決定なされたのでありました。ところがそのマルナカは1月下旬に山形のグリーンフォリストにその倍となる44億円で転売しています。こちらは裁判所の決定が11月でしたから3か月の速攻技で二倍の金額で売り抜けたことになります。

買い手のグリーンフォリストはそのような買い取り財力はなく、朝鮮出版会館が資金を提供しています。そして当然のことながら朝鮮総連は今までと同様、同ビルを我が物顔で使うのであります。

私の2014年6月2日付ブログには「想像ですが当面、マルナカは(政治的意図を背景に)自発的に北朝鮮への賃貸し継続をするのではないかと思います。少なくとも退去を迫ることはないと読んでいます」としています。

更に6月21日付では「マルナカは最終的に総連ビルを取得できたとしても再開発はできない可能性があります。理由は政治問題化すれば当局が工事の許可を出さないからです。役所としては理不尽な理由をつければよいだけですのでさほど難しくないはずです。私が前回のブログでマルナカが大家として賃貸し続けると言ったのはそこにあります。もう一つの方法としては一旦マルナカに所有権を移し、北朝鮮の息がかかる第三者に正当な不動産取引を行えばよいだけの話です。つまりマルナカが結果的にダミーになるということです。これならだれの腹も痛みません。今は対裁判所という手続き論があるからいろいろ複雑になってしまうのであります。」

結果は私の予想通りになっています。まともな人が読んだら茶番だと思うはずです。事実そうです。しかし、これほど政治と裏の世界がギトギトに絡んだ取引はありませんでした。ではマルナカは笑いが止まらない22億の利益かというとそんな甘い世界ではないはずです。そこからしかるべきところに資金が流れるのがこの世界です。でも東京地検も国税も絶対に調査しないでしょう。なぜなら全てが出来レースですから。

不動産の世界には昔から訳の分からない人種が群がることになっています。一般の人が購入するマンションやオフィスビルを手掛ける大手不動産企業はそういう物件に手を出すことはありません。一方で朝鮮総連物件などは恐ろしくてまともな世界の人間には手を出せない代物でした。バブルの時代なら一人や二人、失踪者がいてもおかしくない話なのです。

私が気にするのは不動産取引を通じて誰かが直接的な金銭メリット以外でなにか裏取引があることもしばしば起きるという事であります。20数年前カナダ トロントのダウンタウンにあるヒルトンホテルとウェスティンホテルがある時、突然スワップされたことがあります。その隠された事実を知る人はもう少ないかもしれませんがとんでもない裏があったことだけは印しておきます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 2月11日付より。